2011年9月11日

比布岳、北鎮岳、そしてお鉢、大雪山を満喫する

  
おはようキツネくん。
おはようキツネくん。
  
  
近くで音がすると思ったらキツネくんでした。
朝一番、テントを開けて動物と目が合うなんて、なんか素敵な一日が訪れる予感めいたものを感じます。
予感めいたもの・・・。予感めいたもの・・・。
  
  

続きを読む・・・

  
  
テントに寝ながらにしてこの空を見ることが出来る幸せ。
テントに寝ながらにしてこの空を見ることが出来る幸せ。
  
  
山頂の夜明けは良いって話しは以前にも書いたから何度も言わないけど、やっぱり山頂の夜明けは良いんですよ。
世界が動き出す瞬間を目撃しているという意識を持っているぼく自身が、その世界の真ん中に立っているという不思議な感覚は、「山頂」だけでもダメだし、「夜明け」だけでもいけなくて、山頂で朝をむかえることでしか体験できないものなのです。
  
    ・夜明けの比布岳からのパノラマ  
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青紫の冷えた大気を肺が震えるほど吸い込んで、全身で太陽の光を浴びるのです。
目に見えない何かにおびえる、ひとりの山の夜。
そして、晴れがましく輝く、山の朝。
昼なんていらない、とまで言わないけれど。
  
  
昨夜のベッドはカリマットでした。まだ売ってるのかな。
昨夜のベッドはカリマットでした。まだ売ってるのかな。
  
  
黄色いスリーピングマットといえば、カリマットですよ。
え?、Neo Air だって?。
ふーん。
  
  
昨日の女性2人組は、となりのピーク安足間岳で枕を結んだようです。
テントをたたみ出発の準備をしているのが、ここからもかろうじて見ることが出来ます。
誰かがやってくる前に、ぼくも早いとこ出発しましょう。
  
  
おやおや。キツネくんがついてきます。そんな怖い顔すんなよー。
おやおや。キツネくんがついてきます。そんな怖い顔すんなよー。
  
  
結局このキツネ、前になり後ろになり、比布岳から鋸岳の巻き道までずっとついてきました。
相当広い縄張りのようです。
  
  
おはよう。そしてさようなら比布岳。
おはよう。そしてさようなら比布岳。
  
  
今日はたいした登りはありません。
北鎮岳の登り返しと間宮岳ぐらいのものです。
それでも日が高くなってくると、暑い。
昨日会ったパトロールのおやじさんによると、この3日間は8月下旬としてはそうとうな暑さらしいです。
  
    ・昨日はのんびりできなかった北鎮岳からのパノラマ  
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そんじゃぼくも、お鉢巡りに出発。
そんじゃぼくも、お鉢巡りに出発。
  
  
この先ほとんど高低差がないものの、それなりにピークもあるので、なかなか楽しいトレイルです。
中岳、間宮岳、荒井岳、松田岳、北海岳と、次々に踏破していくわけですが、間宮岳と北海岳以外はどこが山頂なのかわかりません。
まぁ大雪山ってのは、こういうパッカーンと開ききった風景の中を、ゆるーく登ったり下ったりするのを楽しむ場所なんだと思いますよ。
愛別岳みたいなのは特別ですね。
  
  
北海岳山頂でセルフ。
北海岳山頂でセルフ。
  
  
正味な話し、風景に変化がなくて飽きてくるので、ときどき後ろ向きになったりしてリフレッシュします。
なんと後ろ向きに歩くと、お鉢が左から右に変わるんです!。
  
  
大雪の山の上とは思えない暑さと日照りのなか、稜線で食事するのは諦めて北海岳を下ります。
ここから約300m下ると北海沢の水場があるので、そこで昼食を摂ることにします。
えぇそうです。
そこで事件は起きるのですが、その顛末はすでに書き記したとおりです。
よく考えると、食事中に熊に出くわすというのも、そうとう運が悪い(あるいは運がいい)話しです。
  
  
水場の近くには、夏のなごりのクモマユキノシタ。
水場の近くには、夏のなごりのクモマユキノシタ。
  
  
こちらはチシマユキノシタ
こちらはチシマユキノシタ
  
  
同じくユキノシタの仲間の、ダイモンジソウという花が、ぼくはとても好きです。
最初に出会ったのは薬師沢小屋の近くで、手にしていた釣竿を投げ捨てて写真を撮りまくったことを覚えています。
この科の花は、華やかさはないし、目立たない、細くて小さな花ではあるんだけど、二次元に投影すると浮かび上がってくる、シンプルな造形の中の精密な細工が、たまらなくいとおしいのです。
  
  
北海沢を越えるともうひとつ、大きな流れをわたります。
お鉢平から流れてくる赤石川
  
  
お鉢平の水を集める赤石川です。
源流にあるのは、ヒグマさえ死ぬというその名も有毒温泉。
よって飲用不可だそうです。
それはともかくとして、森林限界より上部にこれだけ広い河原があるというのは、まったくもって大雪山らしい風景だと思います。
初夏の雪解けの頃の、水量が豊富なときの赤石川を見てみたいものです。
  
  
黒岳の山頂をすぎると大雪ともお別れです。
黒岳の山頂をすぎると大雪ともお別れです。
  
  
モアイ像を横目に見ながら、段差の多い下り坂。
モアイ像を横目に見ながら、黒岳の下り坂。
  
  
背中の荷物がやけに堪えると思ったら、ウェストベルトを締めていませんでした。
北海沢での熊騒動のとき以来ですから、怖くなかったと言いつつ冷静さを欠いていたのかなぁ。
  
  
ともあれ、リフトに乗ったら登山はおしまいです。
ともあれ、リフトに乗ったら登山はおしまいです。
  
  
二日間の、どっぷり大雪山が終わりました。
主役は愛別岳のはずだったのに、完全にヒグマに持っていかれた感じです。
  
  
今年の山は、狩場山での熊糞道があって、そして今回の遭遇と、熊の話には事欠かないシーズンでありました。
会う前も会ってからも、ヒグマが圧倒的な存在であることは変わらないし、できることなら遭遇しないに越したことはないという考えにも、変化はありません。
だけど山には必ずヒグマは棲んでいて、そういうエリアの真っ只中を歩いてるんだという自覚はより強く感じるようになったし、その緊張感みたいなものこそが、北海道の山に独特の雰囲気をもたらしているいるのは間違いないと、思うようになりました。
  
  
感動とか、畏怖とか、そういう言葉はむやみやたらに使うものではないんだけれど、やはり大雪山には、それがふさわしい言葉なんじゃないかな。
いろいろと、ありがたい山歩きでありました。
  
  
  
登山日:8月28日-29日
  
黒岳-愛別岳-お鉢巡り GPSトラック
黒岳-愛別岳-お鉢巡り GPSトラック
  
  
黒岳-愛別岳-お鉢巡り 断面図
黒岳-愛別岳-お鉢巡り 断面図
  

  
  
テントに寝ながらにしてこの空を見ることが出来る幸せ。
テントに寝ながらにしてこの空を見ることが出来る幸せ。
  
  
山頂の夜明けは良いって話しは以前にも書いたから何度も言わないけど、やっぱり山頂の夜明けは良いんですよ。
世界が動き出す瞬間を目撃しているという意識を持っているぼく自身が、その世界の真ん中に立っているという不思議な感覚は、「山頂」だけでもダメだし、「夜明け」だけでもいけなくて、山頂で朝をむかえることでしか体験できないものなのです。
  
    ・夜明けの比布岳からのパノラマ  
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青紫の冷えた大気を肺が震えるほど吸い込んで、全身で太陽の光を浴びるのです。
目に見えない何かにおびえる、ひとりの山の夜。
そして、晴れがましく輝く、山の朝。
昼なんていらない、とまで言わないけれど。
  
  
昨夜のベッドはカリマットでした。まだ売ってるのかな。
昨夜のベッドはカリマットでした。まだ売ってるのかな。
  
  
黄色いスリーピングマットといえば、カリマットですよ。
え?、Neo Air だって?。
ふーん。
  
  
昨日の女性2人組は、となりのピーク安足間岳で枕を結んだようです。
テントをたたみ出発の準備をしているのが、ここからもかろうじて見ることが出来ます。
誰かがやってくる前に、ぼくも早いとこ出発しましょう。
  
  
おやおや。キツネくんがついてきます。そんな怖い顔すんなよー。
おやおや。キツネくんがついてきます。そんな怖い顔すんなよー。
  
  
結局このキツネ、前になり後ろになり、比布岳から鋸岳の巻き道までずっとついてきました。
相当広い縄張りのようです。
  
  
おはよう。そしてさようなら比布岳。
おはよう。そしてさようなら比布岳。
  
  
今日はたいした登りはありません。
北鎮岳の登り返しと間宮岳ぐらいのものです。
それでも日が高くなってくると、暑い。
昨日会ったパトロールのおやじさんによると、この3日間は8月下旬としてはそうとうな暑さらしいです。
  
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そんじゃぼくも、お鉢巡りに出発。
そんじゃぼくも、お鉢巡りに出発。
  
  
この先ほとんど高低差がないものの、それなりにピークもあるので、なかなか楽しいトレイルです。
中岳、間宮岳、荒井岳、松田岳、北海岳と、次々に踏破していくわけですが、間宮岳と北海岳以外はどこが山頂なのかわかりません。
まぁ大雪山ってのは、こういうパッカーンと開ききった風景の中を、ゆるーく登ったり下ったりするのを楽しむ場所なんだと思いますよ。
愛別岳みたいなのは特別ですね。
  
  
北海岳山頂でセルフ。
北海岳山頂でセルフ。
  
  
正味な話し、風景に変化がなくて飽きてくるので、ときどき後ろ向きになったりしてリフレッシュします。
なんと後ろ向きに歩くと、お鉢が左から右に変わるんです!。
  
  
大雪の山の上とは思えない暑さと日照りのなか、稜線で食事するのは諦めて北海岳を下ります。
ここから約300m下ると北海沢の水場があるので、そこで昼食を摂ることにします。
えぇそうです。
そこで事件は起きるのですが、その顛末はすでに書き記したとおりです。
よく考えると、食事中に熊に出くわすというのも、そうとう運が悪い(あるいは運がいい)話しです。
  
  
水場の近くには、夏のなごりのクモマユキノシタ。
水場の近くには、夏のなごりのクモマユキノシタ。
  
  
こちらはチシマユキノシタ
こちらはチシマユキノシタ
  
  
同じくユキノシタの仲間の、ダイモンジソウという花が、ぼくはとても好きです。
最初に出会ったのは薬師沢小屋の近くで、手にしていた釣竿を投げ捨てて写真を撮りまくったことを覚えています。
この科の花は、華やかさはないし、目立たない、細くて小さな花ではあるんだけど、二次元に投影すると浮かび上がってくる、シンプルな造形の中の精密な細工が、たまらなくいとおしいのです。
  
  
北海沢を越えるともうひとつ、大きな流れをわたります。
お鉢平から流れてくる赤石川
  
  
お鉢平の水を集める赤石川です。
源流にあるのは、ヒグマさえ死ぬというその名も有毒温泉。
よって飲用不可だそうです。
それはともかくとして、森林限界より上部にこれだけ広い河原があるというのは、まったくもって大雪山らしい風景だと思います。
初夏の雪解けの頃の、水量が豊富なときの赤石川を見てみたいものです。
  
  
黒岳の山頂をすぎると大雪ともお別れです。
黒岳の山頂をすぎると大雪ともお別れです。
  
  
モアイ像を横目に見ながら、段差の多い下り坂。
モアイ像を横目に見ながら、黒岳の下り坂。
  
  
背中の荷物がやけに堪えると思ったら、ウェストベルトを締めていませんでした。
北海沢での熊騒動のとき以来ですから、怖くなかったと言いつつ冷静さを欠いていたのかなぁ。
  
  
ともあれ、リフトに乗ったら登山はおしまいです。
ともあれ、リフトに乗ったら登山はおしまいです。
  
  
二日間の、どっぷり大雪山が終わりました。
主役は愛別岳のはずだったのに、完全にヒグマに持っていかれた感じです。
  
  
今年の山は、狩場山での熊糞道があって、そして今回の遭遇と、熊の話には事欠かないシーズンでありました。
会う前も会ってからも、ヒグマが圧倒的な存在であることは変わらないし、できることなら遭遇しないに越したことはないという考えにも、変化はありません。
だけど山には必ずヒグマは棲んでいて、そういうエリアの真っ只中を歩いてるんだという自覚はより強く感じるようになったし、その緊張感みたいなものこそが、北海道の山に独特の雰囲気をもたらしているいるのは間違いないと、思うようになりました。
  
  
感動とか、畏怖とか、そういう言葉はむやみやたらに使うものではないんだけれど、やはり大雪山には、それがふさわしい言葉なんじゃないかな。
いろいろと、ありがたい山歩きでありました。
  
  
  
登山日:8月28日-29日
  
黒岳-愛別岳-お鉢巡り GPSトラック
黒岳-愛別岳-お鉢巡り GPSトラック
  
  
黒岳-愛別岳-お鉢巡り 断面図
黒岳-愛別岳-お鉢巡り 断面図
  

投稿者 hamayo : 21:46 | コメント (2) | トラックバック

2011年9月 6日

愛別岳に登って時間切れになるも想定内

  
あまり知られてはいませんが、愛別岳は我が国最北の2000m峰だそうです。
そしてもうひとつ、大雪山の範囲をどこまでとするかにはいくつかの議論がありますが、石狩川をその境界とするならば愛別岳は大雪山北端の山となります。
  
愛別岳
  
  
主脈からは外れているものの、たおやかな山がほとんどを占める大雪山にあって傲然屹立とした山容は異色の存在であり、麓の大雪アンガス牧場から見る愛別岳は、絵に描いたようなアルプス的風景です。
  
  
ところがこの愛別岳、大雪山の登山中にはまずその全貌を見ることは出来ません。
というのも、大雪北方稜線から愛別岳へ向かう分岐点のほうが、愛別岳山頂よりも高いからです。
北方稜線が壁となってしまうわけです。
  
  
それゆえにこの愛別岳、目標を見ることなくはるばると歩を進め、本当にすぐ近くに来て突然その姿を目にするという、とても劇的な登山になることを期待して、計画を立てました。
まぁそうは言っても、山に行こうとしたのも計画を立てたのは直前なんですが。
  
  

続きを読む・・・

  
  
ここだけの話しですが、じつを言いますと黒岳リフトに乗ったのは初めてなんです。
じつを言いますと黒岳リフトに乗ったのは初めてなんです
  
  
今日はのんびり昼からスタートなので、リフトもロープウェイもばんばん使いますよ。
なんせ全行程25kmになる予定なので。
その長い道程のなかでも、いちばん長い登りが続くのはしょっぱなの黒岳への登りです。
  
  
黒岳まではちょっとヤル気の観光客も登ってくるので、整備は行き届いてます。
黒岳まではちょっとヤル気の観光客も登ってくるので、整備は行き届いてます。
  
  
そして黒岳山頂まで来て、やっと大雪の山々にご対面です。
そして黒岳山頂まで来て、やっと大雪の山々にご対面です。
  
  
日曜とあって黒岳山頂はまさしく黒山の人だかり。
ここもれっきとした大雪山の山頂なのに、なぜかデカザックは場違いな視線を浴びるので、滞在時間30秒で下ります。
  
  
石室も素通りして、雲の平(黒部源流にあるのは雲ノ平)はもうお花もほとんど咲いてなくて、なんだかよくわからないうちに通りぬけてしまい、あっという間にお鉢平カルデラの北東のリムに乗ります。
  
  
やっぱりお鉢平はデカイです。
やっぱりお鉢平はデカイです。
  
  
  
    ・お鉢平展望台からのパノラマ  
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北鎮岳へ向かうぼくは、お鉢巡りハイカーたちとはここでお別れです。
北鎮岳へ向かうぼくは、お鉢巡りハイカーたちとはここでお別れです。
  
  
ここから再びぐいっと登って、北鎮岳山頂は13時50分。
時間が押してきてるので先を急ぎたいところを、連続で写真撮って下さい攻撃と、せっかくなので撮ってあげますよ攻撃のコンボに合ってしまいます。
たしかに抜群の眺めなので、明日の帰路にじっくりくつろぐべ。
  
  
これから歩く鋸岳の巻き道。たしかに鋸ですな。
これから歩く鋸岳の巻き道。たしかに鋸ですな。
  
  
北鎮岳より先、めっきり人の気配がなくなります。
ここからはぼく1人だけだろうと思っていたら、同じくデカザックの女性2人組も今日中に愛別岳に登るとのこと。
この時間から北方稜線に進むというだけでも、ヘッドランプ点けて愛山渓に下山か?、というハードな行程が想像できますが、それに加えて愛別岳ピストンということになると、もうビバーク以外ありえません。
  
  
じつはさっき北鎮岳の山頂で彼女らと話したとき、お互いに「どこに泊まるの?」という質問をし、お互いに言葉を濁した(あんまり大きな声じゃ言えませんからね)ばかりですが、もはやこの時間にここにいるという事実は今夜のステルスキャンプを告白しているようなものですから、それぞれにテントが張れそうな場所の情報を話したりしつつ、静かな稜線を進みます。
  
  
徐々に寂しくなる北方稜線の尾根歩き。
徐々に寂しくなる北方稜線の尾根歩き。
  
  
鋸岳のウラシマツツジは紅葉が始まっていました。
鋸岳のウラシマツツジは紅葉が始まっていました。
  
  
比布平はチングルマの海。
比布平はチングルマの海。
  
  
だいぶ疲労も溜まってきて、たかだか150mの標高差の比布岳の登りで両足が痙ります。
それでも止まるわけにはいきません。
愛別岳への分岐到着のタイムリミットを16時としていたので、比布岳山頂もノンストップで稜線を西へ。
  
  
旭岳にも斜光線の当たる時間。
旭岳にも斜光線の当たる時間。
  
  
そしていよいよ、愛別岳の分岐です。
愛別岳の分岐
  
  
道ではなく、ただのザレ斜面です。
いちおう支点もあります。
おそらく愛別岳に登る多くの人がこの斜面を覗きこんで、ここを行っても大丈夫なのかと不安に思い、そして下まで降りてふり返ったときには、はたして自分は帰れるんだろうかと胸騒ぎを感じることでしょう。
ザックをデポし、カメラと行動食と水をクーリエバッグに詰めて、落石を500個ぐらい落としながらスキーみたいに滑っていきます。
  
  
斜面を下ると踏み跡があらわれ、行く手に凛々しいお姿が。
愛別岳の凛々しいお姿
  
  
くぅ~、しびれますなぁ。頂上部は完全に岩です。
愛別岳山頂部は完全に岩です
  
  
じつは山頂部分、右側(写真では影になっているほう)はハイマツがびっしり張り付いており、少し漕げば明瞭な踏み跡が見つかるので、そちらを行けばかなり安全に山頂を踏めます。
でもせっかく岩山に来たのですから、岩のほうを登りましょう。
ハイマツの方は、たぶん下りのルートですよ。
  
  
よし一気に山頂! と思ったものの、先に登ってた件の女性2人組と岩場でスライド。
こんな辺境の山でこんな時刻に、岩場の順番待ちになるなんて・・・。
  
  
16時30分、愛別岳の山頂に到着。
16時30分、愛別岳の山頂に到着。
  
  
頂上は意外と広くて、一張りならテントも張れます。
テン泊装備をここまで担ぐ気にはなれませんが。
  
  
歩いてきた道
歩いてきた道
  
  
マジで時間がないので、感傷とか達成感とかにひたる間もなく下ります。
  
  
最低鞍部まで下りきって、帰り道を仰ぎ見る。
愛別岳の鞍部から比布岳の稜線を仰ぎ見る
  
  
いったいどこを下ってきたのか。
そしてどこを登ればいいのやら。
  
  
ギターの弦みたいにアキレス腱を伸ばして登るザレ斜面。
登山靴にもクライミングサポートとかあればいいのにと、ただそればかり考えて、なんども休憩しながら最後の斜面を登り切ったときには、太陽が地平線に触れかけていました。
来るときに目をつけていた比布岳の北側の砂礫地へ向けて、再び荷を背負い重い足を引きずり、とぼとぼ歩きます。
  
  
テントを張り終えたときにはもう陽は沈んでいました。
テントを張り終えたときにはもう陽は沈んでいました。
  
  
くたくたです。
今夜はよく眠れそうです。
おやすみなさい。グゥ。。。
  

  
  
ここだけの話しですが、じつを言いますと黒岳リフトに乗ったのは初めてなんです。
じつを言いますと黒岳リフトに乗ったのは初めてなんです
  
  
今日はのんびり昼からスタートなので、リフトもロープウェイもばんばん使いますよ。
なんせ全行程25kmになる予定なので。
その長い道程のなかでも、いちばん長い登りが続くのはしょっぱなの黒岳への登りです。
  
  
黒岳まではちょっとヤル気の観光客も登ってくるので、整備は行き届いてます。
黒岳まではちょっとヤル気の観光客も登ってくるので、整備は行き届いてます。
  
  
そして黒岳山頂まで来て、やっと大雪の山々にご対面です。
そして黒岳山頂まで来て、やっと大雪の山々にご対面です。
  
  
日曜とあって黒岳山頂はまさしく黒山の人だかり。
ここもれっきとした大雪山の山頂なのに、なぜかデカザックは場違いな視線を浴びるので、滞在時間30秒で下ります。
  
  
石室も素通りして、雲の平(黒部源流にあるのは雲ノ平)はもうお花もほとんど咲いてなくて、なんだかよくわからないうちに通りぬけてしまい、あっという間にお鉢平カルデラの北東のリムに乗ります。
  
  
やっぱりお鉢平はデカイです。
やっぱりお鉢平はデカイです。
  
  
  
    ・お鉢平展望台からのパノラマ  
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北鎮岳へ向かうぼくは、お鉢巡りハイカーたちとはここでお別れです。
北鎮岳へ向かうぼくは、お鉢巡りハイカーたちとはここでお別れです。
  
  
ここから再びぐいっと登って、北鎮岳山頂は13時50分。
時間が押してきてるので先を急ぎたいところを、連続で写真撮って下さい攻撃と、せっかくなので撮ってあげますよ攻撃のコンボに合ってしまいます。
たしかに抜群の眺めなので、明日の帰路にじっくりくつろぐべ。
  
  
これから歩く鋸岳の巻き道。たしかに鋸ですな。
これから歩く鋸岳の巻き道。たしかに鋸ですな。
  
  
北鎮岳より先、めっきり人の気配がなくなります。
ここからはぼく1人だけだろうと思っていたら、同じくデカザックの女性2人組も今日中に愛別岳に登るとのこと。
この時間から北方稜線に進むというだけでも、ヘッドランプ点けて愛山渓に下山か?、というハードな行程が想像できますが、それに加えて愛別岳ピストンということになると、もうビバーク以外ありえません。
  
  
じつはさっき北鎮岳の山頂で彼女らと話したとき、お互いに「どこに泊まるの?」という質問をし、お互いに言葉を濁した(あんまり大きな声じゃ言えませんからね)ばかりですが、もはやこの時間にここにいるという事実は今夜のステルスキャンプを告白しているようなものですから、それぞれにテントが張れそうな場所の情報を話したりしつつ、静かな稜線を進みます。
  
  
徐々に寂しくなる北方稜線の尾根歩き。
徐々に寂しくなる北方稜線の尾根歩き。
  
  
鋸岳のウラシマツツジは紅葉が始まっていました。
鋸岳のウラシマツツジは紅葉が始まっていました。
  
  
比布平はチングルマの海。
比布平はチングルマの海。
  
  
だいぶ疲労も溜まってきて、たかだか150mの標高差の比布岳の登りで両足が痙ります。
それでも止まるわけにはいきません。
愛別岳への分岐到着のタイムリミットを16時としていたので、比布岳山頂もノンストップで稜線を西へ。
  
  
旭岳にも斜光線の当たる時間。
旭岳にも斜光線の当たる時間。
  
  
そしていよいよ、愛別岳の分岐です。
愛別岳の分岐
  
  
道ではなく、ただのザレ斜面です。
いちおう支点もあります。
おそらく愛別岳に登る多くの人がこの斜面を覗きこんで、ここを行っても大丈夫なのかと不安に思い、そして下まで降りてふり返ったときには、はたして自分は帰れるんだろうかと胸騒ぎを感じることでしょう。
ザックをデポし、カメラと行動食と水をクーリエバッグに詰めて、落石を500個ぐらい落としながらスキーみたいに滑っていきます。
  
  
斜面を下ると踏み跡があらわれ、行く手に凛々しいお姿が。
愛別岳の凛々しいお姿
  
  
くぅ~、しびれますなぁ。頂上部は完全に岩です。
愛別岳山頂部は完全に岩です
  
  
じつは山頂部分、右側(写真では影になっているほう)はハイマツがびっしり張り付いており、少し漕げば明瞭な踏み跡が見つかるので、そちらを行けばかなり安全に山頂を踏めます。
でもせっかく岩山に来たのですから、岩のほうを登りましょう。
ハイマツの方は、たぶん下りのルートですよ。
  
  
よし一気に山頂! と思ったものの、先に登ってた件の女性2人組と岩場でスライド。
こんな辺境の山でこんな時刻に、岩場の順番待ちになるなんて・・・。
  
  
16時30分、愛別岳の山頂に到着。
16時30分、愛別岳の山頂に到着。
  
  
頂上は意外と広くて、一張りならテントも張れます。
テン泊装備をここまで担ぐ気にはなれませんが。
  
  
歩いてきた道
歩いてきた道
  
  
マジで時間がないので、感傷とか達成感とかにひたる間もなく下ります。
  
  
最低鞍部まで下りきって、帰り道を仰ぎ見る。
愛別岳の鞍部から比布岳の稜線を仰ぎ見る
  
  
いったいどこを下ってきたのか。
そしてどこを登ればいいのやら。
  
  
ギターの弦みたいにアキレス腱を伸ばして登るザレ斜面。
登山靴にもクライミングサポートとかあればいいのにと、ただそればかり考えて、なんども休憩しながら最後の斜面を登り切ったときには、太陽が地平線に触れかけていました。
来るときに目をつけていた比布岳の北側の砂礫地へ向けて、再び荷を背負い重い足を引きずり、とぼとぼ歩きます。
  
  
テントを張り終えたときにはもう陽は沈んでいました。
テントを張り終えたときにはもう陽は沈んでいました。
  
  
くたくたです。
今夜はよく眠れそうです。
おやすみなさい。グゥ。。。
  

投稿者 hamayo : 22:30 | コメント (2) | トラックバック

2011年9月 1日

ヒグマ、もしくはウナギイヌとの遭遇


  ヒグマは賢い動物だ。
  だから人間を見たら逃げる。
  それにそもそも人と出くわさないように行動している。


昔からよく耳にする言葉だ。
逆の意見をとんと聞いたことがなかったので、ぼくはその言葉を信じていたし、そうあってほしいと願っていた。
好戦的な羊や、獰猛な鳩がいないのと同じように、'人を見かけたら向かってくるヒグマ' なんているわけないじゃないか。
ぼくはずっとそう思っていたのだ。
この日までは。


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北海岳から黒岳石室に向かって高度を下げ北海沢を渡った先は、この界隈ではきわめて貴重な水場のためベンチなども置かれており、休息するにはうってつけの場所になっている。
沢の対岸には高さ15m、横幅は300mの残雪があり、あたりの気温を下げてくれてもいた。


北海沢の水場



気温は高く陽射しも強く、微風さえそよがなかったこの日、ぼくは稜線で昼飯を食うのを嫌って、この場所まで食事をがまんしていた。
沢を渡った時点でここにいたのはぼくだけだったが、コーヒーを落としてパンを切りさて食べようとしたところに、石室方向から1人の登山者がやってきた。
大きな三脚を抱え、カメラを二台ぶら下げている彼を、便宜上カメラマン氏と呼ぶことにする。


ぼくはパンを食う。
カメラマン氏は被写体を探す。
なにも会話がないまま20分くらいの時間が流れただろうか、鳴き声をたよりに後ろの岩山にナキウサギの姿を探してるぼくに、カメラマン氏が初めて声を掛けてきた。


「熊、来ましたよ!」


振りかえると、対岸の残雪斜面の上に、黒く大きく、やたらと胴が長い獣がいるのが見えた。
じつを言うとこのときぼくは、巨大なウナギイヌが現れたと思ったのだ。
冗談ではなく、本当にウナギイヌに見えたのだ。
その日のツイッターのTLに、バカボンの話が流れてたから、そのせいかもしれない。


たぶん、先に相手に気付いたのはぼく達の方だ。
そいつの姿を認識したとき、相手はまだ斜面のてっぺんを、地面にある何かを探すような動きでのそのそと歩いていた。
沢の音が大きいので、こちらの出す物音や声は聞こえないのだろう。
だがカメラマン氏が立ててあった三脚の方へ移動し、クイックリリースのレバーを倒しカメラを三脚から取り外したその時、ついにヤツはこちらの存在に気付いてしまった。


鈍重なウナギイヌが豹変した。
ジャンプするように雪の斜面に飛び込むと、こちらへ向かって滑り落ちてくる。


残雪を滑り降りるヒグマ




途中で何度も前転して側転して、とてつもなく無様な滑りようではあったが、体勢を立てなおすたびにくいっとこちらに顔を向けるそのさまは、ターゲットの場所をいちいち確認しているようにしか見えず、気味の悪いことこの上ない。


川岸に降りてからのヤツは、さらに不気味な動きをし始めた。
何をしているのか分からないが、ウィービングするボクサーみたいに上体をゆすっていたかと思えば、唐突にこちらにダッシュしてくるふりをする。
視線を合わしているかぎりそれ以上近寄ってこようとはしないが、目をそらすといきなりこちらに向かって走ってくる。
命懸けのダルマさんが転んだ、である。


そうやって少しずつ間合いを詰め、ついにヤツは水辺まで来てしまった。
距離はどのくらいだろうか。
野球で言えば、ピッチャーからキャッチャーまでよりは遠いが、キャッチャーからセカンドまでは離れていない。
いずれにしても、あのスピードなら3秒あればここまで到達されてしまうのは確実だ。
お互いの間を沢が隔ててはいたが、靴を濡らさずに飛び越せるていどの幅しかないので、戦略的に重要な要素にはなりそうもなかったし、どちらかにアドバンテージをもたらすものでもなかった。


ぼくらと熊とには一つだけ共通点があった。
お互いに背水の陣を布いているということだ。
相手はほとんど壁のような雪の斜面を、滑るというよりも滑落してきており、これを登り返すのは無理だ。
一方こちらは背後に岩山を背負っていた。
軽自動車ほどの大きさの岩塊が無数に積み上げられた岩山だ。
時間をかければ登れるが、もちろん時間なんてかけられない。


どう考えてみても、絶望的に不利な地形にいることは確かだ。
三国志演義で、知将が相手を罠にはめて谷沿いの隘路に誘い込み、ボコボコにするシーンが思い出される。
逃げ場がないという、いちばん出会いたくない場所で、出会ってしまったわけだ。


沢をはさんでの睨み合いは続く。
視線というか顔の向きに反応することは分かったが、ほかにもカメラを構えるとビクッとして後ずさりしたり、横を向いて逃げようとするそぶりを見せることも分かってきた。
こちらに興味を持っていることは間違いないとはいえ、やはり熊も少しはこちらのことを恐れているのかもしれない。


しかしそれでも、お互いの距離に大きな変化はない。
それどころか、沢の水に顔を近づけ始めた。
沢を渡ってこられると、もはや白兵戦しかないというこの場面で、カメラマン氏がザックの中からカウンターアソールトを取り出そうと動いた。


それを見た熊の反応は、まさしく電光石火と形容するにふさわしいものだった。
地球の自転の向きが変わるんじゃないかと思うくらい鋭く地面を蹴って向きを変えると、沢の下流の方へ猛スピードで走り出し、40mほど離れたあたりで沢を渡った。


逃げるヒグマ




そのあとがまた凄い。
沢沿いの登山道には両脇にロープが張られているのだが、そのロープをまるで鹿のように飛び越えてしまったのだ。
あの巨大な体躯のヒグマの、両手両足がともに地面から離れ、一瞬とはいえ空中を飛んだのだ。


熊は止まらない。
ぼく達の背後の岩山を、軽やかに、まったくスピードを落とさず、駆け上がっていく。
バランスを崩したりルートを思案する様子は微塵もなく、飛ぶように跳ねるように、20秒ほどで岩山の頂上まで登り切ってしまった。
頂上でいったん立ち止まった熊はこちらへ向きを直し、砦を奪取した酋長のような顔であたりを睥睨していたが、しばらくすると視界から消えた。
もうどこにも熊の気配はない。
水場には、またもとの平穏が帰ってきたのだ。



/////////////////////////////////////////////////////////////


ヒグマとの遭遇、これがその顛末です。
じつを言うと、恐怖はほとんど感じませんでした。
一瞬たりとも気を抜けない、手に汗にぎる場面であったのは間違いないのですが、怖いという感覚は起きませんでした。


それよりも、大型獣とは思えない身のこなしに対する驚嘆が、いちばん大きかったです。
そして間近でヒグマに出会えたことの感動と、「人を見たら逃げる」なんて大ウソやがな、というツッコミ。
これがその時のぼくの頭の中のすべてでした。


今までだって、林道から藪に逃げ込む姿を目撃したことはありましたが、そういう熊はまったくスピードを感じさせない、どっこいしょという声が聞こえてきそうな動きだったと記憶しています。
それに比べたら今回出会った熊は、まったく別の生物種です。
森林限界の上に棲むヒグマはこれほどまでに俊敏に動けるのか・・・。
ありとあらゆる感嘆の言葉を、口に出さずにはいられませんでした。


ひさしぶりに心ふるわせる出来事でした。
またヒグマに会いたい、人里と隔絶された本当の野生のヒグマをまた見てみたいと、そう思っています。
でも確率的に言って、今後これほど近い距離でヒグマに出会えることは、もう二度とないでしょう。


なのでぼくは、10年後、20年後、どこかの山小屋で武勇伝を語る日が来るのを楽しみに待つことにします。
大雪山の北海沢で熊とがっぷり四つに組んで死闘を繰り広げ、最後は小手投げで熊を組み伏せた話しをしているジジイがいたら、それはたぶん、ぼくです。
その物語は、熊のヤツ肘をさすりながら山に帰っていったよ、と結ばれているはずです。



北海岳から黒岳石室に向かって高度を下げ北海沢を渡った先は、この界隈ではきわめて貴重な水場のためベンチなども置かれており、休息するにはうってつけの場所になっている。
沢の対岸には高さ15m、横幅は300mの残雪があり、あたりの気温を下げてくれてもいた。


北海沢の水場



気温は高く陽射しも強く、微風さえそよがなかったこの日、ぼくは稜線で昼飯を食うのを嫌って、この場所まで食事をがまんしていた。
沢を渡った時点でここにいたのはぼくだけだったが、コーヒーを落としてパンを切りさて食べようとしたところに、石室方向から1人の登山者がやってきた。
大きな三脚を抱え、カメラを二台ぶら下げている彼を、便宜上カメラマン氏と呼ぶことにする。


ぼくはパンを食う。
カメラマン氏は被写体を探す。
なにも会話がないまま20分くらいの時間が流れただろうか、鳴き声をたよりに後ろの岩山にナキウサギの姿を探してるぼくに、カメラマン氏が初めて声を掛けてきた。


「熊、来ましたよ!」


振りかえると、対岸の残雪斜面の上に、黒く大きく、やたらと胴が長い獣がいるのが見えた。
じつを言うとこのときぼくは、巨大なウナギイヌが現れたと思ったのだ。
冗談ではなく、本当にウナギイヌに見えたのだ。
その日のツイッターのTLに、バカボンの話が流れてたから、そのせいかもしれない。


たぶん、先に相手に気付いたのはぼく達の方だ。
そいつの姿を認識したとき、相手はまだ斜面のてっぺんを、地面にある何かを探すような動きでのそのそと歩いていた。
沢の音が大きいので、こちらの出す物音や声は聞こえないのだろう。
だがカメラマン氏が立ててあった三脚の方へ移動し、クイックリリースのレバーを倒しカメラを三脚から取り外したその時、ついにヤツはこちらの存在に気付いてしまった。


鈍重なウナギイヌが豹変した。
ジャンプするように雪の斜面に飛び込むと、こちらへ向かって滑り落ちてくる。


残雪を滑り降りるヒグマ




途中で何度も前転して側転して、とてつもなく無様な滑りようではあったが、体勢を立てなおすたびにくいっとこちらに顔を向けるそのさまは、ターゲットの場所をいちいち確認しているようにしか見えず、気味の悪いことこの上ない。


川岸に降りてからのヤツは、さらに不気味な動きをし始めた。
何をしているのか分からないが、ウィービングするボクサーみたいに上体をゆすっていたかと思えば、唐突にこちらにダッシュしてくるふりをする。
視線を合わしているかぎりそれ以上近寄ってこようとはしないが、目をそらすといきなりこちらに向かって走ってくる。
命懸けのダルマさんが転んだ、である。


そうやって少しずつ間合いを詰め、ついにヤツは水辺まで来てしまった。
距離はどのくらいだろうか。
野球で言えば、ピッチャーからキャッチャーまでよりは遠いが、キャッチャーからセカンドまでは離れていない。
いずれにしても、あのスピードなら3秒あればここまで到達されてしまうのは確実だ。
お互いの間を沢が隔ててはいたが、靴を濡らさずに飛び越せるていどの幅しかないので、戦略的に重要な要素にはなりそうもなかったし、どちらかにアドバンテージをもたらすものでもなかった。


ぼくらと熊とには一つだけ共通点があった。
お互いに背水の陣を布いているということだ。
相手はほとんど壁のような雪の斜面を、滑るというよりも滑落してきており、これを登り返すのは無理だ。
一方こちらは背後に岩山を背負っていた。
軽自動車ほどの大きさの岩塊が無数に積み上げられた岩山だ。
時間をかければ登れるが、もちろん時間なんてかけられない。


どう考えてみても、絶望的に不利な地形にいることは確かだ。
三国志演義で、知将が相手を罠にはめて谷沿いの隘路に誘い込み、ボコボコにするシーンが思い出される。
逃げ場がないという、いちばん出会いたくない場所で、出会ってしまったわけだ。


沢をはさんでの睨み合いは続く。
視線というか顔の向きに反応することは分かったが、ほかにもカメラを構えるとビクッとして後ずさりしたり、横を向いて逃げようとするそぶりを見せることも分かってきた。
こちらに興味を持っていることは間違いないとはいえ、やはり熊も少しはこちらのことを恐れているのかもしれない。


しかしそれでも、お互いの距離に大きな変化はない。
それどころか、沢の水に顔を近づけ始めた。
沢を渡ってこられると、もはや白兵戦しかないというこの場面で、カメラマン氏がザックの中からカウンターアソールトを取り出そうと動いた。


それを見た熊の反応は、まさしく電光石火と形容するにふさわしいものだった。
地球の自転の向きが変わるんじゃないかと思うくらい鋭く地面を蹴って向きを変えると、沢の下流の方へ猛スピードで走り出し、40mほど離れたあたりで沢を渡った。


逃げるヒグマ




そのあとがまた凄い。
沢沿いの登山道には両脇にロープが張られているのだが、そのロープをまるで鹿のように飛び越えてしまったのだ。
あの巨大な体躯のヒグマの、両手両足がともに地面から離れ、一瞬とはいえ空中を飛んだのだ。


熊は止まらない。
ぼく達の背後の岩山を、軽やかに、まったくスピードを落とさず、駆け上がっていく。
バランスを崩したりルートを思案する様子は微塵もなく、飛ぶように跳ねるように、20秒ほどで岩山の頂上まで登り切ってしまった。
頂上でいったん立ち止まった熊はこちらへ向きを直し、砦を奪取した酋長のような顔であたりを睥睨していたが、しばらくすると視界から消えた。
もうどこにも熊の気配はない。
水場には、またもとの平穏が帰ってきたのだ。



/////////////////////////////////////////////////////////////


ヒグマとの遭遇、これがその顛末です。
じつを言うと、恐怖はほとんど感じませんでした。
一瞬たりとも気を抜けない、手に汗にぎる場面であったのは間違いないのですが、怖いという感覚は起きませんでした。


それよりも、大型獣とは思えない身のこなしに対する驚嘆が、いちばん大きかったです。
そして間近でヒグマに出会えたことの感動と、「人を見たら逃げる」なんて大ウソやがな、というツッコミ。
これがその時のぼくの頭の中のすべてでした。


今までだって、林道から藪に逃げ込む姿を目撃したことはありましたが、そういう熊はまったくスピードを感じさせない、どっこいしょという声が聞こえてきそうな動きだったと記憶しています。
それに比べたら今回出会った熊は、まったく別の生物種です。
森林限界の上に棲むヒグマはこれほどまでに俊敏に動けるのか・・・。
ありとあらゆる感嘆の言葉を、口に出さずにはいられませんでした。


ひさしぶりに心ふるわせる出来事でした。
またヒグマに会いたい、人里と隔絶された本当の野生のヒグマをまた見てみたいと、そう思っています。
でも確率的に言って、今後これほど近い距離でヒグマに出会えることは、もう二度とないでしょう。


なのでぼくは、10年後、20年後、どこかの山小屋で武勇伝を語る日が来るのを楽しみに待つことにします。
大雪山の北海沢で熊とがっぷり四つに組んで死闘を繰り広げ、最後は小手投げで熊を組み伏せた話しをしているジジイがいたら、それはたぶん、ぼくです。
その物語は、熊のヤツ肘をさすりながら山に帰っていったよ、と結ばれているはずです。

投稿者 hamayo : 22:05 | コメント (8) | トラックバック

2011年7月14日

アンギラスは主役、ニセイカウシュッペ山は脇役



どうしてこの山には名前が無いのだろうかと不思議に思う山はいくつかありますが、北大雪はニセイカウシュッペ山の東に聳え立つ岩山は、まさにその最たるものだと思うのです。


ニセイカウシュッペ山の東に聳える岩山




山頂部にいくつもの岩塔を従えた姿は、まるで北の八ツ峰。
それはいくらなんでも褒めすぎだろうというのなら、北のエギーユ・デュ・ミディ。
いえ、ウソです。すんません。


いずれにしても、もともと岩峰に乏しい北海道では、こういう凛々しい山はそうそうお目にかかれないので、ニペソツ、芦別岳、利尻岳に次ぐ地位を与えられてもいいんじゃないかと思うのですが、なんせ正式な名前が無いのです。


しかし正式な名はなくても通称名はあります。
誰が呼んだかアンギラス。
おそらく北海道の岳人たちも、名前がなけりゃ話しもしにくいということで、いつしかこの呼び方が定着していったのでしょう。
いちおう補足しておくと、軍艦山という冴えない呼び名もあるようです。


というわけで、今回の山行の主役はニセイカウシュッペ山ではなく、アンギラスなのです。



続きを読む・・・





歩き始めは、林道がそのまま延長されたような、なだらかな道を行きます。
こないだの狩場とは比べものにならない、しっかりとした道です(というかあれは道でさえなかった)。


郵便屋さんならカブに乗って配達してくれそうな道なのです。
郵便屋さんならカブに乗って配達してくれそうな道なのです。



少しずつ道は細くなり、段差やぬかるみ、倒木なども出てくるのですが、斜度は変わらずゆるいままなのでいつまでもダラダラ。
登ってる感じがあまりしない道でもあります。


てくてくと、散歩気分で1時間、ようやくニセイカウシュッペ山が見えてきました。
どれがニセイカウシュッペ山?。さぁ。。。
散歩気分で1時間、ようやくニセイカウシュッペ山が見えてきました

UFOみたいなのが写ってるのは、ブユです。
暑いのガマンしてここまで長袖で登ってきたけれど、もう汗だくでこりゃかなわんと腕まくりした途端にブユが集ってきます。


木々が低くなり、だんだんと岩まじりの道になって、見晴台という絶対に見晴らしがいいに決まってる場所に到着です。
見晴台から見る表大雪の山々

左から、赤岳、白雲岳、黒岳、北海、凌雲、北鎮、鋸、比布(北斜面の残雪の多さには驚愕)。
雲の中に国立峰と愛別岳かな。


というかあなたたち、誰でもいいからアンギラスに名前を分けてあげてくださいな。
こっちはニセイカウシュッペ、アンギラス、平山、ひまな山、ヒマラヤマ、ですよ。
学生プロレスが組んだロックバンドみたいじゃないですか。
ボーカルだけ本名だし。


それはさておき、すいすいと快適な尾根道を進み、1560mピークを巻くあたりまで来ると、眼前になんだかイカツい岩山の登場です。


イカツい岩山。もちろん名前はないが、いちおう大槍と呼ばれています。
イカツい岩山。もちろん名前はないが、いちおう大槍と呼ばれています。

主峰を差しおいて大槍を名乗るとは、いい根性してますよ。


登山道は大槍を通らず、肩を巻いて登っていきます。
大槍の山頂へ続く薄い踏み跡もありますが、イワイワなので登ろうと思えば適当に登れそうです。


大槍から層雲峡に向かって落ちていく尾根と、小槍。
ちゃんと小槍まであるんです。
大槍から層雲峡に向かって落ちていく尾根と、小槍。

なるほど大槍はジャンクションピークなんだな。
支尾根にしてはなかなか秀麗なシェイプをしてまして、真冬のナイフリッジを想像すると背筋がぞくぞくします。
もちろんぼくには歩けませんが。


左を見れば、いよいよニセイカウシュッペも迫ってきます。
茅刈別第三支川の長い雪渓に想像がふくらみます

これまた山体よりも、ゆるく弧を描いて山頂直下までのび上がる白い雪渓に、いろんな想像が膨らむというもんです。
茅刈別第三支川。
この時期でも写真にある末端よりはるか下まで雪は続いているので、あと半月ほど早ければ、白馬大雪渓と肩を並べる全長4km~5km、標高差800m~1000mの長ーい雪渓歩きが楽しめそうな予感に胸がときめきます。


大槍を越えたあたりがちょうど森林限界で、山頂まではあと少し。


お花畑に寄り道したりしながら。
お花畑に寄り道したりしながら。



ニセイカウシュッペ山頂に到着です。
ニセイカウシュッペ山頂。

三角点に腰を下ろす不届き者と思われるかもしれませんが、たぶん空気椅子です。
大腿四頭筋がプルプル動いてるでしょ?。


それからオイルサーディンとか食って。
オイルサーディンを山で食う



さぁ、アンギラスへ。
といっても登山道はありません。
踏み跡はいくつもあるのですが、そもそも地図にも道がないのでどこへ向かえばよいのか分からないのです。
Twitterつながりの、ぎょさんからアドバイスいただいたりしつつ、いざハイマツ藪に突入。
けっきょく正解だったのは、キジ撃ち道でした。
目印は真っ白なペーパーでございます。


腰丈のハイマツ藪を漕いでいくと、アンギラスの登場です。
腰丈のハイマツ藪を漕いでいくと、アンギラスの登場です。



もう少し進んでいくと、ネマガリ藪の急斜面に出くわします。
ここは一気に鞍部に向かって、転がるように下りていきます。
あ、すいません間違えました。鞍部に向かって、転がり落ちていきます。
下に着いて振り返って、こんなところ登り返すのかやめときゃ良かったと後悔する、そういう斜面です。


鞍部から見上げるアンギラス。男前やなぁ。
鞍部から見上げるアンギラス。男前やなぁ。



そしていよいよ、リトル・ミディに取り付きます。
どきどき。
でもじつは中間点までは、ハイマツがびっしり生えているので岩山という感じはなく、それほど緊張する箇所はありません。
パンツが松ヤニだらけになるだけです。


落ちたらアウトかも、って岩場は2箇所。
それもほんの数メートルだけです。
ホールドは少ないですが、みんながそれを使うせいかそこだけ色が変わっているので、答えが書いてある試験問題みたいなものです。


ぞくぞく。
ぞくぞく。ぶるぶる。



うほっほ。
うほっほ。ぶるぶる。



アンギラスの頂上からの眺めは、そりゃあもう爽快のひとことです。



    ・アンギラスの頂上からの景色

      QuickTimeVR版(高画質) はこちらをクリック  QuicktimeVR版 (高画質)はこちらをクリック(1715KB)
      Flash版(中画質) はこちらをクリック  Flash版 (中画質)はこちらをクリック(1700KB)



こうして山の上からの眺めを見て思うのは、この山は地上からは見ることができない、あるいは一部しか見えないんじゃないだろうか、ということです。
北海道がいくら広大だと言っても、名のあるほとんどの山は頂上から下界を見下ろせば、どこかしらの町や道路が見えるものです。
ところがアンギラスの頂上からは、そういうものが見えないのです。
だとすれば、これだけ威厳のある山容なのに名前が付かなかったことにも合点がいきます。


さて、だいぶ時間も押しているので、長居はせずに戻ります。
岩場は下りの方がおっかないから、慎重に、慎重に。


行きは前しか見てなかったから気付かなかったけど、こんな山を背負って登ってきたのか。
行きは前しか見てなかったから気付かなかったけど、こんな山を背負って登ってきたのか。

これは大槍を反対側から見た姿です。
主峰のニセイカウシュッペ山が、膨れそこないのシュークリームみたいな鈍頂だったことを考えれば、尾根の途中の一ピークが大槍を名乗ったとしてもやむなしという気がします。


鞍部まで下って雪の上で一息入れて、さきほど来るとき転がり落ちるように転がり落ちたネマガリ急斜面を、死にもの狂いで直登します。
びっしりと下向きに生えたネマガリ藪を登っていると、気管支の繊毛運動によって排出されていく異物になった気分です。


稜線まで戻れば、あとはもう立派な登山道を下るだけです。


午後3時を回って、表大雪の兄貴達に斜光線が当たっています。
午後3時を回って、表大雪の兄貴達に斜光線が当たっています。



樹林帯の中に注がれる光もやわらかくなる時間です。
樹林帯の中に注がれる光もやわらかくなる時間です。



無事に下山して、長い長い林道をとことこ走り、町に着くころには日暮れの時間。
無事に下山して、長い長い林道をとことこ走り、町に着くころには日暮れの時間。



汗だくになって、ブユに刺されて、パンツもシャツも松ヤニにまみれて、道のないところを歩いてくたくたになって、北国の短い夏の長い一日を、山にどっぷりとつかって過ごしたあとに見る夕焼けは、いつもの夕暮れの空よりも、100倍きれいに輝いていました。
だからこの後、町のお店が軒並み閉まってて、晩御飯が焼きそばUFO(賞味期限切れで半額)しかなかったことも、仕方ないさと笑って許します。




登山日:2011年7月7日

アンギラスとニセイカウシュッペ山 GPSトラック
アンギラスとニセイカウシュッペ山 GPSトラック




アンギラスとニセイカウシュッペ山 断面図
アンギラスとニセイカウシュッペ山 断面図







歩き始めは、林道がそのまま延長されたような、なだらかな道を行きます。
こないだの狩場とは比べものにならない、しっかりとした道です(というかあれは道でさえなかった)。


郵便屋さんならカブに乗って配達してくれそうな道なのです。
郵便屋さんならカブに乗って配達してくれそうな道なのです。



少しずつ道は細くなり、段差やぬかるみ、倒木なども出てくるのですが、斜度は変わらずゆるいままなのでいつまでもダラダラ。
登ってる感じがあまりしない道でもあります。


てくてくと、散歩気分で1時間、ようやくニセイカウシュッペ山が見えてきました。
どれがニセイカウシュッペ山?。さぁ。。。
散歩気分で1時間、ようやくニセイカウシュッペ山が見えてきました

UFOみたいなのが写ってるのは、ブユです。
暑いのガマンしてここまで長袖で登ってきたけれど、もう汗だくでこりゃかなわんと腕まくりした途端にブユが集ってきます。


木々が低くなり、だんだんと岩まじりの道になって、見晴台という絶対に見晴らしがいいに決まってる場所に到着です。
見晴台から見る表大雪の山々

左から、赤岳、白雲岳、黒岳、北海、凌雲、北鎮、鋸、比布(北斜面の残雪の多さには驚愕)。
雲の中に国立峰と愛別岳かな。


というかあなたたち、誰でもいいからアンギラスに名前を分けてあげてくださいな。
こっちはニセイカウシュッペ、アンギラス、平山、ひまな山、ヒマラヤマ、ですよ。
学生プロレスが組んだロックバンドみたいじゃないですか。
ボーカルだけ本名だし。


それはさておき、すいすいと快適な尾根道を進み、1560mピークを巻くあたりまで来ると、眼前になんだかイカツい岩山の登場です。


イカツい岩山。もちろん名前はないが、いちおう大槍と呼ばれています。
イカツい岩山。もちろん名前はないが、いちおう大槍と呼ばれています。

主峰を差しおいて大槍を名乗るとは、いい根性してますよ。


登山道は大槍を通らず、肩を巻いて登っていきます。
大槍の山頂へ続く薄い踏み跡もありますが、イワイワなので登ろうと思えば適当に登れそうです。


大槍から層雲峡に向かって落ちていく尾根と、小槍。
ちゃんと小槍まであるんです。
大槍から層雲峡に向かって落ちていく尾根と、小槍。

なるほど大槍はジャンクションピークなんだな。
支尾根にしてはなかなか秀麗なシェイプをしてまして、真冬のナイフリッジを想像すると背筋がぞくぞくします。
もちろんぼくには歩けませんが。


左を見れば、いよいよニセイカウシュッペも迫ってきます。
茅刈別第三支川の長い雪渓に想像がふくらみます

これまた山体よりも、ゆるく弧を描いて山頂直下までのび上がる白い雪渓に、いろんな想像が膨らむというもんです。
茅刈別第三支川。
この時期でも写真にある末端よりはるか下まで雪は続いているので、あと半月ほど早ければ、白馬大雪渓と肩を並べる全長4km~5km、標高差800m~1000mの長ーい雪渓歩きが楽しめそうな予感に胸がときめきます。


大槍を越えたあたりがちょうど森林限界で、山頂まではあと少し。


お花畑に寄り道したりしながら。
お花畑に寄り道したりしながら。



ニセイカウシュッペ山頂に到着です。
ニセイカウシュッペ山頂。

三角点に腰を下ろす不届き者と思われるかもしれませんが、たぶん空気椅子です。
大腿四頭筋がプルプル動いてるでしょ?。


それからオイルサーディンとか食って。
オイルサーディンを山で食う



さぁ、アンギラスへ。
といっても登山道はありません。
踏み跡はいくつもあるのですが、そもそも地図にも道がないのでどこへ向かえばよいのか分からないのです。
Twitterつながりの、ぎょさんからアドバイスいただいたりしつつ、いざハイマツ藪に突入。
けっきょく正解だったのは、キジ撃ち道でした。
目印は真っ白なペーパーでございます。


腰丈のハイマツ藪を漕いでいくと、アンギラスの登場です。
腰丈のハイマツ藪を漕いでいくと、アンギラスの登場です。



もう少し進んでいくと、ネマガリ藪の急斜面に出くわします。
ここは一気に鞍部に向かって、転がるように下りていきます。
あ、すいません間違えました。鞍部に向かって、転がり落ちていきます。
下に着いて振り返って、こんなところ登り返すのかやめときゃ良かったと後悔する、そういう斜面です。


鞍部から見上げるアンギラス。男前やなぁ。
鞍部から見上げるアンギラス。男前やなぁ。



そしていよいよ、リトル・ミディに取り付きます。
どきどき。
でもじつは中間点までは、ハイマツがびっしり生えているので岩山という感じはなく、それほど緊張する箇所はありません。
パンツが松ヤニだらけになるだけです。


落ちたらアウトかも、って岩場は2箇所。
それもほんの数メートルだけです。
ホールドは少ないですが、みんながそれを使うせいかそこだけ色が変わっているので、答えが書いてある試験問題みたいなものです。


ぞくぞく。
ぞくぞく。ぶるぶる。



うほっほ。
うほっほ。ぶるぶる。



アンギラスの頂上からの眺めは、そりゃあもう爽快のひとことです。



    ・アンギラスの頂上からの景色

      QuickTimeVR版(高画質) はこちらをクリック  QuicktimeVR版 (高画質)はこちらをクリック(1715KB)
      Flash版(中画質) はこちらをクリック  Flash版 (中画質)はこちらをクリック(1700KB)



こうして山の上からの眺めを見て思うのは、この山は地上からは見ることができない、あるいは一部しか見えないんじゃないだろうか、ということです。
北海道がいくら広大だと言っても、名のあるほとんどの山は頂上から下界を見下ろせば、どこかしらの町や道路が見えるものです。
ところがアンギラスの頂上からは、そういうものが見えないのです。
だとすれば、これだけ威厳のある山容なのに名前が付かなかったことにも合点がいきます。


さて、だいぶ時間も押しているので、長居はせずに戻ります。
岩場は下りの方がおっかないから、慎重に、慎重に。


行きは前しか見てなかったから気付かなかったけど、こんな山を背負って登ってきたのか。
行きは前しか見てなかったから気付かなかったけど、こんな山を背負って登ってきたのか。

これは大槍を反対側から見た姿です。
主峰のニセイカウシュッペ山が、膨れそこないのシュークリームみたいな鈍頂だったことを考えれば、尾根の途中の一ピークが大槍を名乗ったとしてもやむなしという気がします。


鞍部まで下って雪の上で一息入れて、さきほど来るとき転がり落ちるように転がり落ちたネマガリ急斜面を、死にもの狂いで直登します。
びっしりと下向きに生えたネマガリ藪を登っていると、気管支の繊毛運動によって排出されていく異物になった気分です。


稜線まで戻れば、あとはもう立派な登山道を下るだけです。


午後3時を回って、表大雪の兄貴達に斜光線が当たっています。
午後3時を回って、表大雪の兄貴達に斜光線が当たっています。



樹林帯の中に注がれる光もやわらかくなる時間です。
樹林帯の中に注がれる光もやわらかくなる時間です。



無事に下山して、長い長い林道をとことこ走り、町に着くころには日暮れの時間。
無事に下山して、長い長い林道をとことこ走り、町に着くころには日暮れの時間。



汗だくになって、ブユに刺されて、パンツもシャツも松ヤニにまみれて、道のないところを歩いてくたくたになって、北国の短い夏の長い一日を、山にどっぷりとつかって過ごしたあとに見る夕焼けは、いつもの夕暮れの空よりも、100倍きれいに輝いていました。
だからこの後、町のお店が軒並み閉まってて、晩御飯が焼きそばUFO(賞味期限切れで半額)しかなかったことも、仕方ないさと笑って許します。




登山日:2011年7月7日

アンギラスとニセイカウシュッペ山 GPSトラック
アンギラスとニセイカウシュッペ山 GPSトラック




アンギラスとニセイカウシュッペ山 断面図
アンギラスとニセイカウシュッペ山 断面図



投稿者 hamayo : 23:48 | コメント (7) | トラックバック

2011年7月 1日

狩場山 真駒内コース 敗退



撤退を決める理由というのはいろいろある。
道を見失うことだったり、時間切れだったり、難所を通過する技量がないことだったり、怪我だったり、まぁとにかくいろいろある。
でも今回ぼくが、狩場山の途中で撤退した理由というのは、自分でもはっきりこれだというのが分からないのだ。


直接のトリガーとなったのは、残雪斜面のトラバースに危険を感じたことだ。
突っ込めば高確率で滑落してただろう。
安全に通過するための装備はなかった。


でも、もしアイゼンとピッケルを持っていたとしたら、ぼくは先へ進んでいただろうか。
分からない。


慎重に雪渓を歩く



もうその時点で、ぼくはそうとう疲れていた。
体力的なことではない。
そこまでの道のりを振り返り、また同じルートを戻ることを想像すると、いっきに気力が萎えていくのだ。
それくらい'いろんなこと'があったし、同じ数の'いろんなこと'をもう一度味わわなきゃならない。


もう沢山だ。
ここまで来られたらじゅうぶんじゃないか。
そう言って、きびすを返した、狩場山真駒内コースの、これは負けた記録だ。



続きを読む・・・





真駒内コースの登山口には、立派な無人小屋と野営場がある。
その名も「熊戻野営場」。
すぐそばの谷は熊戻渓谷と呼ばれている。


熊戻渓谷
熊戻渓谷




送り仮名をどう付けるかによってだいぶ意味も変わってくるが、険しい渓谷で熊が戻っていった、が語源だと思うことにする。
熊がいてテントに戻れないとか、追い払ったはずの熊が戻ってきたとか、熊さん早く山に戻ってくださいとかではないと、思う。
たぶん。


驚くべきことに、ぼくが今シーズン最初の入山者。
驚くべきことに、ぼくが今シーズン最初の入山者。




もちろん、記入せずに登る人もいるわけだし、本当に最初かどうかは分からないけど。


狩場山とこのコースのことについて、少し説明することにしよう。
狩場山には、現在3つのコースがある。(過去には5つあったが2つは廃道になった)
距離も短く難所もない、最も一般的な千早(ちはせ)新道コース。
海からの長大な尾根を辿る茂津多コースは、ルートは平易だがヤブが深い場所があるという。
そして今回歩く、真駒内コースだ。


真駒内コースは、枝分かれの激しい尾根に乗ったり下りたりトラバースしたり、地図をながめてるだけでイヤらしい箇所がいくつも見えてくる、そういうルートだ。
1989年発行のアルペンガイド北海道の山によると、残雪期は非常に道に迷いやすいとか、6月までは雪が多くザイルがあった方が良いだとか、全コースでヒグマ出没の危険があり十分な対策が必要とか、ろくでもないことばかり書いてある。


それでも当時はこれが一般コースだったのだ。
新道コースが開削された現在は入山者もほとんどおらず、本州の登山地図でいうところの破線ルートと同レベルの荒れかただろう。
狩場山としての山開きは、7月の第2日曜日。
これは道内の山で最も遅い山開きになる。


ではそろそろ山に登るとしよう。


真駒内川にかかる、よく揺れる吊り橋を渡って5分と経たないうちに、道が消えてしまった。
(帰路に撮影。だから少しだけ道っぽくなってる。)
よく揺れる吊り橋を渡って5分と経たないうちに、道が消えてしまった。




あたりはブナの原生林なのに、ここだけがパイオニア植物で埋め尽くされている。
何年か前に土砂崩れかなにかが起きたのだろう。
そのとき登山道も一緒に流された。
そしてその後、道を整備するものが誰もいなかった、ということなのだろう。
尾根に取り付くまでの区間、こういう場所が次々に出現する。


結局、この区間でのルートファインディングと通過に、40分もかかってしまった。
(帰路に撮影。だから少しだけ道っぽくなってる。)
この区間でのルートファインディングと通過に、40分もかかってしまった。




尾根に上がるべく直登してみたり、先行者の足跡を探してみたりしたが、手がかりはなかった。
高度を維持してまっすぐ突っ切れば良かったのだが、地面はあまりに脆く、そして急だった。
イタドリやウツギの枝を掴んでないと、ずるずると谷に引き込まれてしまう。
アザミを掴んだらハズレ。
そういうヤブなのだ。


ヤブ地帯を抜け、右側の尾根に取り付く所まで来ると、ようやく踏み跡は明瞭になる。
ただ、急斜面に付けられたスイッチバックは、踏み跡として明瞭だというだけで、重力に対して真っ直ぐ立てるわけではなく、草を引っ掴んで直登するのとなんら変わらない酷いものだった。


しかし、ここをなんとか這い上がって尾根に出てしまうと、今までの悪路がうそのように、すばらしいトレイルが現れる。


ブナの茂る尾根の、ふかふかなトレイル。
ブナの茂る尾根の、フカフカなトレイル。

この上なく歩きやすいし、適度なアップダウンがあって飽きないし、それになんといってもブナの森の美しいことといったら。


あまり知られていないが、じつは狩場山系のブナ原生林は、日本一の蓄積量を誇るのだそうだ。
坪田和人さんの著書「ブナの山旅」によると、狩場山の東に広がる賀老高原は、和賀岳(秋田、岩手県境)、浅草岳(福島、新潟県境)についで第3位となっており、世界遺産のあの山よりも評価は高い。
ちなみに同著には、この真駒内コースも別枠でエントリーされている。
「道南最深部の山で熊におびえながら尾根のブナを訪ねる」という、せたな町からクレームが来そうな紹介文とともに。
ん?。熊・・・。


そう、熊なのだ。
見とれてしまうほど美しい、白い樹肌のブナ林の平穏も、長くは続かない。
アルペンガイドに「十分な対策が必要」と書いてあった、アイツのお出ましだ。


熊糞。
熊糞



熊毛。
熊毛



熊足跡。
熊足跡



残念ながら、熊臭は写真に写らない。


中には、どう見ても10分以内に落とされたばかりだろうという、新鮮な熊糞もいくつかある。
ネマガリの上物を食ってるんだな。
いっきに緊張感が高まる。
だがそれも、最初の内だけだった。


熊糞なんて、10や20じゃきかない。
歩けども歩けども、熊糞。
山頭火なら、分け入っても分け入っても熊糞、と詠んだに違いない
あいつら、歩きながら糞してるんじゃないか?。
はじめは踏まないように注意していたが、一度踏んづけてしまうともうどうでもよくなった。
ドンと来い熊糞!。
ここは熊の下水道だ。


狩場山の前衛峰を捉える。
狩場山の前衛峰を捉える



標高850mあたりから、シラカバがあらわれ始め、だんだんとブナは見られなくなる。
遠望もきくようになり、狩場山の前衛峰も捉えることができるようになったが、残雪も増えはじめた。
再び道が消える。


そして崩壊地。
そして崩壊地

一歩踏み出すたびに足元が崩れていく。
ネマガリをしっかり抱いて、お祈りする。
この石なら動かないだろうと体重を預けたら、石の周りの地面ごとすべり落ちていく。
そしてこれまた、崩壊地は1箇所だけでは終わらないのだ。


標高1100mを越えると、もう雪の上を歩くほうが多くなる。
腐った雪なら歩けるが、半分は氷化し、半分は硬く締まった雪だ。


カッチリ硬い雪の斜面。足蹴り一発、ぜんぜん利かない。
カッチリ硬い雪の斜面。足蹴り一発、ぜんぜん利かない。

ストックを雪面に刺し、やわらかい所を探りつつ、足場を作りながら進んでいく。


難所はさらに続く。
かすかにそれと分かる踏み跡をたどって笹薮を抜けると、目の前にドーンと、引き返す理由としては十分な雪壁があらわれる。
上の方は雪庇の名残だろう。
10mくらいの高さがあるから向こうは見えない。
これを登ったら快適な稜線のトレイルになるかもしれないと、根拠のないポジティブな意見が舞い降りる。
あぁ、人はこうやって深みに嵌っていくのだ。


幸いというか、下は濃密なネマガリの藪だ。
滑ってもそこで止まる。
一度でも滑落したらやめると決めて登り始めたら、滑らなかった。


しかし、登ってはみたけれど、快適なトレイルなんてあるわけがない。


もう帰ろう。
もう帰ろう




今の壁に比べたら斜度はぜんぜん小さいけれど、あそこで滑ったら千早川の源流まで落っこちるしかない。
とにかく雪がガチガチに硬いのだ。
ダガーポジションでカニ歩きとか、頭では考えても、手元にストックしかないのだからどうしようもない。
ヤブを漕ぐのももうたくさんだ。
帰ろう。
十分歩いたし、また同じだけ歩かなきゃいけない。


さっきの壁を降りるとき、見事に滑り落ちる。
ちゃんとネマガリ藪に突っ込んで止まったけど、肘を強打してアイタタタ。


とりあえず、危険地帯を抜けて、ほっとひと息。
とりあえず、危険地帯を抜けて、ほっとひと息。



帰り道のことは、ビデオテープを逆再生するのと同じだ。
雪渓は行きの踏み跡のおかげで迷わなくてすんだけど、ぐずぐずの崩壊地でまた肝を冷やし、熊糞はなんだかちょっと増えてるな。


熊の気配をビンビン感じつつ、ちょいとご飯を頂いてくよ。
熊の気配をビンビン感じつつ、ちょいとご飯を頂いてくよ。



最後のヤブは、もうどこを通ったかなんて覚えてない。
帰ってからGPSトラックを見たら、往路と違う場所を突破してきたらしい。
ぜんぜん気付かなかったよ。


吊り橋が見えたときは、心底ほっとして、腰が砕けそうになった。
吊り橋が見えたときは、心底ほっとして、腰が砕けそうになった。



/////////////////////////////////////////////////////////////////


登る前から予想はしていましたが、狩場山の真駒内コースは、いまやぜんぜん一般コースではありませんでした。
たぶん、何の心づもりもしないで入山したら、歩き出して5分の、道が突然消える場所で引き返していたと思います。
ポイントとなるのは、この最初のルートファインディングや崩壊地の通過、上部の雪、ヤブ、それに熊でしょう。


上部の雪渓については、アイゼン・ピッケルがあれば突破は可能ですが、時期を少しずらすだけでだいぶ違う結果になったと思います。
おそらく、あと1週間遅ければ(つまり明日明後日なら)、雪渓は縮小し、雪壁は低くなり、埋もれている夏道もだいぶ顔を出しているでしょう。
さらにもう1週間遅くなると、そのころには残雪について気に留める必要もないかもしれません。


逆に2週間ほど早い時期に登れば、1000mより上は雪が繋がっているはずです。
その時期ならアイゼンとピッケルは持つことになるし、そうなればコース取りは自由になります。
わざわざ千早川源頭の斜面をトラバースしなくても、尾根通しで雪陵を進むことができれば、その方がよっぽど安全です。


ただ前半の道が消えてしまっている区間や、中間部に連続する崩壊地、いたるところのヤブについては、再整備されるか、山開きのあと入山者が増えてトレースが出来上がるまでは、難所のままでしょう。
地図読み、ルートファインディング、薮漕ぎ、そういうのが好きな人でないとキツイと思います。


熊については・・・。
さすがに今回は鈴を持っていきました。
磐梯山の山頂小屋で買った土産用の鈴なので、効果があったのかどうかは分かりません。
熊ビーコンとかあったらいいのに、とずっと考えながら歩いてました。


参考までに、これは下流の矢淵橋からみた狩場山の前衛峰です。
下流の矢淵橋からみた狩場山の前衛峰




歩いた場所の雪は、ほとんど隠れて見えてませんが、この写真のような雪型が見えている時期は、上部の雪は今回の記事のような感じになっているという目安にはなると思います。
麓から見るよりも、上の方はずっと雪は多いです。
こういうコースがお好きな方は、お早めにお出かけくださいまし。


もしもう一度やるとしたら、ぼくはもう少し雪が多いときに行きたいと思います。
でも今はお腹いっぱいなので、しばらくは遠慮しときます。
ホント、疲れたんですよ。


登山日:2011年6月26日

狩場山 真駒内コース(途中撤退) GPSトラック
狩場山 真駒内コース(途中撤退) GPSトラック




狩場山 真駒内コース(途中撤退) 断面図
狩場山 真駒内コース(途中撤退) 断面図







真駒内コースの登山口には、立派な無人小屋と野営場がある。
その名も「熊戻野営場」。
すぐそばの谷は熊戻渓谷と呼ばれている。


熊戻渓谷
熊戻渓谷




送り仮名をどう付けるかによってだいぶ意味も変わってくるが、険しい渓谷で熊が戻っていった、が語源だと思うことにする。
熊がいてテントに戻れないとか、追い払ったはずの熊が戻ってきたとか、熊さん早く山に戻ってくださいとかではないと、思う。
たぶん。


驚くべきことに、ぼくが今シーズン最初の入山者。
驚くべきことに、ぼくが今シーズン最初の入山者。




もちろん、記入せずに登る人もいるわけだし、本当に最初かどうかは分からないけど。


狩場山とこのコースのことについて、少し説明することにしよう。
狩場山には、現在3つのコースがある。(過去には5つあったが2つは廃道になった)
距離も短く難所もない、最も一般的な千早(ちはせ)新道コース。
海からの長大な尾根を辿る茂津多コースは、ルートは平易だがヤブが深い場所があるという。
そして今回歩く、真駒内コースだ。


真駒内コースは、枝分かれの激しい尾根に乗ったり下りたりトラバースしたり、地図をながめてるだけでイヤらしい箇所がいくつも見えてくる、そういうルートだ。
1989年発行のアルペンガイド北海道の山によると、残雪期は非常に道に迷いやすいとか、6月までは雪が多くザイルがあった方が良いだとか、全コースでヒグマ出没の危険があり十分な対策が必要とか、ろくでもないことばかり書いてある。


それでも当時はこれが一般コースだったのだ。
新道コースが開削された現在は入山者もほとんどおらず、本州の登山地図でいうところの破線ルートと同レベルの荒れかただろう。
狩場山としての山開きは、7月の第2日曜日。
これは道内の山で最も遅い山開きになる。


ではそろそろ山に登るとしよう。


真駒内川にかかる、よく揺れる吊り橋を渡って5分と経たないうちに、道が消えてしまった。
(帰路に撮影。だから少しだけ道っぽくなってる。)
よく揺れる吊り橋を渡って5分と経たないうちに、道が消えてしまった。




あたりはブナの原生林なのに、ここだけがパイオニア植物で埋め尽くされている。
何年か前に土砂崩れかなにかが起きたのだろう。
そのとき登山道も一緒に流された。
そしてその後、道を整備するものが誰もいなかった、ということなのだろう。
尾根に取り付くまでの区間、こういう場所が次々に出現する。


結局、この区間でのルートファインディングと通過に、40分もかかってしまった。
(帰路に撮影。だから少しだけ道っぽくなってる。)
この区間でのルートファインディングと通過に、40分もかかってしまった。




尾根に上がるべく直登してみたり、先行者の足跡を探してみたりしたが、手がかりはなかった。
高度を維持してまっすぐ突っ切れば良かったのだが、地面はあまりに脆く、そして急だった。
イタドリやウツギの枝を掴んでないと、ずるずると谷に引き込まれてしまう。
アザミを掴んだらハズレ。
そういうヤブなのだ。


ヤブ地帯を抜け、右側の尾根に取り付く所まで来ると、ようやく踏み跡は明瞭になる。
ただ、急斜面に付けられたスイッチバックは、踏み跡として明瞭だというだけで、重力に対して真っ直ぐ立てるわけではなく、草を引っ掴んで直登するのとなんら変わらない酷いものだった。


しかし、ここをなんとか這い上がって尾根に出てしまうと、今までの悪路がうそのように、すばらしいトレイルが現れる。


ブナの茂る尾根の、ふかふかなトレイル。
ブナの茂る尾根の、フカフカなトレイル。

この上なく歩きやすいし、適度なアップダウンがあって飽きないし、それになんといってもブナの森の美しいことといったら。


あまり知られていないが、じつは狩場山系のブナ原生林は、日本一の蓄積量を誇るのだそうだ。
坪田和人さんの著書「ブナの山旅」によると、狩場山の東に広がる賀老高原は、和賀岳(秋田、岩手県境)、浅草岳(福島、新潟県境)についで第3位となっており、世界遺産のあの山よりも評価は高い。
ちなみに同著には、この真駒内コースも別枠でエントリーされている。
「道南最深部の山で熊におびえながら尾根のブナを訪ねる」という、せたな町からクレームが来そうな紹介文とともに。
ん?。熊・・・。


そう、熊なのだ。
見とれてしまうほど美しい、白い樹肌のブナ林の平穏も、長くは続かない。
アルペンガイドに「十分な対策が必要」と書いてあった、アイツのお出ましだ。


熊糞。
熊糞



熊毛。
熊毛



熊足跡。
熊足跡



残念ながら、熊臭は写真に写らない。


中には、どう見ても10分以内に落とされたばかりだろうという、新鮮な熊糞もいくつかある。
ネマガリの上物を食ってるんだな。
いっきに緊張感が高まる。
だがそれも、最初の内だけだった。


熊糞なんて、10や20じゃきかない。
歩けども歩けども、熊糞。
山頭火なら、分け入っても分け入っても熊糞、と詠んだに違いない
あいつら、歩きながら糞してるんじゃないか?。
はじめは踏まないように注意していたが、一度踏んづけてしまうともうどうでもよくなった。
ドンと来い熊糞!。
ここは熊の下水道だ。


狩場山の前衛峰を捉える。
狩場山の前衛峰を捉える



標高850mあたりから、シラカバがあらわれ始め、だんだんとブナは見られなくなる。
遠望もきくようになり、狩場山の前衛峰も捉えることができるようになったが、残雪も増えはじめた。
再び道が消える。


そして崩壊地。
そして崩壊地

一歩踏み出すたびに足元が崩れていく。
ネマガリをしっかり抱いて、お祈りする。
この石なら動かないだろうと体重を預けたら、石の周りの地面ごとすべり落ちていく。
そしてこれまた、崩壊地は1箇所だけでは終わらないのだ。


標高1100mを越えると、もう雪の上を歩くほうが多くなる。
腐った雪なら歩けるが、半分は氷化し、半分は硬く締まった雪だ。


カッチリ硬い雪の斜面。足蹴り一発、ぜんぜん利かない。
カッチリ硬い雪の斜面。足蹴り一発、ぜんぜん利かない。

ストックを雪面に刺し、やわらかい所を探りつつ、足場を作りながら進んでいく。


難所はさらに続く。
かすかにそれと分かる踏み跡をたどって笹薮を抜けると、目の前にドーンと、引き返す理由としては十分な雪壁があらわれる。
上の方は雪庇の名残だろう。
10mくらいの高さがあるから向こうは見えない。
これを登ったら快適な稜線のトレイルになるかもしれないと、根拠のないポジティブな意見が舞い降りる。
あぁ、人はこうやって深みに嵌っていくのだ。


幸いというか、下は濃密なネマガリの藪だ。
滑ってもそこで止まる。
一度でも滑落したらやめると決めて登り始めたら、滑らなかった。


しかし、登ってはみたけれど、快適なトレイルなんてあるわけがない。


もう帰ろう。
もう帰ろう




今の壁に比べたら斜度はぜんぜん小さいけれど、あそこで滑ったら千早川の源流まで落っこちるしかない。
とにかく雪がガチガチに硬いのだ。
ダガーポジションでカニ歩きとか、頭では考えても、手元にストックしかないのだからどうしようもない。
ヤブを漕ぐのももうたくさんだ。
帰ろう。
十分歩いたし、また同じだけ歩かなきゃいけない。


さっきの壁を降りるとき、見事に滑り落ちる。
ちゃんとネマガリ藪に突っ込んで止まったけど、肘を強打してアイタタタ。


とりあえず、危険地帯を抜けて、ほっとひと息。
とりあえず、危険地帯を抜けて、ほっとひと息。



帰り道のことは、ビデオテープを逆再生するのと同じだ。
雪渓は行きの踏み跡のおかげで迷わなくてすんだけど、ぐずぐずの崩壊地でまた肝を冷やし、熊糞はなんだかちょっと増えてるな。


熊の気配をビンビン感じつつ、ちょいとご飯を頂いてくよ。
熊の気配をビンビン感じつつ、ちょいとご飯を頂いてくよ。



最後のヤブは、もうどこを通ったかなんて覚えてない。
帰ってからGPSトラックを見たら、往路と違う場所を突破してきたらしい。
ぜんぜん気付かなかったよ。


吊り橋が見えたときは、心底ほっとして、腰が砕けそうになった。
吊り橋が見えたときは、心底ほっとして、腰が砕けそうになった。



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登る前から予想はしていましたが、狩場山の真駒内コースは、いまやぜんぜん一般コースではありませんでした。
たぶん、何の心づもりもしないで入山したら、歩き出して5分の、道が突然消える場所で引き返していたと思います。
ポイントとなるのは、この最初のルートファインディングや崩壊地の通過、上部の雪、ヤブ、それに熊でしょう。


上部の雪渓については、アイゼン・ピッケルがあれば突破は可能ですが、時期を少しずらすだけでだいぶ違う結果になったと思います。
おそらく、あと1週間遅ければ(つまり明日明後日なら)、雪渓は縮小し、雪壁は低くなり、埋もれている夏道もだいぶ顔を出しているでしょう。
さらにもう1週間遅くなると、そのころには残雪について気に留める必要もないかもしれません。


逆に2週間ほど早い時期に登れば、1000mより上は雪が繋がっているはずです。
その時期ならアイゼンとピッケルは持つことになるし、そうなればコース取りは自由になります。
わざわざ千早川源頭の斜面をトラバースしなくても、尾根通しで雪陵を進むことができれば、その方がよっぽど安全です。


ただ前半の道が消えてしまっている区間や、中間部に連続する崩壊地、いたるところのヤブについては、再整備されるか、山開きのあと入山者が増えてトレースが出来上がるまでは、難所のままでしょう。
地図読み、ルートファインディング、薮漕ぎ、そういうのが好きな人でないとキツイと思います。


熊については・・・。
さすがに今回は鈴を持っていきました。
磐梯山の山頂小屋で買った土産用の鈴なので、効果があったのかどうかは分かりません。
熊ビーコンとかあったらいいのに、とずっと考えながら歩いてました。


参考までに、これは下流の矢淵橋からみた狩場山の前衛峰です。
下流の矢淵橋からみた狩場山の前衛峰




歩いた場所の雪は、ほとんど隠れて見えてませんが、この写真のような雪型が見えている時期は、上部の雪は今回の記事のような感じになっているという目安にはなると思います。
麓から見るよりも、上の方はずっと雪は多いです。
こういうコースがお好きな方は、お早めにお出かけくださいまし。


もしもう一度やるとしたら、ぼくはもう少し雪が多いときに行きたいと思います。
でも今はお腹いっぱいなので、しばらくは遠慮しときます。
ホント、疲れたんですよ。


登山日:2011年6月26日

狩場山 真駒内コース(途中撤退) GPSトラック
狩場山 真駒内コース(途中撤退) GPSトラック




狩場山 真駒内コース(途中撤退) 断面図
狩場山 真駒内コース(途中撤退) 断面図



投稿者 hamayo : 00:45 | コメント (2) | トラックバック

2011年6月12日

徳舜瞥山とホロホロ山



夏は、この日から始まった。

夏は、この日から始まった。



北国の季節の移り変わりは、ある日突然にやってくる。
だんだん暖かくなってきたね、だとか、いつのまにかもう秋ね、などというユルい変化はない。
カレンダーをびりびりと破いて、ハイ今日から夏です!、あるいは、ハイ春は終わりました!。
杭打ち機がヨサコイ踊ってるみたいな前夜の激しい雷は、まさに夏のスタートを告げる号砲だったのだ。



続きを読む・・・





じつはこの休日、はじめから徳舜瞥山に登ろうと考えていたわけではない。
大雪高原温泉か銀泉台か、そのあたりの麓にテントを張って、シーズン最後のスキーをしようというのが当初の計画だったのだ。
でもゲートは開かない。


次は積丹岳だ。
こっちはこっちで、スキーをするにはもう雪は少ないけど歩いて登るには雪が多いと分かり、断念。
ちなみにかつてこのBlogで、「夏場に来ることは二度とないであろう!・・・Probably.」と書いたことは、すっかり忘れてしまっている。


徳舜瞥山の地図を開いたのは朝になってからの話しなのだ。
この山の地図が開かれたのは、本当にたまたまだったのだけれど、それは偶然じゃなかったんだと後で思うことになる。


徳舜瞥山とホロホロ山の地図




登山口に着いたのは14時前で、陽射しも強くちょうどいちばん暑い時間だったが、東大雪を思わせる濃い森のなかはとても美しく、気持ちよく歩きだすことが出来た。


水場のある6合目。
水が流れるところは涼しいなぁ、と考えていたら落っこちた。
水が流れるところは涼しいなぁ、と考えていたら落っこちた。

これは丸木橋じゃなく、ただの倒木だろう。
木の上を渡らずとも沢の中を歩けばよかったのだ。


そして7合目の手前、森の木がすこしずつ低くなり、空が広く見えるようになりだした坂で、ぼくは出会ってしまった。
ヒグマじゃない。
ひょっこりさんに。


ここに来る途中ツイッターのTLを見ていて、もしかして同じ山に来てるかもしれないとは思っていたが、仮にそうだとしても分からないだろうと考えていた。
そうしたら、ひょっこりさんの方が気づいてくれたのだ。
林道のゲートが開かなかったことも、雪の量が中途半端だったことも、すべてはこの山にぼくが来るために周到に準備された仕掛けだったのかもしれない。
ひょっこりさん、短い時間だったけど楽しいひとときがすごせて良かったです。


ありがとう。
ひょっこりさん、ありがとう



さて、ふたたび歩き始めて10分もすると7合目で、ここでようやく尾根に乗る。
尾根をまっすぐ下るほうはピンクテープで封鎖してあるが、そこは広く平らで草も生えておらず、テントを張るにはうってつけの場所だ。
もし上の方の天候がマズいときはここに張ることにしよう。


山頂を目前にして、雲がわいてきた。
山頂を目前にして、雲がわいてきた。



でも雨を降らせる雲じゃないし、風も弱い。
稜線にテントを張ろう。


フワフワ雲がただよって、気持ちよいテン場だな。
フワフワ雲がただよって、気持ちよいテン場だな。



ガスが晴れれば、なかなかに高度感のある場所で、ちょっと驚く。
ガスが晴れれば、なかなかに高度感のある場所で、ちょっと驚く。

こんなところで宴会したら大変だ、って誰かが言ってたっけ。


山頂のある一帯が雲に入ってるけど、上空は晴れているから薄日も射す。
これはもしかして、ブロッケンの妖怪に会えるかもしれない。
地形的にも条件は揃ってる。


メシの用意もせずにブロッケン待ち。
メシの用意もせずにブロッケン待ち。



それはほんの数十秒のできごとだった。
太陽が地平線に近づいていくと、急に光が強くなったんだ。
わき上がる雲をめがけて、すーっと長い影がのびる。
そいつはこっちを向いて、ぼくに手を振っていた。


ブロッケンの妖怪、あらわる。
ブロッケンの妖怪、あらわる。

久しぶりの再会に声をかけようとしたら、太陽が隠れるのと同時に雲の中へ帰っていった。
せっかくだから並んでセルフも撮りたかったのに、あっという間にいなくなってしまったよ。


すっかり日が落ちてから夕飯の準備。
すっかり日が落ちてから夕飯の準備。

でもだいじょうぶ。
この時期の北海道は、薄明が長いのだ。


日が沈むと雲は取れていき、月が出てたから、山頂に行って記念撮影をする。
日が沈むと雲は取れていき、月が出てたから、山頂に行って記念撮影をする。



夏山の夜。天空をひとりじめ。
夏山の夜。天空をひとりじめ。



光の海から、いるか座が飛び出した。夏の大三角形をくぐりたかったのかな。
光の海から、いるか座が飛び出した。夏の大三角形をくぐりたかったのかな。



気がついたら夜の10時をまわってる。
早く寝ないと、あっという間に朝がきちゃうよ。
オヤスミナサイ。




////////////////////////////////////////////




それにしても、朝が来るのが早すぎる。
目覚ましは3時半にかけたけど起きたのは2時半で、もうテントの中は暗くない。
フライを開けると北東の空が白んでる。
もぞもぞと、40分のストレッチをしてから外に出た。


恵庭岳と、支笏湖に反射してるのはモラップ山だと思う。
恵庭岳と、支笏湖に反射してるのはモラップ山だと思う。



朝ごはん。
山の上の朝ごはん



お腹いっぱいになったら、当然のように二度寝する。
なんたってまだ4時なんだよ。


しかし日が高くなるにつれテントの中はぐんぐん気温が上昇し、のどが渇いて目が覚めた。
こんなところで貴重な水を消費するわけにはいかないので、7時半にホロホロ山へ向けて出発。


徳舜瞥山を下る。
徳舜瞥山を下ってホロホロ山へ。

あれれおかしいなー。
もっとカッコイイ画になるはずだったのにこりゃどう見ても、アレだなぁ。


スピード感あふれるタチグリ直滑降になる予定だったんだよ。
スピード感あふれるタチグリ直滑降になる予定だったんだよ。



吊り尾根の鞍部から見上げるホロホロ山。
吊り尾根の鞍部から見上げるホロホロ山。

晴れた朝に稜線を歩くというのは、もうそれだけで無条件に気持ちがよくて、ハッピーな気分になってしまうんだ。
だって今この山にいるのはぼく一人だけ。
ボヘミアン・ラプソディーを全開で歌って、鳥たちが一斉に逃げ出しても、文句を言うやつはどこにもいない。


ホロホロ山の登りにかかると、徳舜瞥山の端正な姿が見えてくる。
ホロホロ山の登りにかかると、徳舜瞥山の端正な姿が見えてくる。



見た目ほど遠くはなく、徳舜瞥山から歩くこと30分、ホロホロ山に到着。
以外にも、こちらの方が山頂っぽい風景だった。



    ・ホロホロ山の頂上からの景色

      QuickTimeVR版(高画質) はこちらをクリック  QuicktimeVR版 (高画質)はこちらをクリック(1492KB)
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こりゃすごいや丸見えだ。
支笏湖のまわりには、恵庭岳、風不死岳、樽前山。
札幌岳に空沼岳、雪が残ってるのは無意根山と余市岳だな。
近くの方だと、白老岳、オロフレ山、それから伊達の紋別岳と稀府岳も。
それにしても、ここまで離れてもやはり羊蹄山の存在感は大きいなぁ。


こうして見ると、近くに山が少ないおかげで、遠くの山まで見わたせるというのがよくわかる。
たしかに平地からでも、この二つの山は、けっこう遠くからでも見えるのだ。


さてそろそろ徳舜瞥山に帰ろう。
早起きのハイカーが登ってくる前にテントをたたまないといけない。


昨日すれ違った人が言ってたのだが、この吊り尾根はもう少しすれば花畑になるそうだ。
今はまだ雪も残り、ようやく早春の風情。

ヒメイチゲ
ヒメイチゲ



下山中、大勢のハイカーとすれ違った。
ぜんぶで20人ぐらいになるだろうか。
休日の山なら、それぐらいいても不思議じゃないが、今日は平日だ。
人気の山なのだ、ここは。


軽快に下っていると、前方から背の高い積雲が徒党を組んで押しよせてくる。
雲の下で雨が降っているのが、遠くからでもよく分かる。


森に入ったところでザバーっと降られる。
森に入ったところでザバーっと降られる。




森の芳香がぐっと強くなって、足もとの草も、木々のこずえも、空を覆う葉も、こころなしか喜んでるように見える。
ぼくもだんだん、楽しくなってきた。


だからって、雨の山歩きもいいもんだなんてことは、言わない。
ちゃんと聞こえてるんだよ。
山とか森とか、それからブロッケンの妖怪にも、聞こえてる。
だから静かに、雨は嫌だなぁと言いながら、山を下りていった。





じつはこの休日、はじめから徳舜瞥山に登ろうと考えていたわけではない。
大雪高原温泉か銀泉台か、そのあたりの麓にテントを張って、シーズン最後のスキーをしようというのが当初の計画だったのだ。
でもゲートは開かない。


次は積丹岳だ。
こっちはこっちで、スキーをするにはもう雪は少ないけど歩いて登るには雪が多いと分かり、断念。
ちなみにかつてこのBlogで、「夏場に来ることは二度とないであろう!・・・Probably.」と書いたことは、すっかり忘れてしまっている。


徳舜瞥山の地図を開いたのは朝になってからの話しなのだ。
この山の地図が開かれたのは、本当にたまたまだったのだけれど、それは偶然じゃなかったんだと後で思うことになる。


徳舜瞥山とホロホロ山の地図




登山口に着いたのは14時前で、陽射しも強くちょうどいちばん暑い時間だったが、東大雪を思わせる濃い森のなかはとても美しく、気持ちよく歩きだすことが出来た。


水場のある6合目。
水が流れるところは涼しいなぁ、と考えていたら落っこちた。
水が流れるところは涼しいなぁ、と考えていたら落っこちた。

これは丸木橋じゃなく、ただの倒木だろう。
木の上を渡らずとも沢の中を歩けばよかったのだ。


そして7合目の手前、森の木がすこしずつ低くなり、空が広く見えるようになりだした坂で、ぼくは出会ってしまった。
ヒグマじゃない。
ひょっこりさんに。


ここに来る途中ツイッターのTLを見ていて、もしかして同じ山に来てるかもしれないとは思っていたが、仮にそうだとしても分からないだろうと考えていた。
そうしたら、ひょっこりさんの方が気づいてくれたのだ。
林道のゲートが開かなかったことも、雪の量が中途半端だったことも、すべてはこの山にぼくが来るために周到に準備された仕掛けだったのかもしれない。
ひょっこりさん、短い時間だったけど楽しいひとときがすごせて良かったです。


ありがとう。
ひょっこりさん、ありがとう



さて、ふたたび歩き始めて10分もすると7合目で、ここでようやく尾根に乗る。
尾根をまっすぐ下るほうはピンクテープで封鎖してあるが、そこは広く平らで草も生えておらず、テントを張るにはうってつけの場所だ。
もし上の方の天候がマズいときはここに張ることにしよう。


山頂を目前にして、雲がわいてきた。
山頂を目前にして、雲がわいてきた。



でも雨を降らせる雲じゃないし、風も弱い。
稜線にテントを張ろう。


フワフワ雲がただよって、気持ちよいテン場だな。
フワフワ雲がただよって、気持ちよいテン場だな。



ガスが晴れれば、なかなかに高度感のある場所で、ちょっと驚く。
ガスが晴れれば、なかなかに高度感のある場所で、ちょっと驚く。

こんなところで宴会したら大変だ、って誰かが言ってたっけ。


山頂のある一帯が雲に入ってるけど、上空は晴れているから薄日も射す。
これはもしかして、ブロッケンの妖怪に会えるかもしれない。
地形的にも条件は揃ってる。


メシの用意もせずにブロッケン待ち。
メシの用意もせずにブロッケン待ち。



それはほんの数十秒のできごとだった。
太陽が地平線に近づいていくと、急に光が強くなったんだ。
わき上がる雲をめがけて、すーっと長い影がのびる。
そいつはこっちを向いて、ぼくに手を振っていた。


ブロッケンの妖怪、あらわる。
ブロッケンの妖怪、あらわる。

久しぶりの再会に声をかけようとしたら、太陽が隠れるのと同時に雲の中へ帰っていった。
せっかくだから並んでセルフも撮りたかったのに、あっという間にいなくなってしまったよ。


すっかり日が落ちてから夕飯の準備。
すっかり日が落ちてから夕飯の準備。

でもだいじょうぶ。
この時期の北海道は、薄明が長いのだ。


日が沈むと雲は取れていき、月が出てたから、山頂に行って記念撮影をする。
日が沈むと雲は取れていき、月が出てたから、山頂に行って記念撮影をする。



夏山の夜。天空をひとりじめ。
夏山の夜。天空をひとりじめ。



光の海から、いるか座が飛び出した。夏の大三角形をくぐりたかったのかな。
光の海から、いるか座が飛び出した。夏の大三角形をくぐりたかったのかな。



気がついたら夜の10時をまわってる。
早く寝ないと、あっという間に朝がきちゃうよ。
オヤスミナサイ。




////////////////////////////////////////////




それにしても、朝が来るのが早すぎる。
目覚ましは3時半にかけたけど起きたのは2時半で、もうテントの中は暗くない。
フライを開けると北東の空が白んでる。
もぞもぞと、40分のストレッチをしてから外に出た。


恵庭岳と、支笏湖に反射してるのはモラップ山だと思う。
恵庭岳と、支笏湖に反射してるのはモラップ山だと思う。



朝ごはん。
山の上の朝ごはん



お腹いっぱいになったら、当然のように二度寝する。
なんたってまだ4時なんだよ。


しかし日が高くなるにつれテントの中はぐんぐん気温が上昇し、のどが渇いて目が覚めた。
こんなところで貴重な水を消費するわけにはいかないので、7時半にホロホロ山へ向けて出発。


徳舜瞥山を下る。
徳舜瞥山を下ってホロホロ山へ。

あれれおかしいなー。
もっとカッコイイ画になるはずだったのにこりゃどう見ても、アレだなぁ。


スピード感あふれるタチグリ直滑降になる予定だったんだよ。
スピード感あふれるタチグリ直滑降になる予定だったんだよ。



吊り尾根の鞍部から見上げるホロホロ山。
吊り尾根の鞍部から見上げるホロホロ山。

晴れた朝に稜線を歩くというのは、もうそれだけで無条件に気持ちがよくて、ハッピーな気分になってしまうんだ。
だって今この山にいるのはぼく一人だけ。
ボヘミアン・ラプソディーを全開で歌って、鳥たちが一斉に逃げ出しても、文句を言うやつはどこにもいない。


ホロホロ山の登りにかかると、徳舜瞥山の端正な姿が見えてくる。
ホロホロ山の登りにかかると、徳舜瞥山の端正な姿が見えてくる。



見た目ほど遠くはなく、徳舜瞥山から歩くこと30分、ホロホロ山に到着。
以外にも、こちらの方が山頂っぽい風景だった。



    ・ホロホロ山の頂上からの景色

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こりゃすごいや丸見えだ。
支笏湖のまわりには、恵庭岳、風不死岳、樽前山。
札幌岳に空沼岳、雪が残ってるのは無意根山と余市岳だな。
近くの方だと、白老岳、オロフレ山、それから伊達の紋別岳と稀府岳も。
それにしても、ここまで離れてもやはり羊蹄山の存在感は大きいなぁ。


こうして見ると、近くに山が少ないおかげで、遠くの山まで見わたせるというのがよくわかる。
たしかに平地からでも、この二つの山は、けっこう遠くからでも見えるのだ。


さてそろそろ徳舜瞥山に帰ろう。
早起きのハイカーが登ってくる前にテントをたたまないといけない。


昨日すれ違った人が言ってたのだが、この吊り尾根はもう少しすれば花畑になるそうだ。
今はまだ雪も残り、ようやく早春の風情。

ヒメイチゲ
ヒメイチゲ



下山中、大勢のハイカーとすれ違った。
ぜんぶで20人ぐらいになるだろうか。
休日の山なら、それぐらいいても不思議じゃないが、今日は平日だ。
人気の山なのだ、ここは。


軽快に下っていると、前方から背の高い積雲が徒党を組んで押しよせてくる。
雲の下で雨が降っているのが、遠くからでもよく分かる。


森に入ったところでザバーっと降られる。
森に入ったところでザバーっと降られる。




森の芳香がぐっと強くなって、足もとの草も、木々のこずえも、空を覆う葉も、こころなしか喜んでるように見える。
ぼくもだんだん、楽しくなってきた。


だからって、雨の山歩きもいいもんだなんてことは、言わない。
ちゃんと聞こえてるんだよ。
山とか森とか、それからブロッケンの妖怪にも、聞こえてる。
だから静かに、雨は嫌だなぁと言いながら、山を下りていった。

投稿者 hamayo : 23:30 | コメント (6) | トラックバック

2011年6月 6日

安達太良山の風と空



夜が明けたばかりの小屋の中は、耳が痛くなるくらい静まりかえっていました。
小屋番もまだ起きていないし、3人組の寝息さえ聞こえてきません。


上半身を起こし、外を見ようとした瞬間、窓ガラスががたんと揺れました。
電車の中で扉のそばに立っていて、反対行きの電車とすれ違ったときみたいに、窓枠ごとガタガタと揺れました。
突風です。


事前に調べはついていましたが、今日の稜線は風との戦いになることは間違いなさそうです。
上空1500m付近の風速は、矢羽根にペナントが立つかどうか、つまり50ノット近い風が予想されましたし、それは遅い時間になるほど強くなりそうでした。


さいわい出発の準備はゆうべの内にすませてあります。
布団をきれいにたたみ、静かにストレッチを始め、朝食の合図とともに動けるように




布団をきれいにたたみ、静かにストレッチを始め、朝食の合図とともに動けるように備えます。




続きを読む・・・





朝食は一汁三菜。
牛すじの煮込みなんてイカしたおかずも出て、昨日に続いてハラ12分目です。
美味いんだからしょうがない。


くろがねを小さく鳴らして、山小屋とお別れ。
くろがねを小さく鳴らして、山小屋とお別れ。



尾根に上がればもう見えなくなる。
尾根に上がればもう小屋は見えなくなる。



だんだんと、山っぽい風景に。
だんだんと、山っぽい風景に。

この辺りではまだ、ときおりドンと空気の塊が落ちてくるぐらいで、強い風は吹いていません。
むしろ高めの気温に汗をかいて、風を求めたいぐらいでした。


体を冷ましてくれたのは雪渓。
体を冷ましてくれたのは雪渓。



下界は今日も真夏の暑さになるとか。
下界は今日も真夏の暑さになるとか。



そして運命の、峰の辻。
そして運命の、峰の辻。




このまま直進、いちど谷へ降りて、そこからただまっすぐ登っていけば安達太良山の山頂です。
でも鉄山にも登るつもりだったぼくは、遠回りにはなるけれどここを右に折れて牛の背を目指しました。
まさか歩けないほどの風が吹いてるなんて、ここからは分からなかったのです。




稜線が近づくにつれて、ものすごい土埃が舞い上がるようになってきました。
雪渓は雪なのか土なのか区別できない色をしています。
雪渓は雪なのか土なのか区別できない色をしています。



牛の背の標識が見えたときにはもう目を開けてられないありさまで、倒れるようにして岩陰に逃げ込みました。
鉄山まで行って戻ってくるのは、ちょっと難しいな。
安達太良山だって、そうとう慎重にいかないと、文字どおり足元をすくわれかねません。
今朝は風との戦いなんて言ったけど、どう見たって勝ち目はないので、すみません通して下さいお願いしますという感じで頭を下げながら、風の中を進みます。


稜線上の小ピークを東から巻くところ。
稜線上の小ピークを東から巻くところ。



唯一ここだけが、風を避けられる場所でした。
それでも三脚は立てられず、岩の上に寝かせているだけです。
合羽を着ているのは、雨でもなければ寒いわけでもなく、弾丸のように飛んでくる砂礫をかわすためです。


ストックを短くし、いつでも四つん這いになれるようにして、じりじりと歩きます。
いや、歩くという感じではないか。
数メートル先の、体をあずけられそうな小岩に照準を合わし、せーので飛び出して、走る。
進んでも進んでなくても、遮二無二足を回してないと持ってかれそうになるので、途中で止まるわけにはいかないのです。


そういったことを何度も繰り返してたどり着いた頂上基部は、ほぼ無風でした。
安達太良山の頂上基部は、ほぼ無風でした




それは山頂の岩塊が風をさえぎっているためであって、決して風が止んだわけではなく、ゴオゴオと鳴り響く音がかえって不気味に聞こえます。
ではほんとの頂上に登ってみますか。




    ・安達太良山の頂上からの景色

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立ってられない強い風は、座っていても尻の下がふわっと持ち上がりそうないやな感覚があって、バイクに乗るときのニーグリップみたいな感じで岩を両腿で挟みながら、じっと風に打たれていました。


風に打たれながら、思いをめぐらせます。
見上げるとそこにある、空のこと。
空に浮かんでいる、目に見えないほど小さなかけらが持つ、暴力のこと
智恵子が見ていた空と、今の空は、まったく同じ空ではないんだろうな、たぶん。


答えは見つかりません。
ぼくの中にも、吹く風の中にも。
考えても答えが見つからないことなら、風が吹き飛ばしてくれればいいのに。


ぱらりと落ちてきた雨から逃げるようにして、山を下っていきました。


薬師岳まで下りてきて振りかえる。
薬師岳まで下りてきて安達太良山を振りかえる



すっかり雲に包まれて見えなくなってしまったけど、目を閉じると、あの風の強さだけははっきりと思い出すことが出来ます。
ここから先は、スキー場に沿って下りるだけ。
下るにつれて気温も急上昇し、登山口に着くころには、昨日と同じ真夏の暑さになっていました。


岳温泉で、汗を流しましょう。
くろがね小屋の源泉を流れ出たお湯が待っています。


おしまい。





朝食は一汁三菜。
牛すじの煮込みなんてイカしたおかずも出て、昨日に続いてハラ12分目です。
美味いんだからしょうがない。


くろがねを小さく鳴らして、山小屋とお別れ。
くろがねを小さく鳴らして、山小屋とお別れ。



尾根に上がればもう見えなくなる。
尾根に上がればもう小屋は見えなくなる。



だんだんと、山っぽい風景に。
だんだんと、山っぽい風景に。

この辺りではまだ、ときおりドンと空気の塊が落ちてくるぐらいで、強い風は吹いていません。
むしろ高めの気温に汗をかいて、風を求めたいぐらいでした。


体を冷ましてくれたのは雪渓。
体を冷ましてくれたのは雪渓。



下界は今日も真夏の暑さになるとか。
下界は今日も真夏の暑さになるとか。



そして運命の、峰の辻。
そして運命の、峰の辻。




このまま直進、いちど谷へ降りて、そこからただまっすぐ登っていけば安達太良山の山頂です。
でも鉄山にも登るつもりだったぼくは、遠回りにはなるけれどここを右に折れて牛の背を目指しました。
まさか歩けないほどの風が吹いてるなんて、ここからは分からなかったのです。




稜線が近づくにつれて、ものすごい土埃が舞い上がるようになってきました。
雪渓は雪なのか土なのか区別できない色をしています。
雪渓は雪なのか土なのか区別できない色をしています。



牛の背の標識が見えたときにはもう目を開けてられないありさまで、倒れるようにして岩陰に逃げ込みました。
鉄山まで行って戻ってくるのは、ちょっと難しいな。
安達太良山だって、そうとう慎重にいかないと、文字どおり足元をすくわれかねません。
今朝は風との戦いなんて言ったけど、どう見たって勝ち目はないので、すみません通して下さいお願いしますという感じで頭を下げながら、風の中を進みます。


稜線上の小ピークを東から巻くところ。
稜線上の小ピークを東から巻くところ。



唯一ここだけが、風を避けられる場所でした。
それでも三脚は立てられず、岩の上に寝かせているだけです。
合羽を着ているのは、雨でもなければ寒いわけでもなく、弾丸のように飛んでくる砂礫をかわすためです。


ストックを短くし、いつでも四つん這いになれるようにして、じりじりと歩きます。
いや、歩くという感じではないか。
数メートル先の、体をあずけられそうな小岩に照準を合わし、せーので飛び出して、走る。
進んでも進んでなくても、遮二無二足を回してないと持ってかれそうになるので、途中で止まるわけにはいかないのです。


そういったことを何度も繰り返してたどり着いた頂上基部は、ほぼ無風でした。
安達太良山の頂上基部は、ほぼ無風でした




それは山頂の岩塊が風をさえぎっているためであって、決して風が止んだわけではなく、ゴオゴオと鳴り響く音がかえって不気味に聞こえます。
ではほんとの頂上に登ってみますか。




    ・安達太良山の頂上からの景色

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立ってられない強い風は、座っていても尻の下がふわっと持ち上がりそうないやな感覚があって、バイクに乗るときのニーグリップみたいな感じで岩を両腿で挟みながら、じっと風に打たれていました。


風に打たれながら、思いをめぐらせます。
見上げるとそこにある、空のこと。
空に浮かんでいる、目に見えないほど小さなかけらが持つ、暴力のこと
智恵子が見ていた空と、今の空は、まったく同じ空ではないんだろうな、たぶん。


答えは見つかりません。
ぼくの中にも、吹く風の中にも。
考えても答えが見つからないことなら、風が吹き飛ばしてくれればいいのに。


ぱらりと落ちてきた雨から逃げるようにして、山を下っていきました。


薬師岳まで下りてきて振りかえる。
薬師岳まで下りてきて安達太良山を振りかえる



すっかり雲に包まれて見えなくなってしまったけど、目を閉じると、あの風の強さだけははっきりと思い出すことが出来ます。
ここから先は、スキー場に沿って下りるだけ。
下るにつれて気温も急上昇し、登山口に着くころには、昨日と同じ真夏の暑さになっていました。


岳温泉で、汗を流しましょう。
くろがね小屋の源泉を流れ出たお湯が待っています。


おしまい。

投稿者 hamayo : 21:23 | コメント (2) | トラックバック

2011年6月 3日

くろがね小屋という贅沢



本州の山にあって北海道の山にはないもの。
いちばん大きいのは、「営業小屋」にちがいありません。


くろがね小屋 2階



続きを読む・・・





食事が出るし、布団もある、そしてなにより、場所によっては温泉にも入れます。
いろんな土地から来たいろんな人のいろんな山の話が聞けるのもまた楽しい。
旅館じゃないから身の回りのほとんどは自分でこなさなきゃならないけど、どこに泊まっても名ばかりサービスの押し売りしかされない町場の宿とは違う、そこにしかない時間をすごせる山小屋泊には、テント泊にはない魅力があります。
といっても今まで営業小屋に泊まったことはほとんどないのですが。


やっぱりザックは、パックとかバックパックとかじゃなくて、ザックなのです。
やっぱりザックは、パックとかバックパックとかじゃなくて、ザックなのです。



もちろんテント泊には、どんな場所でも自分の家にできる自由さがあるし、荷物は重たくても誰にも気兼ねしないでいい気軽さがありますし、それに地面の上に眠るときの山との一体感は何度経験しても神秘的だと思うし、まぁ何が言いたいかというと、テントであれ小屋であれ、山で寝るのは気持ちがいいに決まってるじゃないか、ってことですよ。




まずは温泉。ふひぃぃぃ、いい湯だなァ。(由美かおるさんへのオマージュ)
由美かおるさんへのオマージュ



少し青みがかった濁り湯。
少し青みがかった濁り湯。



おそるおそる湯を口に含んでみると、案の定モーレツに酸っぱいのです。


さて山の夜は早い。
じきに夕飯の時間です。
今回ぼくは、夕飯を頼まなかったのです。
11時に福島空港に着いてそれから行動開始となれば、何時に小屋に入れるのか予想が難しく、遅く着いて小屋に迷惑は掛けられないと思い、夕飯は自炊することにしたのです。


すでに出来あがりつつある、千葉県からの3馬k、いや3人組。
すでに出来あがりつつある、千葉県からの3人組。

朝4時出発で千葉からお越しだとのこと。
ぼくなんて北海道からお越しなのに6時起きでしたけどね、うひひ。


とろけないチーズを砕いて鍋に入れてると、小屋番がやってきて、手にはとろけるチーズが握られているのです。
「やっぱとろけるヤツでねーとよぉ」
言うが早いか、鍋にはとろけるヤツが投入されているのです。


すると小屋番、ふたたび厨房に行ってごそごそしてたかと思うと、また手に袋を持ってやってきます。
「ラザニア的な、いんやグラタン的なのもいいんじゃないでしょうか」
言うが早いか、鍋にはマカロニが投入されているのです。


もう止まらない小屋番。
今度はバーナーを持ってきて、「焼き目を付けたらウメいんでねーの?」と仰るのです。
言うが早いか、シュゴーーーと炎が上がり、


あのー、それ、ぼくの晩ご飯なんですけど・・・。
ぼくの夕飯をアレンジする小屋番



確かにウマそうだし、実際ウマいんだ。
ドリアとグラタンとラザニアみたいな何か



実はこの下には300gのご飯が入っているわけで、もうこれはドリアとグラタンのいいとこ取りなのでありますが、完全に2人前の分量になってしまってます。
しかも、これはナイショにしといてくれと言われたのですが、くろがね小屋名物のカレーライスを、夕飯を頼んでないにもかかわらず分けて下さって、またこれが甘いのにスパイシーでしかもコクがあるという八方美人カレーなのであります。


せっかくですがぼくもうこんなに食えませんよ腹ぱんぱちこですと身振り手振りでサインを出したものの、「カレーは別腹」という6文字で屈服させられてペロリと胃袋へ。
ワインもきいてきて回る回る。


吐いてるわけではありません。
吐いてるわけではない



階下からは、調子っぱずれの松山千春。
二階の窓際にあるギターが彼らに見つかりませんように。
まだ外は明るいけど、おやすみなさい。
グゥ。





食事が出るし、布団もある、そしてなにより、場所によっては温泉にも入れます。
いろんな土地から来たいろんな人のいろんな山の話が聞けるのもまた楽しい。
旅館じゃないから身の回りのほとんどは自分でこなさなきゃならないけど、どこに泊まっても名ばかりサービスの押し売りしかされない町場の宿とは違う、そこにしかない時間をすごせる山小屋泊には、テント泊にはない魅力があります。
といっても今まで営業小屋に泊まったことはほとんどないのですが。


やっぱりザックは、パックとかバックパックとかじゃなくて、ザックなのです。
やっぱりザックは、パックとかバックパックとかじゃなくて、ザックなのです。



もちろんテント泊には、どんな場所でも自分の家にできる自由さがあるし、荷物は重たくても誰にも気兼ねしないでいい気軽さがありますし、それに地面の上に眠るときの山との一体感は何度経験しても神秘的だと思うし、まぁ何が言いたいかというと、テントであれ小屋であれ、山で寝るのは気持ちがいいに決まってるじゃないか、ってことですよ。




まずは温泉。ふひぃぃぃ、いい湯だなァ。(由美かおるさんへのオマージュ)
由美かおるさんへのオマージュ



少し青みがかった濁り湯。
少し青みがかった濁り湯。



おそるおそる湯を口に含んでみると、案の定モーレツに酸っぱいのです。


さて山の夜は早い。
じきに夕飯の時間です。
今回ぼくは、夕飯を頼まなかったのです。
11時に福島空港に着いてそれから行動開始となれば、何時に小屋に入れるのか予想が難しく、遅く着いて小屋に迷惑は掛けられないと思い、夕飯は自炊することにしたのです。


すでに出来あがりつつある、千葉県からの3馬k、いや3人組。
すでに出来あがりつつある、千葉県からの3人組。

朝4時出発で千葉からお越しだとのこと。
ぼくなんて北海道からお越しなのに6時起きでしたけどね、うひひ。


とろけないチーズを砕いて鍋に入れてると、小屋番がやってきて、手にはとろけるチーズが握られているのです。
「やっぱとろけるヤツでねーとよぉ」
言うが早いか、鍋にはとろけるヤツが投入されているのです。


すると小屋番、ふたたび厨房に行ってごそごそしてたかと思うと、また手に袋を持ってやってきます。
「ラザニア的な、いんやグラタン的なのもいいんじゃないでしょうか」
言うが早いか、鍋にはマカロニが投入されているのです。


もう止まらない小屋番。
今度はバーナーを持ってきて、「焼き目を付けたらウメいんでねーの?」と仰るのです。
言うが早いか、シュゴーーーと炎が上がり、


あのー、それ、ぼくの晩ご飯なんですけど・・・。
ぼくの夕飯をアレンジする小屋番



確かにウマそうだし、実際ウマいんだ。
ドリアとグラタンとラザニアみたいな何か



実はこの下には300gのご飯が入っているわけで、もうこれはドリアとグラタンのいいとこ取りなのでありますが、完全に2人前の分量になってしまってます。
しかも、これはナイショにしといてくれと言われたのですが、くろがね小屋名物のカレーライスを、夕飯を頼んでないにもかかわらず分けて下さって、またこれが甘いのにスパイシーでしかもコクがあるという八方美人カレーなのであります。


せっかくですがぼくもうこんなに食えませんよ腹ぱんぱちこですと身振り手振りでサインを出したものの、「カレーは別腹」という6文字で屈服させられてペロリと胃袋へ。
ワインもきいてきて回る回る。


吐いてるわけではありません。
吐いてるわけではない



階下からは、調子っぱずれの松山千春。
二階の窓際にあるギターが彼らに見つかりませんように。
まだ外は明るいけど、おやすみなさい。
グゥ。

投稿者 hamayo : 20:31 | コメント (6) | トラックバック

2011年6月 2日

あこがれの山、安達太良山



ごんぎつね、やまなし、それから・・・スーホの白い馬、なんてのもあったなぁ。
小学校のときなんてろくすっぽ勉強しなかったから、こういう作品がどんな内容だったかなんてまるで覚えていません。
それなのに不思議なもので、大人になってから文章の一節を見たり聞いたりすると、一瞬にして'覚えていないはずの記憶'がよみがえり、あのころに引き戻されてしまうことがあります。


ぼくの勝手な思い込みだったら許してほしいのですが、安達太良山と聞いてあなたは何を思い浮かべますかと問えば、おそらく日本人のほとんどは、智恵子抄と答えるのではないでしょうか。


<引用>
  智恵子は東京に空が無いといふ、
  ほんとの空が見たいといふ。

    -中略-

  智恵子は遠くを見ながら言ふ。
  阿多多羅山の山の上に
  毎日出てゐる青い空が
  智恵子のほんとの空だといふ。

</引用>


ほんとの空と言いきれるほどの空を知っている智恵子の言葉を、ぼくはあどけない話などと思ったりはしません。
そして、そんな場所に故郷がある智恵子のことを、すこし羨ましく思うのです。


智恵子の言うほんとの空をいつか見てみたい。
夢と呼ぶにはいささか小さいけれど、長いあいだ憧れの山だった安達太良山に登ってきた、5月にしては暑い、そして風が強かった日の話しです。



続きを読む・・・





安達太良山に登るルートはいくつもあります。
登山口もたくさんあるし、同じ登山口からでも複数のルートが延びています。


qqqq




今回ぼくは奥岳の登山口から入って、くろがね小屋に泊まる計画をたてました。
じゅうぶん日帰りできるコースです。
でもぼくは、この山小屋に泊まりたかったのです。
くろがね小屋に泊まることもまた(といってもこれはここ数年のことだけど)、憧れだったのです。


勢至平までは、旧道と呼ばれる急で細い登山道と、馬車道といわれるなだらかに整備された道があり、それぞれが何度か交差しながら標高を上げていきます。


旧道。いわゆる普通の登山道です。
安達太良山の登山道、旧道



馬車道は、たしかに馬車でも通れそうです。
安達太良山の登山道、馬車道



じつはこの日、二本松や郡山では、最高気温が30度を超えていました。
歩いているだけで腕やザックの表面がちりちりに熱くなり、大気圏に突入した人工衛星みたいに燃え尽きてしまうんじゃないかと心配したほどです。
ですから、陽の当たる馬車道と樹林帯の中の旧道、選択の余地はありませんでした。


安達太良山が見え始めると登りもひと段落、もうじき勢至平です。
安達太良山が見えてきました



ショウジョウバカマの道
ショウジョウバカマの道



硫化水素の匂いがぷんぷんする谷あいの道。
硫化水素の匂いがぷんぷんする谷あいの道。



とつぜん視界が開けて、くろがね小屋。
とつぜん視界が開けて、くろがね小屋。



さて、まずはお風呂に入りましょうか。


そういえば登山道の脇に、つかず離れず延々と走る建造物がありました。
ふもとの岳温泉へと湯引きする湯桶です。

ふもとの岳温泉へと湯引きする湯桶




なんと7km以上もの長さがあるとのこと。
ph2.5という強い酸性、そして一部では100度近い水温があるために、いまだに木管が使われている箇所もあるそうです。
今日はこのお湯が運ばれてくる源、つまり源泉に入れるのです。
ざぶーん。





安達太良山に登るルートはいくつもあります。
登山口もたくさんあるし、同じ登山口からでも複数のルートが延びています。


qqqq




今回ぼくは奥岳の登山口から入って、くろがね小屋に泊まる計画をたてました。
じゅうぶん日帰りできるコースです。
でもぼくは、この山小屋に泊まりたかったのです。
くろがね小屋に泊まることもまた(といってもこれはここ数年のことだけど)、憧れだったのです。


勢至平までは、旧道と呼ばれる急で細い登山道と、馬車道といわれるなだらかに整備された道があり、それぞれが何度か交差しながら標高を上げていきます。


旧道。いわゆる普通の登山道です。
安達太良山の登山道、旧道



馬車道は、たしかに馬車でも通れそうです。
安達太良山の登山道、馬車道



じつはこの日、二本松や郡山では、最高気温が30度を超えていました。
歩いているだけで腕やザックの表面がちりちりに熱くなり、大気圏に突入した人工衛星みたいに燃え尽きてしまうんじゃないかと心配したほどです。
ですから、陽の当たる馬車道と樹林帯の中の旧道、選択の余地はありませんでした。


安達太良山が見え始めると登りもひと段落、もうじき勢至平です。
安達太良山が見えてきました



ショウジョウバカマの道
ショウジョウバカマの道



硫化水素の匂いがぷんぷんする谷あいの道。
硫化水素の匂いがぷんぷんする谷あいの道。



とつぜん視界が開けて、くろがね小屋。
とつぜん視界が開けて、くろがね小屋。



さて、まずはお風呂に入りましょうか。


そういえば登山道の脇に、つかず離れず延々と走る建造物がありました。
ふもとの岳温泉へと湯引きする湯桶です。

ふもとの岳温泉へと湯引きする湯桶




なんと7km以上もの長さがあるとのこと。
ph2.5という強い酸性、そして一部では100度近い水温があるために、いまだに木管が使われている箇所もあるそうです。
今日はこのお湯が運ばれてくる源、つまり源泉に入れるのです。
ざぶーん。

投稿者 hamayo : 00:11 | コメント (4) | トラックバック

2011年4月14日

裏山の鹿とツボ足



夜、急に思い立って、幸運のクローバーを描いてみた。
夜、急に思い立って、幸運のクローバーを描いてみた。



雪が消えたら、四つ葉のクローバーを探してみるよ。



続きを読む・・・





じつは今日はツボ足なんだ。
今日はツボ足なんだ。




うまく言えないけど、スキーとか、カンジキやアイゼンって、なんかフェアじゃない気がして。
たまたまそう思ったってだけの話しで、いつものぼくはスキーだけどね。
なんかこの日はそういう気分だったんだよ。


だからって言うんじゃないけど、地図もコンパスもGPSレシーバも持ってこなかった。
地図とかコンパスって安全装備なんだから絶対必要だろ、って言うかもしれない。
でも本当にそうかな?。


とにかくそういうわけで、今日のぼくの足元は、登山靴とゲーターだけなんだ。



ほら。鹿だってツボ足だよ。
ほら。鹿だってツボ足だよ。

鹿のように、森の中を自由に歩いたり、雪原を跳びはねたりできたらいいよね。
撃たれるのは御免だけど。



スコップはアンフェアじゃないのかって?。
スコップはアンフェアじゃないのかって?。

これぐらいは見逃してくださいな。



午後になって山に入ったから、あっという間に夕げの時間。
午後になって山に入ったから、あっという間に夕げの時間。



おぼろ月夜だ。
見わたす山の端、霞ふかし、ってやつ。
おぼろ月夜だ。



眠気をさそう沢音に、ぽつぽつと、テントを叩く雨の音がまじりだす。
しばらくすると音が変化した。
ぽつ、サー。ぽつ、サー。
きっとみぞれだ。テントに落ちたみぞれが、生地をすべっていく音だ。
いつのまにか、眠ってしまった。



やっと夜が明ける。
やっと夜が明ける。



寒かったなぁ。
3季シュラフでも体の上側はじゅうぶんだったけど、とにかく背中が冷えた。
真冬の雪より、春の湿り雪のほうが、冷たく感じるのかもしれない。


みぞれでテントはバリバリさ。
みぞれでテントはバリバリさ。



昨日とは打って変わって、雪面はツルツルのカリカリ。
これじゃとても歩けないから、雪が緩むまで二度寝して、10時に出発。
向こうに見えてるあの小さな山のてっぺんに行ってみよう。


いつのまにかえれぇ斜面に立ってるのって、ツボ足ならではです。
いつのまにかえれぇ斜面に立ってるのって、ツボ足ならではです。

スキーじゃこうなる前に気付くから。



谷と尾根がいびつにいり組んだこの裏山を、地図を持たずに歩くのってすごくワクワクするんですよ。
こないだUstreamで、斉藤和義さんが歌うのをリアルタイムで見たんだけど、あのライブ感に似てるなって思ったんだ。
次になにが起きるか分からない緊張感と、自分の感じたものだけから自分の行動を決めていく自由さが。


地図とコンパスがあれば、目的の場所にどう近づくのがいいのか策を練ったり予測したりできるけど、何も持っていないとそうはいかない。
目に映るものすべてと、少しばかりの経験、残りはカンに頼る。
見えてる斜面の向こう側がどんな風になってるかは、登ってみなくちゃ分からないってわけだ。


だから、そうやって山頂に立って自分の歩いてきた足取りを振り返り、それほど悪いものじゃなかったと分かったときは、ちょっと嬉しくなるんだよ。


さぁ、もうすぐ山頂。
さぁ、もうすぐ山頂。



鹿のことばっかり考えてたら・・・。
鹿のことばっかり考えてたら・・・。



あとは尾根を伝って帰ろう。
あとは尾根を伝って帰ろう。



もうじきうちの家も見えてくる。
小樽の町が一望なのだ。

この尾根はまだ歩いたことがなかったんだけど、なかなか見晴らしがいいね。
夜はすばらしいだろうな。
たぶん、まだ誰も見たことがない小樽の夜景だよ。



里まで下りて、ようやく見つけた春は、バッコヤナギ。
里まで下りて、ようやく見つけた春は、バッコヤナギ。



ふきのとうはまだ見つからない。
今年の冬は、久しぶりにたくさん積もったから。
雪の下から聞こえる水の音が、白を割って見えるようになるのは、もう少し先のようです。






じつは今日はツボ足なんだ。
今日はツボ足なんだ。




うまく言えないけど、スキーとか、カンジキやアイゼンって、なんかフェアじゃない気がして。
たまたまそう思ったってだけの話しで、いつものぼくはスキーだけどね。
なんかこの日はそういう気分だったんだよ。


だからって言うんじゃないけど、地図もコンパスもGPSレシーバも持ってこなかった。
地図とかコンパスって安全装備なんだから絶対必要だろ、って言うかもしれない。
でも本当にそうかな?。


とにかくそういうわけで、今日のぼくの足元は、登山靴とゲーターだけなんだ。



ほら。鹿だってツボ足だよ。
ほら。鹿だってツボ足だよ。

鹿のように、森の中を自由に歩いたり、雪原を跳びはねたりできたらいいよね。
撃たれるのは御免だけど。



スコップはアンフェアじゃないのかって?。
スコップはアンフェアじゃないのかって?。

これぐらいは見逃してくださいな。



午後になって山に入ったから、あっという間に夕げの時間。
午後になって山に入ったから、あっという間に夕げの時間。



おぼろ月夜だ。
見わたす山の端、霞ふかし、ってやつ。
おぼろ月夜だ。



眠気をさそう沢音に、ぽつぽつと、テントを叩く雨の音がまじりだす。
しばらくすると音が変化した。
ぽつ、サー。ぽつ、サー。
きっとみぞれだ。テントに落ちたみぞれが、生地をすべっていく音だ。
いつのまにか、眠ってしまった。



やっと夜が明ける。
やっと夜が明ける。



寒かったなぁ。
3季シュラフでも体の上側はじゅうぶんだったけど、とにかく背中が冷えた。
真冬の雪より、春の湿り雪のほうが、冷たく感じるのかもしれない。


みぞれでテントはバリバリさ。
みぞれでテントはバリバリさ。



昨日とは打って変わって、雪面はツルツルのカリカリ。
これじゃとても歩けないから、雪が緩むまで二度寝して、10時に出発。
向こうに見えてるあの小さな山のてっぺんに行ってみよう。


いつのまにかえれぇ斜面に立ってるのって、ツボ足ならではです。
いつのまにかえれぇ斜面に立ってるのって、ツボ足ならではです。

スキーじゃこうなる前に気付くから。



谷と尾根がいびつにいり組んだこの裏山を、地図を持たずに歩くのってすごくワクワクするんですよ。
こないだUstreamで、斉藤和義さんが歌うのをリアルタイムで見たんだけど、あのライブ感に似てるなって思ったんだ。
次になにが起きるか分からない緊張感と、自分の感じたものだけから自分の行動を決めていく自由さが。


地図とコンパスがあれば、目的の場所にどう近づくのがいいのか策を練ったり予測したりできるけど、何も持っていないとそうはいかない。
目に映るものすべてと、少しばかりの経験、残りはカンに頼る。
見えてる斜面の向こう側がどんな風になってるかは、登ってみなくちゃ分からないってわけだ。


だから、そうやって山頂に立って自分の歩いてきた足取りを振り返り、それほど悪いものじゃなかったと分かったときは、ちょっと嬉しくなるんだよ。


さぁ、もうすぐ山頂。
さぁ、もうすぐ山頂。



鹿のことばっかり考えてたら・・・。
鹿のことばっかり考えてたら・・・。



あとは尾根を伝って帰ろう。
あとは尾根を伝って帰ろう。



もうじきうちの家も見えてくる。
小樽の町が一望なのだ。

この尾根はまだ歩いたことがなかったんだけど、なかなか見晴らしがいいね。
夜はすばらしいだろうな。
たぶん、まだ誰も見たことがない小樽の夜景だよ。



里まで下りて、ようやく見つけた春は、バッコヤナギ。
里まで下りて、ようやく見つけた春は、バッコヤナギ。



ふきのとうはまだ見つからない。
今年の冬は、久しぶりにたくさん積もったから。
雪の下から聞こえる水の音が、白を割って見えるようになるのは、もう少し先のようです。


投稿者 hamayo : 07:37 | コメント (14) | トラックバック

2010年11月29日

小樽海岸自然探勝路、風のち風邪で夏山納め



もう今年は山歩きは終わりですよと銭天さんで誓ったはずなのに、また近くの山に行ってしまいました。
だけでなく、なんか体調がすぐれないなと思いながら歩いていたら、帰った途端バタンキュー。
風邪をひいて寝込んでしまいました。


赤岩、テーブルリッジからの眺め



なにもかも雪のせいです。
降るべき時に、降らないからです。


続きを読む・・・




岩登りの練習場として名をはせる赤岩には、ほかにも小樽自然探勝路として整備されたコースがあり、祝津-赤岩-オタモイと通して歩くことができます。
コースの途中には、白竜胎内巡りという超絶スリリングな分岐もありますが今回はパスし、小樽自然探勝路の西の端をさらに越えて、廃棄物処分場まで歩き通してみることにします。


登りはじめの場所には戻ってこないので、クルマは使えない。
通勤ラッシュの終わった小樽ターミナルで、水族館行きのバスを待つ。
通勤ラッシュの終わった小樽ターミナルで、水族館行きのバスを待つ。



観覧車はもう冬じまいですよ。
観覧車はもう冬じまいですよ



登山口の真下の海岸。
スキーでここを滑り降りてくる猛者がおられるそうな。
ホテル・ノイシュロス付近から海岸を見下ろす



海を見ながらぐいぐい。
海を見ながらぐいぐい

さすがに整備されたコースなので歩きやすいったらありませんが、右側は海抜0mまでいっきに落っこちる崖であります。


落ち葉の具合もパーフェクトです。
落ち葉の具合もパーフェクトです

なので、寝るのによい場所ばかり探しながら歩いていきます。
日帰りなのに。


30分も登れば最初の画像のテーブルリッジへ。
テーブルリッジから足元を見る

うひゃぁ。こぇ~。
お向かいの不動岩稜のてっぺんにはお地蔵さんがおられます。
実はこの岩稜の一部は白竜胎内巡りのコースになっておりまして・・・あぁ恐ろしい。
正直、確保がないぶんクライミングよりも危険だと思いますよ。


下赤岩山を下りきった鞍部におわしまする総天然色の・・・。
下赤岩山を下りきった鞍部にはおられまする総天然色の・・・

小樽はこーゆーの得意ですから。
小樽天狗山にもいましたし。


鞍部から赤岩山を登りはじめると、植林された針葉樹の斜面になります。
鞍部から赤岩山を登りはじめると、植林された針葉樹の斜面になります



鉄塔だらけの赤岩山を越えると、オタモイ、忍路、余市、積丹とつづく海岸線。
鉄塔だらけの赤岩山を越えると、オタモイ、忍路、余市、積丹とつづく海岸線




ここでひるめし。
今日の山パンは、円盤形にしてみました。
今日の山パンは、円盤形にしてみました

この形がベストっぽいですよ、山では。


このあたりから、体調ヘンだなとは感じ始めていたのです。
たしかにすんごい風は強いし冷たいんだけど、なんぼ歩こうが走ろうが体が温まらない。
それどころか、なんかぶるぶる震えてくるし。


テルモスのチャイを飲んでもそれは変わらず、こりゃゆっくりメシ食ってると冷え切ってしまうぞってことで、ここからは平らだし、ちょっと運動量上げていきますよ。


ぶらりんこでほっかほかしたり。
ぶらりんこでほっかほかしたり




しかしなんと、オタモイ唐門まで下ってきたところで、道は封鎖されていました。


エレーン、エレーン!。
オタモイ唐門から西は通せんぼ




小樽自然探勝路としてはここがゴールなのですが、このさき断崖の縁を通って209.5mの小ピークに登り、地蔵さんだらけの斜面を下ってオタモイ三丁目の住宅街にまで抜けるルートがあるのです。
冬場にスノーシュー履いてよく歩いたんだけど、いつの間にこんなことに。


なわけで強制終了。


オタモイフードのベンチでバスを待つ人になる。
オタモイフードのベンチでバスを待つ人になる



そして自宅に帰ってからは、とつぜんノドが痛み出し、ものを食うどころか発声さえもまともにできなくなる始末。
体温の方もうなぎ上りで測るたびに記録を更新、熊谷や多治見と張り合いたくはないので即ふとんへ。
夢とうつつの狭間をさまよう3日間となった次第です。


とんだ夏山納めとなってしまいました2010年。


登山日:11月下旬
祝津-赤岩山-オタモイ GPSトラック
祝津-赤岩山-オタモイ 断面図






岩登りの練習場として名をはせる赤岩には、ほかにも小樽自然探勝路として整備されたコースがあり、祝津-赤岩-オタモイと通して歩くことができます。
コースの途中には、白竜胎内巡りという超絶スリリングな分岐もありますが今回はパスし、小樽自然探勝路の西の端をさらに越えて、廃棄物処分場まで歩き通してみることにします。


登りはじめの場所には戻ってこないので、クルマは使えない。
通勤ラッシュの終わった小樽ターミナルで、水族館行きのバスを待つ。
通勤ラッシュの終わった小樽ターミナルで、水族館行きのバスを待つ。



観覧車はもう冬じまいですよ。
観覧車はもう冬じまいですよ



登山口の真下の海岸。
スキーでここを滑り降りてくる猛者がおられるそうな。
ホテル・ノイシュロス付近から海岸を見下ろす



海を見ながらぐいぐい。
海を見ながらぐいぐい

さすがに整備されたコースなので歩きやすいったらありませんが、右側は海抜0mまでいっきに落っこちる崖であります。


落ち葉の具合もパーフェクトです。
落ち葉の具合もパーフェクトです

なので、寝るのによい場所ばかり探しながら歩いていきます。
日帰りなのに。


30分も登れば最初の画像のテーブルリッジへ。
テーブルリッジから足元を見る

うひゃぁ。こぇ~。
お向かいの不動岩稜のてっぺんにはお地蔵さんがおられます。
実はこの岩稜の一部は白竜胎内巡りのコースになっておりまして・・・あぁ恐ろしい。
正直、確保がないぶんクライミングよりも危険だと思いますよ。


下赤岩山を下りきった鞍部におわしまする総天然色の・・・。
下赤岩山を下りきった鞍部にはおられまする総天然色の・・・

小樽はこーゆーの得意ですから。
小樽天狗山にもいましたし。


鞍部から赤岩山を登りはじめると、植林された針葉樹の斜面になります。
鞍部から赤岩山を登りはじめると、植林された針葉樹の斜面になります



鉄塔だらけの赤岩山を越えると、オタモイ、忍路、余市、積丹とつづく海岸線。
鉄塔だらけの赤岩山を越えると、オタモイ、忍路、余市、積丹とつづく海岸線




ここでひるめし。
今日の山パンは、円盤形にしてみました。
今日の山パンは、円盤形にしてみました

この形がベストっぽいですよ、山では。


このあたりから、体調ヘンだなとは感じ始めていたのです。
たしかにすんごい風は強いし冷たいんだけど、なんぼ歩こうが走ろうが体が温まらない。
それどころか、なんかぶるぶる震えてくるし。


テルモスのチャイを飲んでもそれは変わらず、こりゃゆっくりメシ食ってると冷え切ってしまうぞってことで、ここからは平らだし、ちょっと運動量上げていきますよ。


ぶらりんこでほっかほかしたり。
ぶらりんこでほっかほかしたり




しかしなんと、オタモイ唐門まで下ってきたところで、道は封鎖されていました。


エレーン、エレーン!。
オタモイ唐門から西は通せんぼ




小樽自然探勝路としてはここがゴールなのですが、このさき断崖の縁を通って209.5mの小ピークに登り、地蔵さんだらけの斜面を下ってオタモイ三丁目の住宅街にまで抜けるルートがあるのです。
冬場にスノーシュー履いてよく歩いたんだけど、いつの間にこんなことに。


なわけで強制終了。


オタモイフードのベンチでバスを待つ人になる。
オタモイフードのベンチでバスを待つ人になる



そして自宅に帰ってからは、とつぜんノドが痛み出し、ものを食うどころか発声さえもまともにできなくなる始末。
体温の方もうなぎ上りで測るたびに記録を更新、熊谷や多治見と張り合いたくはないので即ふとんへ。
夢とうつつの狭間をさまよう3日間となった次第です。


とんだ夏山納めとなってしまいました2010年。


登山日:11月下旬
祝津-赤岩山-オタモイ GPSトラック
祝津-赤岩山-オタモイ 断面図



投稿者 hamayo : 07:29 | コメント (10) | トラックバック

2010年11月11日

藪を漕いで銭函天狗山



銭函天狗山。
地元のひとはみな、銭天さんと親しみをこめて呼びます。
街から近く高さもなく、それでいて山頂からの抜群の眺望と短いながらもスリリングな岩稜を歩けるとあって、小樽市内では塩谷丸山(シオマル)とならぶ人気の山です。


そのモテモテの山に、ちょっくらヤブを漕いで登ってきました。
本来の登山道は流れの細い沢に沿って、というかその中に付けられているのですが、入山する人の多さもあってか酷いぬかるみになっていて、一昨年の春に来たときに、マント群落が頭上を覆う薄暗くじめじめとしたその場所から見上げた尾根の上の明るさにはっとして、いつかあそこを歩いてみたいなと思ったのが、そもそものはじまりなのです。


小さな山ですから、ヤブを漕ぐと言ってもたいした距離ではありません。
それでも一般コースなら20分で歩ける部分を、1時間以上は楽しめるのです。



ブレイクダンスなう
ブレイクダンスなう


なわきゃない。

続きを読む・・・




一般道の入り口付近はひろびろとして、落ち葉のクッションが気持ちいい。
一般道の入り口付近はひろびろとして、落ち葉のクッションが気持ちいい。



さてそろそろ取り付きますか。
さてそろそろ取り付きますか。



行儀の悪い笹に足を引っかけられ、反抗的な小枝に頬をひっぱたかれます。
小石の混じった土の斜面は、手元も足元もぽろぽろと崩れてきてなかなか先に進めません。
頃合いの木の棒っこをミゾーのハンマーだと信じて、ぐいっと地面に突き刺して体重を預け、力いっぱい自分の体を引っ張り上げる、ずっとそれの繰りかえしです。


ルートファインディングだとか戦略とかはなにもなくて、なんとなくここはヤブが薄そうだなとか、斜度がゆるそうだなとか、掴まる木々がたくさんあるなとか、そんなテキトーな感覚でがしがしと登っていくだけです。


下から見ると開放的に思えた尾根の上は、まぁだいたいいつもこんな感じです。
下から見ると開放的に思えた尾根の上は、まぁだいたいいつもこんな感じです。



それでも意外と笹は背が低く、ここからさきは尾根伝いに登っていけば一般道に合流です。


この山の場合一般道もけっこう辛口ですが、いままでに比べたらホイサッサです。
この山の場合一般道もけっこう辛口です



岩山を越えればスリル満点の頂上へ。
岩山を越えればスリル満点の頂上へ



お昼は(だいぶ日が傾いてるけど)おにぎりでございます。
お昼は(だいぶ日が傾いてるけど)おにぎりでございます



そしてごろりと寝転ぶ。
そしてごろりと寝転ぶ



体がすっぽりおさまる岩のくぼみ。
ここで寝袋ひとつのビバークをしたら、どんなに幸せなことだろうか。
石狩平野の夜景のまたたきと空の星々のまたたきとで、目が変になってしまうかもしれないな。


走りたくなる気持ちを抑えきれずに帰り道。
走りたくなる気持ちを抑えきれずに帰り道



銭天山荘の広場でしばし休んで、今年の山を振り返ったりして。
銭天山荘の広場でしばし休んで、今年の山を振り返ったりして。




高い山からつぎつぎに、あと戻りできない冬に取りこまれて、いよいよ里の山にも雪が降り始めました。
山を歩くのも、今年はもうしまいかな。
そろそろスキーの準備をしなければ。




一般道の入り口付近はひろびろとして、落ち葉のクッションが気持ちいい。
一般道の入り口付近はひろびろとして、落ち葉のクッションが気持ちいい。



さてそろそろ取り付きますか。
さてそろそろ取り付きますか。



行儀の悪い笹に足を引っかけられ、反抗的な小枝に頬をひっぱたかれます。
小石の混じった土の斜面は、手元も足元もぽろぽろと崩れてきてなかなか先に進めません。
頃合いの木の棒っこをミゾーのハンマーだと信じて、ぐいっと地面に突き刺して体重を預け、力いっぱい自分の体を引っ張り上げる、ずっとそれの繰りかえしです。


ルートファインディングだとか戦略とかはなにもなくて、なんとなくここはヤブが薄そうだなとか、斜度がゆるそうだなとか、掴まる木々がたくさんあるなとか、そんなテキトーな感覚でがしがしと登っていくだけです。


下から見ると開放的に思えた尾根の上は、まぁだいたいいつもこんな感じです。
下から見ると開放的に思えた尾根の上は、まぁだいたいいつもこんな感じです。



それでも意外と笹は背が低く、ここからさきは尾根伝いに登っていけば一般道に合流です。


この山の場合一般道もけっこう辛口ですが、いままでに比べたらホイサッサです。
この山の場合一般道もけっこう辛口です



岩山を越えればスリル満点の頂上へ。
岩山を越えればスリル満点の頂上へ



お昼は(だいぶ日が傾いてるけど)おにぎりでございます。
お昼は(だいぶ日が傾いてるけど)おにぎりでございます



そしてごろりと寝転ぶ。
そしてごろりと寝転ぶ



体がすっぽりおさまる岩のくぼみ。
ここで寝袋ひとつのビバークをしたら、どんなに幸せなことだろうか。
石狩平野の夜景のまたたきと空の星々のまたたきとで、目が変になってしまうかもしれないな。


走りたくなる気持ちを抑えきれずに帰り道。
走りたくなる気持ちを抑えきれずに帰り道



銭天山荘の広場でしばし休んで、今年の山を振り返ったりして。
銭天山荘の広場でしばし休んで、今年の山を振り返ったりして。




高い山からつぎつぎに、あと戻りできない冬に取りこまれて、いよいよ里の山にも雪が降り始めました。
山を歩くのも、今年はもうしまいかな。
そろそろスキーの準備をしなければ。

投稿者 hamayo : 21:21 | コメント (12) | トラックバック

2010年10月31日

ニセコの山で寝る



分かっていたのです。
誰にも会わないことや、じきに日が暮れること、天気が長くは持たないこと。
翌日は雨にあたり冷たい風に吹かれることも、びしょ濡れになったテントをたたんで手が凍え指が閉じなくなることも、真っ白なガスに包まれ歯をがちがち鳴らしながら見失った道を探すことも、ぜんぶ最初から分かっていたのです。
そして、その先には、とびきりあつい温泉の湯船が待っていることも。


山に沈む夕日



ただひとつだけ、分からなかったことがあります。
書類の上だけに限った話しではありますが、ぼくは、下山することができなくなってしまうのです。
こればかりはまったくもって予想だにしない出来事となるのですが、それはいちばん最後のお話であります。



続きを読む・・・





全体がペロンとしてて、所々ポコリと突きだしてる。
雪がいちめんを被ったら、スキーを履いてどこまでも歩いていけそうな、やわらかい山。
雪がいちめんを被ったら、スキーを履いてどこまでも歩いていけそう。



名前のない小さなピーク。
道はなくても、行けるはず。
踏みはずす勇気。
名前のない小さなピーク。道はなくても、行けるはず。



運動場みたいに平坦でだだっ広い場所は、なかなか山の中では出くわさないと思う。
いつ来てもやはり生命の感触は無い、不思議なところ。
いつ来てもやはり生命の感触は無い、不思議なところ。



ガレ場とザレ場を行き来しながら空へ向かっていく尾根を登り、楽なほう歩きやすいほうへと進んでいると、いつしか道から外れていた。
ここから沼が見えるとは思ってなくて、気分がいい。
ここから沼が見えるとは思ってなくて、気分がいい。



このあたりで寝る場所を探そう。
今日のねぐらを探しているときは、山にいて最もわくわくする時間だ。
平らであることは譲れないし、もちろん登山道からは不可視である方が望ましい。
風をさけることができて、それでいて見晴らしも良く、ほどよく体をほぐせるような岩場があればいうことなし。


いま目の前にあるこここそが、最善の場所かもしれない。
でもこの先には、もっとずっと、目を見張るようなシャングリラがあるかもしれない。
たった一夜の場所でしかないけど、それを探す至福の葛藤。


風を避けるために、ひとつ小さなコブを越えた窪地で、草鞋を脱ぐ。
風を避けるために、ひとつ小さなコブを越えた窪地で、草鞋を脱ぐ。





    ・日没を見に稜線へ

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すっかり暗くなってから、テントの前室で湯を沸かす。
すっかり暗くなってから、テントの前室で湯を沸かす。



最近は、jupiterさんトコにある、和洋中の乾物、香辛料、シーズニングに夢中なのだが、食品と食品を組み合わせても、必ずしも食べられものができるわけではないということに気づかされることもしばしば。
やたらと辛い食べものを腹に収めて、就寝。


なにもない山の中で一人で寝るのは恐くないですかと聞かれることがある。
もちろん恐いに決まってる。
暗闇だとか、一人でいることとかではなく、北海道の山でなにが恐いかって、それはアイツしかいない。
このあたりにはもうほとんど生息してないらしいけど、いないわけじゃないという事実だけで十分に恐いのだ。


それでも、いつもよりも五感が冴えて、鋭く敏感になっていく体の変化に、ぼくは楽しさを見いだす。
たとえば耳をすまして風の音を聞き、想像する空気の厚さと重さ。
そこに割り込んでくる異なる周波数。
視覚以外の情報から映像をこね上げていく作業は、こういう場所でしかできない貴重な経験だと思う。


外がやけに明るいと思ったら、月が昇ってた。
寝てたけど立待月。
外がやけに明るいと思ったら、月が昇ってた。



テントから出てお月見をする。
テントから出てお月見をする。



寒い寒い。テントに戻ろう。
5分と立っていられない。
月が雲に隠れると余計に寒く感じるけど、いくらなんでも錯覚だろうな。


風に背を向けてテントを張ったから、フライも本体もドア全開で、月を見ながら眠る。
屋根なんていらないと思える、あぁ贅沢な夜。


-------------------------------------------------------


翌朝、土砂降り、テントの中も水浸し。
万一に備えて、登山靴にはきっちりフタを詰めて寝たんだけど、細部にこだわって大局を見誤る典型ですな。
翌朝、土砂降り、テントの中も水浸し。



うむ。下山だ。
2年前となにもかもが同じ。


とりあえず、山頂の写真は撮る。
とりあえず、山頂の写真は撮る。



なにも見えない。
矢印だけが頼りだけど、そもそもどこがトレイルなのかさっぱり分からないような山なのだ。
矢印だけが頼りだけど



周辺の地形はバッチリ頭に入ってる。
それに小さな山だ。
最大傾斜線よりも左へ行かない限り、かならず昨日歩いた道とクロスする。
なのにどうも何かが変。
距離感というかスケールが合わない。
行きすぎたと思い左に修正、やっぱり正しかったとまた右へ。


帰ってから分かったことだけど、さっき写真を撮った場所は山頂じゃなかったのだ。
すべてはそれが原因。


ハイキングコースに戻っても、ガスは深く雨やまず。
ハイキングコースに戻っても、ガスは深く雨やまず。



さあさあ、温泉が見えてきた。
平日だし、湯船をひとりじめするぞー。
さあさあ、温泉が見えてきましたよ。


-------------------------------------------------------


さて、山旅もこれでおしまいです。
だけれども、下山届けを書きますかという段になって、ぼくは愕然としました。
無いのです。
昨日たしかに入山届けを書いたボックスが、きれいさっぱり土台だけを残して無くなっていたのです。


これはまずいぞ遭難騒ぎになったらどうしよと twitterにつぶやいて、まぁとりあえず湯につかって凍えた体を温めて。
そのうち体も頭もほぐれてきて、まーどーでもいーやという気分になりかけたところに昨日の映像がフラッシュバック。
そういえば入山届けには、「行先:特になし」って書いたよな・・・。


だって本当にあてもなく歩きたかったんだモン!、っていう言い訳は警察やマスコミには通用しないぞ、てゆーかマスコミは喜ぶか。おろおろ。
「遭難者に反省の色ナシ」「ツイッター登山者、意味不明な言動」「貧相な装備に貧相な顔」
やべー、時の人になっちゃうかも。
羽根田治さん取材に来るかなぁ。


とか考えながら風呂から上がると、いまるぷさんから返信。
なるほろ~警察か交番に言えばいいのか、なんだ簡単なことじゃないですか。
ピポパポパポピ。
え?、そちらじゃない。はぁ・・ほぉ、、、ふむふむ。


結果は twitterより転載。

  入山届顛末。妖怪「たらい回し」に出現により、
  警察→役場→森林管理署→総合振興局森林室と
  いうコースをたどりました。
  そうです。ぼくが書いたのは入山届けではなく
  入林届けだったのです。
  ご心配おかけしましたでございます。


登山口に置かれているボックスの中にあるあの紙切れはいったい誰が管理しているのか、勉強になる出来事でした。
とりあえず、森林室と森林管理署は、インドとインドネシアぐらいは違うらしいっすよ。


またひとつ、忘れられない山歩きができました。





全体がペロンとしてて、所々ポコリと突きだしてる。
雪がいちめんを被ったら、スキーを履いてどこまでも歩いていけそうな、やわらかい山。
雪がいちめんを被ったら、スキーを履いてどこまでも歩いていけそう。



名前のない小さなピーク。
道はなくても、行けるはず。
踏みはずす勇気。
名前のない小さなピーク。道はなくても、行けるはず。



運動場みたいに平坦でだだっ広い場所は、なかなか山の中では出くわさないと思う。
いつ来てもやはり生命の感触は無い、不思議なところ。
いつ来てもやはり生命の感触は無い、不思議なところ。



ガレ場とザレ場を行き来しながら空へ向かっていく尾根を登り、楽なほう歩きやすいほうへと進んでいると、いつしか道から外れていた。
ここから沼が見えるとは思ってなくて、気分がいい。
ここから沼が見えるとは思ってなくて、気分がいい。



このあたりで寝る場所を探そう。
今日のねぐらを探しているときは、山にいて最もわくわくする時間だ。
平らであることは譲れないし、もちろん登山道からは不可視である方が望ましい。
風をさけることができて、それでいて見晴らしも良く、ほどよく体をほぐせるような岩場があればいうことなし。


いま目の前にあるこここそが、最善の場所かもしれない。
でもこの先には、もっとずっと、目を見張るようなシャングリラがあるかもしれない。
たった一夜の場所でしかないけど、それを探す至福の葛藤。


風を避けるために、ひとつ小さなコブを越えた窪地で、草鞋を脱ぐ。
風を避けるために、ひとつ小さなコブを越えた窪地で、草鞋を脱ぐ。





    ・日没を見に稜線へ

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すっかり暗くなってから、テントの前室で湯を沸かす。
すっかり暗くなってから、テントの前室で湯を沸かす。



最近は、jupiterさんトコにある、和洋中の乾物、香辛料、シーズニングに夢中なのだが、食品と食品を組み合わせても、必ずしも食べられものができるわけではないということに気づかされることもしばしば。
やたらと辛い食べものを腹に収めて、就寝。


なにもない山の中で一人で寝るのは恐くないですかと聞かれることがある。
もちろん恐いに決まってる。
暗闇だとか、一人でいることとかではなく、北海道の山でなにが恐いかって、それはアイツしかいない。
このあたりにはもうほとんど生息してないらしいけど、いないわけじゃないという事実だけで十分に恐いのだ。


それでも、いつもよりも五感が冴えて、鋭く敏感になっていく体の変化に、ぼくは楽しさを見いだす。
たとえば耳をすまして風の音を聞き、想像する空気の厚さと重さ。
そこに割り込んでくる異なる周波数。
視覚以外の情報から映像をこね上げていく作業は、こういう場所でしかできない貴重な経験だと思う。


外がやけに明るいと思ったら、月が昇ってた。
寝てたけど立待月。
外がやけに明るいと思ったら、月が昇ってた。



テントから出てお月見をする。
テントから出てお月見をする。



寒い寒い。テントに戻ろう。
5分と立っていられない。
月が雲に隠れると余計に寒く感じるけど、いくらなんでも錯覚だろうな。


風に背を向けてテントを張ったから、フライも本体もドア全開で、月を見ながら眠る。
屋根なんていらないと思える、あぁ贅沢な夜。


-------------------------------------------------------


翌朝、土砂降り、テントの中も水浸し。
万一に備えて、登山靴にはきっちりフタを詰めて寝たんだけど、細部にこだわって大局を見誤る典型ですな。
翌朝、土砂降り、テントの中も水浸し。



うむ。下山だ。
2年前となにもかもが同じ。


とりあえず、山頂の写真は撮る。
とりあえず、山頂の写真は撮る。



なにも見えない。
矢印だけが頼りだけど、そもそもどこがトレイルなのかさっぱり分からないような山なのだ。
矢印だけが頼りだけど



周辺の地形はバッチリ頭に入ってる。
それに小さな山だ。
最大傾斜線よりも左へ行かない限り、かならず昨日歩いた道とクロスする。
なのにどうも何かが変。
距離感というかスケールが合わない。
行きすぎたと思い左に修正、やっぱり正しかったとまた右へ。


帰ってから分かったことだけど、さっき写真を撮った場所は山頂じゃなかったのだ。
すべてはそれが原因。


ハイキングコースに戻っても、ガスは深く雨やまず。
ハイキングコースに戻っても、ガスは深く雨やまず。



さあさあ、温泉が見えてきた。
平日だし、湯船をひとりじめするぞー。
さあさあ、温泉が見えてきましたよ。


-------------------------------------------------------


さて、山旅もこれでおしまいです。
だけれども、下山届けを書きますかという段になって、ぼくは愕然としました。
無いのです。
昨日たしかに入山届けを書いたボックスが、きれいさっぱり土台だけを残して無くなっていたのです。


これはまずいぞ遭難騒ぎになったらどうしよと twitterにつぶやいて、まぁとりあえず湯につかって凍えた体を温めて。
そのうち体も頭もほぐれてきて、まーどーでもいーやという気分になりかけたところに昨日の映像がフラッシュバック。
そういえば入山届けには、「行先:特になし」って書いたよな・・・。


だって本当にあてもなく歩きたかったんだモン!、っていう言い訳は警察やマスコミには通用しないぞ、てゆーかマスコミは喜ぶか。おろおろ。
「遭難者に反省の色ナシ」「ツイッター登山者、意味不明な言動」「貧相な装備に貧相な顔」
やべー、時の人になっちゃうかも。
羽根田治さん取材に来るかなぁ。


とか考えながら風呂から上がると、いまるぷさんから返信。
なるほろ~警察か交番に言えばいいのか、なんだ簡単なことじゃないですか。
ピポパポパポピ。
え?、そちらじゃない。はぁ・・ほぉ、、、ふむふむ。


結果は twitterより転載。

  入山届顛末。妖怪「たらい回し」に出現により、
  警察→役場→森林管理署→総合振興局森林室と
  いうコースをたどりました。
  そうです。ぼくが書いたのは入山届けではなく
  入林届けだったのです。
  ご心配おかけしましたでございます。


登山口に置かれているボックスの中にあるあの紙切れはいったい誰が管理しているのか、勉強になる出来事でした。
とりあえず、森林室と森林管理署は、インドとインドネシアぐらいは違うらしいっすよ。


またひとつ、忘れられない山歩きができました。

投稿者 hamayo : 18:30 | コメント (12) | トラックバック

2010年10月14日

旭岳-間宮岳-中岳温泉



紅葉の華やいだ雰囲気も遠い昔、ハイカーの心の中にも冷たい風が吹き始めるようになると、ぼくは行動を開始します。
わざわざ山に登ってまでススキノみたいな人混みの中を歩きたくはないと考えている人にとって、10月の北海道は空模様にさえ注意すれば、'人気の山'を歩くにはもってこいの季節です。


「去りゆく秋」と「冬の足音」との境界線の上に、タイミング良くあらわれた微かな道を目ざとく見つけて、高い空の下を歩いてきました。


見上げた空の高さに、思わず両手を振り上げる。



続きを読む・・・





10月になると、ロープウェイの始発が 8:00までずれ込んでしまうのは全くの想定外。
日の出直後の朝の2時間に、山を歩けないのはとても痛手です。
いざとなったら姿見から歩いて下りればいいと気持ちを切り替えて、まずは主峰の旭岳をめざします。


すっかり色の抜けた旭岳と、2ヶ月前の旭岳の色を映す姿見の池。
すっかり色の抜けた旭岳と、2ヶ月前の旭岳の色を映す姿見の池。


冬に見る旭岳とちがって山がなんだか近くに見えて、これは楽ちんだと思ったのもつかの間、見えているのになかなか近付かない山頂に気力も削がれ、見えない方がいい時だってあるということに今さらながら気付くのです。


やっぱり大きい旭岳。山頂はなかなか近付かない。
やっぱり大きい旭岳。山頂はなかなか近付かない。

とはいっても2時間は掛かりません。
北海道のてっぺんに到着です。



    ・旭岳からのパノラマ

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こんな季節でもさずがは旭岳、10人ほどが山頂にいて思い思いの時間を過ごしています。
だけど人が多いのもここまでで、このさき裏旭へと下っていく人はほとんどいません。


枯れ草なのか土なのか判別できない荒涼とした風景の中へ入っていく。
枯れ草なのか土なのか判別できない荒涼とした風景の中へ入っていく。


夏場は尻すべり会場となる、裏旭名物のザレた急斜面を攻略するコツはただひとつ、楽しむこと。
マンガのように足を回転させ、重力加速度と友達になるのです。
でもここを登るのはイヤだな。


下り立った平坦地は、裏旭キャンプ指定地。
指定地と言っても、小屋もなければトイレブースもなく、標識さえもありません。
全周囲を山に囲まれたこの場所は、ぼくにとって完全無欠に理想のテント場です。




    ・裏旭キャンプ指定地のぐるり360度

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ここにあるのは、なにもないという事実だけです。
「やつらの足音のバラード」が聞こえてきそうなこの場所で、強い風に吹かれながら星空をながめてみたいなぁ。


お決まりのひと言、「テント張り放題だな」をつぶやきながら、間宮岳をめざす。
お決まりのひと言、「テント張り放題だな」をつぶやきながら、間宮岳をめざす。


日の当たらない岩陰にはつららが下がり、足もとには霜柱。
初雪とともに、一度は冬が通りぬけた稜線には、そこかしこに冷たいしるしが落ちていました。


延々と広がる構造土に、流れた年月の長さを思う。
いちめんに広がる構造土に、流れた年月の長さを思う。

「神々の遊ぶ庭」という言葉は大雪山のサブタイトルですが、ここは神様たちが囲碁かオセロを楽しんだ遺跡のようにも見えます。
大雪山には明確なカールはないようだけど、こうした周氷河地形の豊富さは、間宮岳周辺のいちばんの見所です。


真北に折れたトレイルが中岳とのコルにさしかかったら、御鉢平の向こうの山々とはここでお別れです。
中岳温泉へ向けて、高度を落としていきます。


地図上では全く特徴のない安足間岳も、この角度から見れば意外と雄大です。
地図上では全く特徴のない安足間岳も、この角度から見れば意外と雄大です。


荷物を下ろしてひと休み。
山パンを頬張り、体をほぐしていると、外国人山ガール5人組がおりてきました。
まるで大学の講義にでも行くような軽装で、だけども長い手足でスタスタと軽快に、あっという間に尾根を下っていきました。


尾根を下って草木の匂いがしてくると、峻険な谷の向こうに裾合平の一本道。
峻険な谷の向こうに裾合平の一本道


さらに下ると、谷底に中岳温泉の湯けむりが。
谷底に中岳温泉の湯けむりが

さっきの5人が湯につかってないかな、なんて淡い期待は抱いたりしませんよ。


裾合平に入るころには、逆転層の雲海どもが暴れ始めたようで、すっかりガスに包まれてしまいました。
ここから姿見までは、地図を見ると平坦に見えるけど、実はいくつもの小さな谷を登って下りてと繰り返します。
山の後半にきて、なかなかどうしてくたびれる道のりなのです。


ガスに包まれた悔しさをナキウサギの真似をして紛らわす。
ガスに包まれた悔しさをナキウサギの真似をして紛らわす。


いつしかガスも消え去って、雲海もあるべき場所に落ち着くと、ようやく遠くにロープウェイの建物が見えてきました。
あと2つ谷を越えるとゴール。その向こうは雲海に浮かぶ十勝連峰。


姿見が近付くにつれて、観光客が目立ち始めます。
すれ違っても、こんにちはは返ってこない。
ゴールまではまだ少し歩かなきゃいけないけど、ここらへんで山旅は終わりです。


ロープウェイが雲海に飛び込んで、白一色の空間を抜けると、そこには山の上よりも冷たい空気が吹き溜まっていました。
一日を通してほとんど乱れることがなかった逆転層が、10月の大雪とは思えない奇跡の一日をもたらしてくれたのです。
「今日は冬の準備にいそがしいから、嵐はお休みだよ」
そんな山の神様の声も聞こえてきそうな、幸運な山旅でした。


登山日:10月上旬
旭岳-間宮岳-中岳温泉 GPSトラック
旭岳-間宮岳-中岳温泉 断面図







10月になると、ロープウェイの始発が 8:00までずれ込んでしまうのは全くの想定外。
日の出直後の朝の2時間に、山を歩けないのはとても痛手です。
いざとなったら姿見から歩いて下りればいいと気持ちを切り替えて、まずは主峰の旭岳をめざします。


すっかり色の抜けた旭岳と、2ヶ月前の旭岳の色を映す姿見の池。
すっかり色の抜けた旭岳と、2ヶ月前の旭岳の色を映す姿見の池。


冬に見る旭岳とちがって山がなんだか近くに見えて、これは楽ちんだと思ったのもつかの間、見えているのになかなか近付かない山頂に気力も削がれ、見えない方がいい時だってあるということに今さらながら気付くのです。


やっぱり大きい旭岳。山頂はなかなか近付かない。
やっぱり大きい旭岳。山頂はなかなか近付かない。

とはいっても2時間は掛かりません。
北海道のてっぺんに到着です。



    ・旭岳からのパノラマ

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こんな季節でもさずがは旭岳、10人ほどが山頂にいて思い思いの時間を過ごしています。
だけど人が多いのもここまでで、このさき裏旭へと下っていく人はほとんどいません。


枯れ草なのか土なのか判別できない荒涼とした風景の中へ入っていく。
枯れ草なのか土なのか判別できない荒涼とした風景の中へ入っていく。


夏場は尻すべり会場となる、裏旭名物のザレた急斜面を攻略するコツはただひとつ、楽しむこと。
マンガのように足を回転させ、重力加速度と友達になるのです。
でもここを登るのはイヤだな。


下り立った平坦地は、裏旭キャンプ指定地。
指定地と言っても、小屋もなければトイレブースもなく、標識さえもありません。
全周囲を山に囲まれたこの場所は、ぼくにとって完全無欠に理想のテント場です。




    ・裏旭キャンプ指定地のぐるり360度

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ここにあるのは、なにもないという事実だけです。
「やつらの足音のバラード」が聞こえてきそうなこの場所で、強い風に吹かれながら星空をながめてみたいなぁ。


お決まりのひと言、「テント張り放題だな」をつぶやきながら、間宮岳をめざす。
お決まりのひと言、「テント張り放題だな」をつぶやきながら、間宮岳をめざす。


日の当たらない岩陰にはつららが下がり、足もとには霜柱。
初雪とともに、一度は冬が通りぬけた稜線には、そこかしこに冷たいしるしが落ちていました。


延々と広がる構造土に、流れた年月の長さを思う。
いちめんに広がる構造土に、流れた年月の長さを思う。

「神々の遊ぶ庭」という言葉は大雪山のサブタイトルですが、ここは神様たちが囲碁かオセロを楽しんだ遺跡のようにも見えます。
大雪山には明確なカールはないようだけど、こうした周氷河地形の豊富さは、間宮岳周辺のいちばんの見所です。


真北に折れたトレイルが中岳とのコルにさしかかったら、御鉢平の向こうの山々とはここでお別れです。
中岳温泉へ向けて、高度を落としていきます。


地図上では全く特徴のない安足間岳も、この角度から見れば意外と雄大です。
地図上では全く特徴のない安足間岳も、この角度から見れば意外と雄大です。


荷物を下ろしてひと休み。
山パンを頬張り、体をほぐしていると、外国人山ガール5人組がおりてきました。
まるで大学の講義にでも行くような軽装で、だけども長い手足でスタスタと軽快に、あっという間に尾根を下っていきました。


尾根を下って草木の匂いがしてくると、峻険な谷の向こうに裾合平の一本道。
峻険な谷の向こうに裾合平の一本道


さらに下ると、谷底に中岳温泉の湯けむりが。
谷底に中岳温泉の湯けむりが

さっきの5人が湯につかってないかな、なんて淡い期待は抱いたりしませんよ。


裾合平に入るころには、逆転層の雲海どもが暴れ始めたようで、すっかりガスに包まれてしまいました。
ここから姿見までは、地図を見ると平坦に見えるけど、実はいくつもの小さな谷を登って下りてと繰り返します。
山の後半にきて、なかなかどうしてくたびれる道のりなのです。


ガスに包まれた悔しさをナキウサギの真似をして紛らわす。
ガスに包まれた悔しさをナキウサギの真似をして紛らわす。


いつしかガスも消え去って、雲海もあるべき場所に落ち着くと、ようやく遠くにロープウェイの建物が見えてきました。
あと2つ谷を越えるとゴール。その向こうは雲海に浮かぶ十勝連峰。


姿見が近付くにつれて、観光客が目立ち始めます。
すれ違っても、こんにちはは返ってこない。
ゴールまではまだ少し歩かなきゃいけないけど、ここらへんで山旅は終わりです。


ロープウェイが雲海に飛び込んで、白一色の空間を抜けると、そこには山の上よりも冷たい空気が吹き溜まっていました。
一日を通してほとんど乱れることがなかった逆転層が、10月の大雪とは思えない奇跡の一日をもたらしてくれたのです。
「今日は冬の準備にいそがしいから、嵐はお休みだよ」
そんな山の神様の声も聞こえてきそうな、幸運な山旅でした。


登山日:10月上旬
旭岳-間宮岳-中岳温泉 GPSトラック
旭岳-間宮岳-中岳温泉 断面図



投稿者 hamayo : 22:54 | コメント (6) | トラックバック

2010年10月 4日

両古美山、少しは有名になったのか



東風と西風が交互に吹くようになると、夏はおしまいです。
もう逆戻りすることはないでしょう。
さようなら夏山。
やっと低山を歩ける日和になりました。


静かな山、静かな林




静かな山、静かな林、両古美山です。



続きを読む・・・





今年はこれが2回目。
雪があるときもないときも、やっぱり手軽、やっぱり楽しい両古美山。


秋色しっとり。
秋色しっとり

雪があるときスキーで上がると、汗をかきかきしんどい斜面なのですが、夏道はジグザグなので、ほんのひと登りで稜線です。




このハイマツの稜線に出ると、両古美山に来たんだなぁと実感します。
両古美山の、ハイマツの稜線




山頂はまだ少し先の、展望のない、潅木に囲まれた場所にあります。
なのにその手前、小さなピナクルがある見晴らしが良い場所に、両古美山の山頂標識がおいてありました。
だれかが山頂から取っ払って持ってきたのでしょう。
困ったものです。




眺めがいいということなら、もっとずっと歩いて、無沢1への分岐もすぎた先にある、展望台といわれる場所まで行ったほうが幸せになれます。
両古美山の展望台




今日はあいにく雲が多くて、展望の方はいまいちだったけど、日の当たった斜面の華やかさは、低山とはいえちょっとしたものです。
低山らしからぬ紅葉の光景




今日は風がないので、のんびり昼ごはん。
山パンです。
山パンの昼ごはん

レーズンとクルミをどっさり入れたライ麦パン。
ザックの中でも変形しない固さのパンを目指して、試行錯誤しております。
球体が外力に強いのは確かだけど、今度はイモムシ型にしよう。
これじゃおむすびコロリンになってしまう。




帰り道、何度も止まって眺めを楽しむ。
帰り道、何度も止まって眺めを楽しむ。

この先で、山ガール軍団と出会いました。
今まで一度たりとも人に会ったことがないこの過疎の山で、5人もの人に会うなんて驚きです。
向こうも驚いてましたが。




ここは尾根を下る最後の展望岩。
これだけ見晴らしのいい山でも、トレイル以外はすべてヤブなので、もしテントを張るならここ以外にはないだろうな、という場所です。
テントを張るならここしかない




この山であのパンは、いささかカロリーオーバーだったようで、おなかが膨れっぱなしです。
なので今日は、走って帰ろう。


歩きたくない、時もある。
だから走って帰ろう



今回も、いい山歩きができました。
紅葉のピークは、来週あたりかな。
多くの人にこの山の良さを知ってもらいたいけど、静かな山のままでいて欲しい気持ちも半分。
両古美山は、ぼくのお気に入りで、とっておきの山なのです。






今年はこれが2回目。
雪があるときもないときも、やっぱり手軽、やっぱり楽しい両古美山。


秋色しっとり。
秋色しっとり

雪があるときスキーで上がると、汗をかきかきしんどい斜面なのですが、夏道はジグザグなので、ほんのひと登りで稜線です。




このハイマツの稜線に出ると、両古美山に来たんだなぁと実感します。
両古美山の、ハイマツの稜線




山頂はまだ少し先の、展望のない、潅木に囲まれた場所にあります。
なのにその手前、小さなピナクルがある見晴らしが良い場所に、両古美山の山頂標識がおいてありました。
だれかが山頂から取っ払って持ってきたのでしょう。
困ったものです。




眺めがいいということなら、もっとずっと歩いて、無沢1への分岐もすぎた先にある、展望台といわれる場所まで行ったほうが幸せになれます。
両古美山の展望台




今日はあいにく雲が多くて、展望の方はいまいちだったけど、日の当たった斜面の華やかさは、低山とはいえちょっとしたものです。
低山らしからぬ紅葉の光景




今日は風がないので、のんびり昼ごはん。
山パンです。
山パンの昼ごはん

レーズンとクルミをどっさり入れたライ麦パン。
ザックの中でも変形しない固さのパンを目指して、試行錯誤しております。
球体が外力に強いのは確かだけど、今度はイモムシ型にしよう。
これじゃおむすびコロリンになってしまう。




帰り道、何度も止まって眺めを楽しむ。
帰り道、何度も止まって眺めを楽しむ。

この先で、山ガール軍団と出会いました。
今まで一度たりとも人に会ったことがないこの過疎の山で、5人もの人に会うなんて驚きです。
向こうも驚いてましたが。




ここは尾根を下る最後の展望岩。
これだけ見晴らしのいい山でも、トレイル以外はすべてヤブなので、もしテントを張るならここ以外にはないだろうな、という場所です。
テントを張るならここしかない




この山であのパンは、いささかカロリーオーバーだったようで、おなかが膨れっぱなしです。
なので今日は、走って帰ろう。


歩きたくない、時もある。
だから走って帰ろう



今回も、いい山歩きができました。
紅葉のピークは、来週あたりかな。
多くの人にこの山の良さを知ってもらいたいけど、静かな山のままでいて欲しい気持ちも半分。
両古美山は、ぼくのお気に入りで、とっておきの山なのです。


投稿者 hamayo : 07:26 | コメント (14) | トラックバック

2010年9月16日

羊蹄山 京極コースはガマン坂



拝啓、羊蹄さん。
そろそろ冷たい風も吹き始めたころでしょうか。
こうしてまたお会いすることになるなんて、思ってもみませんでした。


拝啓 羊蹄さん




ここから登るのは初めてですが、数えてみれば、これであなたに登るのは4度目です。
あれほどツマラない山だ、一度登れば十分だ、などと悪態をついていたにもかかわらず、こんなにすばらしいお天気を用意して下さるなんて、どれだけ懐の深い山なのでしょう。
上司にしたい山というアンケートがあったなら、上位にランクするのは間違いないと思います。
やはりあなたは、文字にして表すことのできない魅力を備えているのでしょう。


だけどもやはり今回もまた、山ヤの間で語り継がれているあの格言、「羊蹄に、登らぬバカと、二度登るバカ」の意味を、思い知らされてしまいました。
ぼくはもう一度、あなたに言わなければいけません。
羊蹄さん、やっぱりあなたはツマラない山です。
それと同時に、どういうわけか4度も登ってしまうぼくもまたバカであることを、認めないわけにはいかないようです。


  ---------------------------------------------------------------


バカの二乗。
↓↓↓↓↓↓

続きを読む・・・





陽射しはまだ力強くても、夏が終わったあとのすがしい青空。
山頂近くの緑は色あせて見え、お鉢の中はすでに紅葉が始まりつつあるのかもしれません。
陽射しはまだ力強くても、夏が終わったあとのすがしい青空。




山の東側につけられた京極コースは、つねに太陽を背負って登ります。
自分の影を踏み付けながら、もくもくと登っていくわけです。


地形図を見るとよくわかるのですが、4つある登山道の中で、これほど「まっすぐ」なのはこのコースだけです。
ほかのコースにあるような、スイッチバックや大回りなんてものはありません。
地形図の破線は、職業用ミシンの縫い目のように、見事な潔さでまっすぐに、山頂めがけて伸びているのです。


展望と呼べるようなものはほとんどなく、わずかに見られるのは、見下ろす誰かの畑であったり、よく知らない遠くの山であったり、そんなものばかりです。
比羅夫コースから見るアンヌプリのように、心の支えになってくれるような風景はなにも見えないのです。


休むな、ということか。
6合目。休むな、というメッセージか




休憩したくても追い抜きたくても道を譲りたくても、そんなことができる場所は数えるほどしかなくて、トレイルはどこも、細いか、険しいか、スリッピーかのどれかで、くわえて急傾斜です。
細くて急か、険しくて急か、スリッピーで急な所しかないということです。


おしんのしんは辛抱のしん。
あぁ、なぜか勝手に、そんな言葉が口をついて出てきます。


とにかく足元がナナメなのです。
とにかく足もとがナナメなのです




結局ぼくは、8合目まで休憩することができませんでした。
8合目にはトレイル脇に半畳ほどのスペースがあって、一人か二人ぐらいなら荷物を木に引っかけて降ろせるのです。
もちろん、座ることはできません。


後続のハイカーに押し出されるようにして安息の地を譲り渡すと、一気に山頂へ。
徐々に高山の風景になってきます。


手まねきする青空。
手まねきする青空




麓からもはっきり見える9合目上のザレた崩壊地では、視界を遮る木々もすでになく、今までの憂さを晴らすかのような抜群の高度感の中を登ります。
落石に遭わないことと、落石を起こさないことだけに集中。
人の話す声が聞こえてきて、最後はポンっとリムの一角に飛び出し、そして振り向いた先には。


広大な景色と、落ちてきそうな成層圏。
広大な景色と、落ちてきそうな成層圏。




京極ピークも、本峰も、そしてお鉢の向こうの旧小屋付近も、とにかく人だらけで、山頂まで来てもまだ休める場所はないのです。
時計回りに本峰を越えて岩場をしばらく行くと、ようやく静かになりました。
小ピークの陰に腰を下ろして、やっとこさひと休みです。


腹がすいてもまずコーヒー。
腹がすいてもまずはコーヒー。




寝そべって見おろす、畑のパッチワークの中を、トラクターがゆっくり動いています。
ニセコの山には雲がどっさりかぶさって、まるで風邪で寝込んでいるみたい。
誰かのくしゃみが火口壁に反射して、何度もやまびこを返します。
それを笑った誰かの声も、同じようにやまびこを返します。
のどかです。
のどかで、そして平和です。



    ・羊蹄山からのパノラマ

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ふたたび荷物を担いで、お鉢をめぐります。
羊蹄山のお鉢めぐり




おおぜいの人とすれ違って、ときには立ち止まり、ときには歩きながら、いろいろな話をしました。
ぼくのことを知ってるという方とも出会い、少し照れくさい。
一周した京極ピークのすぐそばでは、30回以上も羊蹄山に登っているという方と話しをしました。


  ここを下るのですか。
  ここは帰りが難儀するんです。
  気をつけてお行きなさい。
  若いからといって、早足で下りてはいけませんよ。
  登りの時よりもたくさん休憩を取って、
  ゆっくり歩くといいです。
  

ここ京極コースと、隣の喜茂別コースは、どちらも単調なので数回しか登っていないとのお話でした。
喜茂別コースはまだいくぶん開放的で、景色も少しは見られるそうです。
たしかに京極コースは、がまん比べというか、自分の心との戦いみたいな要素があるかもしれません。
お礼を言って、そのがまん比べの坂道を、ゆっくりと。


この崩壊地をすぎれば、あとは再び無展望です。
京極コースの崩壊地を下る




行きは背負ってた太陽は、帰りも後ろに回ってるけど、じきに羊蹄山の陰に沈んでしまって、暗い林の斜面を、静かに悪態つきながら下りていきました。ぶつぶつ。


1合目をすぎて、人工林の直線の彼方に、光る畑の黄金色。
林の向こう、黄金色に光る畑

あぁ、やっとだよ、やっと。
これで終わりだ、もうたくさん。

  ---------------------------------------------------------------


ぼくはくたびれました、羊蹄さん。
今回の山旅で、ひとつ分かったことがあるのです。
どれだけツマラないということを知っていたとしても、人は何年も経ってしまうとその記憶をすこしずつ失くしてしまうようです。
ある意味でそれは、まんぷく食堂のカツ丼のようなものかもしれません。


それでもぼくは、登らないことよりも登ることを選びました。
風の吹かない室内で、コンピュータ・スクリーンに映し出される山の描写を目で追うことよりも、自分の目で見て自分の足で感じ自分の言葉で表すことを選びました。
そしてやっぱりぼくは、思った通りの感想を吐くのです。
「こんなツマラん山、もう二度と来るものか」


だけどぼくには、確信があります。
羊蹄さん、ぼくはまた、あなたに登ることになるのだろうなと。
今日と同じように、ぶつぶつ文句を言いながら、登ることになるのだろうなと。


日暮れの羊蹄




ではまた、その日まで。
敬具





登山日:9月中旬
羊蹄山(京極コース)GPSトラック
羊蹄山(京極コース)断面図







陽射しはまだ力強くても、夏が終わったあとのすがしい青空。
山頂近くの緑は色あせて見え、お鉢の中はすでに紅葉が始まりつつあるのかもしれません。
陽射しはまだ力強くても、夏が終わったあとのすがしい青空。




山の東側につけられた京極コースは、つねに太陽を背負って登ります。
自分の影を踏み付けながら、もくもくと登っていくわけです。


地形図を見るとよくわかるのですが、4つある登山道の中で、これほど「まっすぐ」なのはこのコースだけです。
ほかのコースにあるような、スイッチバックや大回りなんてものはありません。
地形図の破線は、職業用ミシンの縫い目のように、見事な潔さでまっすぐに、山頂めがけて伸びているのです。


展望と呼べるようなものはほとんどなく、わずかに見られるのは、見下ろす誰かの畑であったり、よく知らない遠くの山であったり、そんなものばかりです。
比羅夫コースから見るアンヌプリのように、心の支えになってくれるような風景はなにも見えないのです。


休むな、ということか。
6合目。休むな、というメッセージか




休憩したくても追い抜きたくても道を譲りたくても、そんなことができる場所は数えるほどしかなくて、トレイルはどこも、細いか、険しいか、スリッピーかのどれかで、くわえて急傾斜です。
細くて急か、険しくて急か、スリッピーで急な所しかないということです。


おしんのしんは辛抱のしん。
あぁ、なぜか勝手に、そんな言葉が口をついて出てきます。


とにかく足元がナナメなのです。
とにかく足もとがナナメなのです




結局ぼくは、8合目まで休憩することができませんでした。
8合目にはトレイル脇に半畳ほどのスペースがあって、一人か二人ぐらいなら荷物を木に引っかけて降ろせるのです。
もちろん、座ることはできません。


後続のハイカーに押し出されるようにして安息の地を譲り渡すと、一気に山頂へ。
徐々に高山の風景になってきます。


手まねきする青空。
手まねきする青空




麓からもはっきり見える9合目上のザレた崩壊地では、視界を遮る木々もすでになく、今までの憂さを晴らすかのような抜群の高度感の中を登ります。
落石に遭わないことと、落石を起こさないことだけに集中。
人の話す声が聞こえてきて、最後はポンっとリムの一角に飛び出し、そして振り向いた先には。


広大な景色と、落ちてきそうな成層圏。
広大な景色と、落ちてきそうな成層圏。




京極ピークも、本峰も、そしてお鉢の向こうの旧小屋付近も、とにかく人だらけで、山頂まで来てもまだ休める場所はないのです。
時計回りに本峰を越えて岩場をしばらく行くと、ようやく静かになりました。
小ピークの陰に腰を下ろして、やっとこさひと休みです。


腹がすいてもまずコーヒー。
腹がすいてもまずはコーヒー。




寝そべって見おろす、畑のパッチワークの中を、トラクターがゆっくり動いています。
ニセコの山には雲がどっさりかぶさって、まるで風邪で寝込んでいるみたい。
誰かのくしゃみが火口壁に反射して、何度もやまびこを返します。
それを笑った誰かの声も、同じようにやまびこを返します。
のどかです。
のどかで、そして平和です。



    ・羊蹄山からのパノラマ

      QuickTimeVR版(高画質) はこちらをクリック  QuicktimeVR版 (高画質)はこちらをクリック(1261KB)
      Flash版(中画質) はこちらをクリック  Flash版 (中画質)はこちらをクリック(1306KB)



ふたたび荷物を担いで、お鉢をめぐります。
羊蹄山のお鉢めぐり




おおぜいの人とすれ違って、ときには立ち止まり、ときには歩きながら、いろいろな話をしました。
ぼくのことを知ってるという方とも出会い、少し照れくさい。
一周した京極ピークのすぐそばでは、30回以上も羊蹄山に登っているという方と話しをしました。


  ここを下るのですか。
  ここは帰りが難儀するんです。
  気をつけてお行きなさい。
  若いからといって、早足で下りてはいけませんよ。
  登りの時よりもたくさん休憩を取って、
  ゆっくり歩くといいです。
  

ここ京極コースと、隣の喜茂別コースは、どちらも単調なので数回しか登っていないとのお話でした。
喜茂別コースはまだいくぶん開放的で、景色も少しは見られるそうです。
たしかに京極コースは、がまん比べというか、自分の心との戦いみたいな要素があるかもしれません。
お礼を言って、そのがまん比べの坂道を、ゆっくりと。


この崩壊地をすぎれば、あとは再び無展望です。
京極コースの崩壊地を下る




行きは背負ってた太陽は、帰りも後ろに回ってるけど、じきに羊蹄山の陰に沈んでしまって、暗い林の斜面を、静かに悪態つきながら下りていきました。ぶつぶつ。


1合目をすぎて、人工林の直線の彼方に、光る畑の黄金色。
林の向こう、黄金色に光る畑

あぁ、やっとだよ、やっと。
これで終わりだ、もうたくさん。

  ---------------------------------------------------------------


ぼくはくたびれました、羊蹄さん。
今回の山旅で、ひとつ分かったことがあるのです。
どれだけツマラないということを知っていたとしても、人は何年も経ってしまうとその記憶をすこしずつ失くしてしまうようです。
ある意味でそれは、まんぷく食堂のカツ丼のようなものかもしれません。


それでもぼくは、登らないことよりも登ることを選びました。
風の吹かない室内で、コンピュータ・スクリーンに映し出される山の描写を目で追うことよりも、自分の目で見て自分の足で感じ自分の言葉で表すことを選びました。
そしてやっぱりぼくは、思った通りの感想を吐くのです。
「こんなツマラん山、もう二度と来るものか」


だけどぼくには、確信があります。
羊蹄さん、ぼくはまた、あなたに登ることになるのだろうなと。
今日と同じように、ぶつぶつ文句を言いながら、登ることになるのだろうなと。


日暮れの羊蹄




ではまた、その日まで。
敬具





登山日:9月中旬
羊蹄山(京極コース)GPSトラック
羊蹄山(京極コース)断面図



投稿者 hamayo : 20:36 | コメント (12) | トラックバック

2010年9月12日

原始が原から富良野岳に行けなかった日



降るのか照るのか、いつになっても気象庁は答えを出すつもりがないようで、前日になっても予報をころころと変えていました。
でも彼らを責める気はありません。
素人のぼくが見ても、この数日間の予報を正確に出すのは難しいだろうなと思うような大気の状態だったので、たとえ「曇り時々晴れ、所によって一時雨」などといった、よく当たる占い師みたいな予報だったとしても、そんなの予報じゃないなどと声を荒げるつもりはなかったのです。


それに結局のところ、当日の予報、つまりその日その山が晴れるか晴れないかなどとは全く別の部分で、ぼくは足をすくわれることになったのですから。


続きを読む・・・




この日布部川上流にある原始が原登山口から富良野岳をめざしたぼくは、三の沢を越えることができず原始が原の直前にて引き返すことになったのです。
本当に原始が原は目と鼻の先でしたが、幅10mほどもない小さな沢は前夜に降った大雨のせいで、見てるだけで船酔いしそうなほどに水面全体が波打っており、到底渡渉などできるものではありませんでした。
高巻きも試みましたがヤブの濃さに戦意喪失、午前中のうちに撤退となった次第です。


この日得たものは、天使の泉というプリティな名前のついた岩清水、ただそれだけです。
しかも岩清水だけに、1リットルのボトルだとうまく汲めないんだこれが。

天使の泉というプリティな名前のついた岩清水



森の向こうに、夏雲を従えた富良野岳。

夏雲を従えた富良野岳



いつかまた機会があればまたチャレンジしたいものですが、聞くところによると大雪山系の中では熊密度はかなり高いエリアだそうです。
熊の姿こそ見ませんでしたが、ただならぬ物音を聞いたのが1回、熊牧場フレグランスな濃ゆいケモノ臭を嗅いだのが3回と、往復6km歩いただけにしてはなかなかの結果に、単独行はちと恐いなと思いました。


ところでこの三の沢付近の地形図、ウォッちずの12500分の1地形図と6000分の1地形図とでは、トレイルが別の場所についていることに気付きました。

原始が原三の沢付近_12500分の1地形図
原始が原三の沢付近_12500分の1地形図




原始が原三の沢付近_6000分の1地形図
原始が原三の沢付近_6000分の1地形図




6000分の1地形図にある方が正しいようですが、12500分の1地形図にあるようなトレイルも、うっすらとは目視できました。
地形図で事前にこのことを知っていなかったら、絶対に気付かないくらいのかぼそいもので、「昔はその場所にトレイルがあった」ものなのか、「地形図にだまされて誤って踏みこんだ跡」なのかは分かりません。


ちなみに今回歩いたのは「原始が原 林間コース」というもので、もうひとつ「滝コース」というものもあるのですが、こちらは8月下旬の大水で橋がことごとく流されたとのことで、現在のところ通行禁止となっています。
観光協会のウェブサイトに載ってました。
今回、そこはきっちり事前にチェックしてたんだけどなぁ。




この日布部川上流にある原始が原登山口から富良野岳をめざしたぼくは、三の沢を越えることができず原始が原の直前にて引き返すことになったのです。
本当に原始が原は目と鼻の先でしたが、幅10mほどもない小さな沢は前夜に降った大雨のせいで、見てるだけで船酔いしそうなほどに水面全体が波打っており、到底渡渉などできるものではありませんでした。
高巻きも試みましたがヤブの濃さに戦意喪失、午前中のうちに撤退となった次第です。


この日得たものは、天使の泉というプリティな名前のついた岩清水、ただそれだけです。
しかも岩清水だけに、1リットルのボトルだとうまく汲めないんだこれが。

天使の泉というプリティな名前のついた岩清水



森の向こうに、夏雲を従えた富良野岳。

夏雲を従えた富良野岳



いつかまた機会があればまたチャレンジしたいものですが、聞くところによると大雪山系の中では熊密度はかなり高いエリアだそうです。
熊の姿こそ見ませんでしたが、ただならぬ物音を聞いたのが1回、熊牧場フレグランスな濃ゆいケモノ臭を嗅いだのが3回と、往復6km歩いただけにしてはなかなかの結果に、単独行はちと恐いなと思いました。


ところでこの三の沢付近の地形図、ウォッちずの12500分の1地形図と6000分の1地形図とでは、トレイルが別の場所についていることに気付きました。

原始が原三の沢付近_12500分の1地形図
原始が原三の沢付近_12500分の1地形図




原始が原三の沢付近_6000分の1地形図
原始が原三の沢付近_6000分の1地形図




6000分の1地形図にある方が正しいようですが、12500分の1地形図にあるようなトレイルも、うっすらとは目視できました。
地形図で事前にこのことを知っていなかったら、絶対に気付かないくらいのかぼそいもので、「昔はその場所にトレイルがあった」ものなのか、「地形図にだまされて誤って踏みこんだ跡」なのかは分かりません。


ちなみに今回歩いたのは「原始が原 林間コース」というもので、もうひとつ「滝コース」というものもあるのですが、こちらは8月下旬の大水で橋がことごとく流されたとのことで、現在のところ通行禁止となっています。
観光協会のウェブサイトに載ってました。
今回、そこはきっちり事前にチェックしてたんだけどなぁ。

投稿者 hamayo : 22:20 | コメント (4) | トラックバック

2010年8月14日

なにも見えないニペソツ山



「よくもこんな急な斜面に、びっしりと高い樹木が森を作れるものだ。」


登山口の車止めから、十六ノ沢の対岸の、これから登っていく尾根を目で追いかけるのは、できることならやめておいた方がいい。
見るのなら下りてきた後だ。
あそこを登るのかと考えるとどうにも気が滅入る。
あそこを降りてきたんだと振り返るのなら充実感も増すというもの。


実際歩いてみればそんなでもないんだろうけど、空との境界線はとても遠く、もしかすると書き割りなんじゃないかって思うくらい、非現実的な距離を感じる。
両目で見ているのに片目で見ているみたいな不思議な立体感は、巨大な人工的構造物を見上げるときのそれと同じ。
踏み潰されそうな恐怖。


今日どこまで歩くかは、まだ決めていない。
ニペソツ山が見える場所で寝たいなとは考えているけど、すでに下山者がいるぐらいの遅い出発で、重たいテン泊装備を背負ってどこまでいけるだろうか。



続きを読む・・・





雨の夏尾根




それでなくても薄暗い森の中が、時折りぐっと暗くなる。
強い雨。
天井高く、何層にも枝を重ねる木々の下を歩いていると、雨に当たることはなく、木立に透けて見える空間に、白い筋が縦に描かれるのを見て、雨が降っていることに気づくだけ。
平地の気温が35度を越そうかという夏の日に、まだ標高の上がらない急登を真昼間にこなすには、悪くない天気だ。


尾根筋を忠実に辿る道は、木の根をつかんで這い上がるような急登で強引に高度を稼ぎつつも、開けた場所では樹海の向こうにいくつもの山並みを眺めることもあり、思いのほか早く登り詰めることができた。




スリリングな岩場




小天狗岳直下の、スリリングな岩場の先にある小さな平坦地には、密にしげった笹藪のなかに、背の高くないトドマツがぽつんぽつん。
遠くを見ると、前天狗の山頂すれすれに、ビデオを早回しするみたいなスピードで、灰色の雲が次々にからみ付いては引き剥がされていく。
分かってはいたけど、風は相当強そうだ。




笹藪、まばらにトドマツ、天狗のコル




下りてくる人に稜線の様子を尋ねると、雨が降っているわけではないが、水気を含んだ猛烈な西風になぶられて、暴風雨と変わらない中を歩いてきたとのこと。
時刻はまだ12時。
ここで今日の行程を終えるのはあまりに早いが、そんな苛烈な場所で夜をすごしたくもなく、かなりの長考の結果、天狗のコルと呼ばれるこの場所に幕を張ることにする。


標高1580m、曇り空。気温は22度。
風はけっこう強いけど、テントの中は暑くもなく寒くもなく。
降りてくる人もいないし、むろん登っていく人ももういなくて、静かな午後の時間。
こんなに時間が余る予定じゃなかったから、本も持ってきておらず、することもなく横になって目をつむり、いつのまにか眠ってしまう。




静かなテン場




二人連れの登山者の足音で目を覚ますと18時。
この時間に下山する彼らは、明るいうちに下まで降りられるだろうか。
お気を付けてと心の中でつぶやいて、後ろ姿を見送ると、たぶんもうこの山には、ぼくひとりだけ。
明日の朝まで、ひとりじめ、ひとりぼっち。


テントの中で粗末な夕食を食べ終えて外に出ると、あたりに立ちこめるガスが、じわじわと領地を広げている。
さっきまで見えていた前天狗や小天狗も、今やすっぽりと靄につつまれて、水平方向の視界は200mほど。
19時をすぎると、灰色一色だった空間が、うすぼんやりと赤の波長の間接照明。
頭上を覆っているガスの上は、きっときれいな夕焼け空なんだ。
もうじきものすごい星空になるんだろうけど、このガスの中じゃどうしようもない。




天狗のコル、夜が更ける




早々と寝袋を広げて目をつむる。
ちっとも眠くない。
昼寝のせい?。
いやそれだけじゃない。
つとめて考えないようにはしていても、どこかにいるだろうヒグマの存在に、びびっている自分。
ここから一番近い人間までの距離よりも、いちばん近くにいるヒグマまでの距離の方が、きっと小さい。
明日朝いちばん最初の登山者が上がってくるまで、あと約10時間。
夜は長い。




/////////////////////////////////////////////////////////////////////////




暑さで目が覚めた。
ザックに付けた温度計は20度。
ひと晩中西風が吹き続けたけど、結局ぼくは寝袋を使わなかった。
上掛けにさえしなかった。
620gの重しを背負ってきたわけだ。




朝からガスだ




真横から太陽が照らしているのが、テントの中からでも分かる、
でもフライをあけて見ると、晴れて青空が見えてるのは東の方角の、仰角10度くらいまでだけで、相変わらず頭上はガスに押さえつけられ風も強く、前天狗も見えない。
まるで士気の上がらない朝。


6時をすぎると次々に登山者がやってきた。
みな口々に、おかしいなぁ下は快晴だったし予報は晴れだったのに、と言う。
でもおかしなことはない。
850hPa風・相当温位予想図とか、そのあたりの天気図を見ていれば、空の具合はなんとなく想像はつく。
暑く湿った空気がぐるりと回って南西から、まるで回廊を通ってくるかのように北海道を狙い撃ちしているのだ。


分からずに山に来る人もいれば、分かっていても山に来てしまうぼくもいる。
分かって来てるんだから、登らないわけにはいかないじゃないか。


カッパと防寒着、約3000kcal分の行動食と水が3リットル。
水は多すぎると思ったけど、万が一晴れた時のことを考えると、この気温ならこれぐらいは必要になるかもしれない。
結局それは、1/3しか仕事をしないことになるのだけれど。




雲の中へと入っていく




前天狗の中ほどまで登ってくると、いよいよ雲のまっただ中へ。
霧に濡れたハイマツや笹が登山道に覆い被さり、上も下もすぐにぐしょ濡れになってしまう。
ふつうならカッパを着るところだけど、暑いのでちょうど良い。
ほかの登山者も考えてることは同じみたいで、だれもカッパを着ようとはしない。


傾斜が少し落ち着いてくると、たぶん前天狗の山頂は近い。
もう何も見えない。
突然現れるトイレブース。
もしも空が晴れてるなら、ここからニペソツ山の鋭く猛々しい山容が見えるだろうに。


ぼくは普段山に登るとき、ザックをおろして休憩を取ることはほとんどしない。
ザックをおろすときはザックの中身に用があるときだけだ。
でもこのときは違った。
ちょっと待ってくれ。
考える時間をくれないか。
ここから先に進むのか、引き返すのか。




行くか戻るか




なぜなら、ここから下る道に一歩足を踏み入れた瞬間に、今までとは比べものにならない烈風を全身で浴びて、足が前に出なかったのだ。
高層天気図に見えた西風の奔流がそこに流れていた。
緩急や強弱なんてない。
その風は、休むことなく全力で吹き続けている。


後続の登山者がやってきた。
「うわっ、今日は無理だぞ・・・」
思わずこぼれた彼の言葉に、腹は決まった。
ぼくは天の邪鬼なのだ。


不安になるくらい下って、そして長く急な登りが始まった。
道はだんだん険しくなり、左側が深く鋭くえぐれている場所が続く。




ニペソツ東壁に咲く花




風の音に混じってナキウサギの声。
でも出てくるのはシマリスばかり。


雲はさらに黒ずんで、ガスはいっそう分厚くなる。
もうどこを歩いてるのか全然分からない。
一歩いっぽ、登っていくだけだ。


やがて斜度がなくなり、道は鋭角に左ターン。
風向きが変わる。
地形図を見る。
頂上は近い。


降りてくる人とすれ違う。
「あと5分だよ」
「ありがとう」


頭上から聞こえる話し声。
3人、いや4人ほどかな。
姿は見えなくても、まもなく山頂だ。
ぐるりと回っててっぺんへ。




なにも見えないけど、ニペソツ山のてっぺん




「やはりなにも見えませんね」
「ずっと見えませんでしたよ」
「なんの修行でしょうかね」
「いやはや、まいりました」


みんな残念がってる口ぶりだけど、顔を見れば晴れ晴れとした表情。
それぞれは単独行でも、同じ山を同じ時間に、抜きつ抜かれつともに歩いた仲間だというささやかな連帯感が、山頂を暖めている。


「私は下りは遅いので先におりますよ」
「まだ折り返し地点ですから」
「ではお達者で」
「またどこかの山で」


それぞれ単独行者に戻って、ばらばらに山を下りていく。




天狗岳で道に迷う




天狗岳まで下りてきて、道に迷う。
いくつかの小さなピーク、小さな尾根、その間を埋め尽くすゴロゴロの岩塊。
そこを縫うようにコースはある、はず。
家で地形図を見ているときから、ここは危険だなと思った場所で、思ったとおり迷う。


行きしなは、かろうじて次のピンクテープが見えたから進めたけど、帰りはもう次のテープなど全く見えない。
視界50m以下では地図もコンパスも意味をなさない。
迷ってることは自覚してるので、GPSを使わずにコースに復帰できるか自分の感を試してみたら、予想もしていないピークに立ってしまい狼狽する。
あきらめてUターン。


前天狗からテン場に下りていく途中で、何時間かぶりに雲の中から脱出した。
やはり下界は晴れていた。
雲底も朝より上がっている。
やっとまともな世界に帰ってきた気がする。




ひさしぶりに雲の下へ




テントを片付けて、再び重たい荷を背負って歩き出す。
残っていた水のうち2リットルを捨ててもなお、重たいものは重たい。
下るにしたがってぐんぐん気温が上がる。
最後になって陽射しまで出てきた。




オッパイ山(ピリベツ岳と西クマネシリ岳)が見えてきた




遠くに聞こえていた沢の音が、だんだんと大きくなってくる。
山旅が終わりつつある証しだな。
遠い昔に歩いた山に、同じようなところがあったっけ。
椹島へと下る大倉尾根の赤石岳。


谷幅が狭くなり、周りを山に囲まれて日陰になると、ゴールは近い。
最後の丸木橋を渡って、荷物を下ろし川に飛び込む。
ドロドロの登山靴も、ゲーターも、パンツも、顔も頭も、みんなじゃぶじゃぶ洗ってしまえ。




丸木橋を渡ったら終了




幌加温泉へ。
本当は4時で終わりなんだけど誰もいないからいいよ、という主人に驚いた。
まだ2時すぎぐらいだと思っていたのに。
それくらい暑かったし、それくらい強い陽射しだったのだ。
どうりで北海道の今年いちばん暑かった日なわけだ。




幌加温泉




帰りの三国峠の途中からニペソツ山を見上げるけど、やっぱりなにも見えない。
今ここには青空しかないのに。
夏の思い出は雲の中。
いつかまた来ればいい。



登山日:8月上旬
ニペソツ山(十六ノ沢コース)GPSトラック
ニペソツ山(十六ノ沢コース)断面図







雨の夏尾根




それでなくても薄暗い森の中が、時折りぐっと暗くなる。
強い雨。
天井高く、何層にも枝を重ねる木々の下を歩いていると、雨に当たることはなく、木立に透けて見える空間に、白い筋が縦に描かれるのを見て、雨が降っていることに気づくだけ。
平地の気温が35度を越そうかという夏の日に、まだ標高の上がらない急登を真昼間にこなすには、悪くない天気だ。


尾根筋を忠実に辿る道は、木の根をつかんで這い上がるような急登で強引に高度を稼ぎつつも、開けた場所では樹海の向こうにいくつもの山並みを眺めることもあり、思いのほか早く登り詰めることができた。




スリリングな岩場




小天狗岳直下の、スリリングな岩場の先にある小さな平坦地には、密にしげった笹藪のなかに、背の高くないトドマツがぽつんぽつん。
遠くを見ると、前天狗の山頂すれすれに、ビデオを早回しするみたいなスピードで、灰色の雲が次々にからみ付いては引き剥がされていく。
分かってはいたけど、風は相当強そうだ。




笹藪、まばらにトドマツ、天狗のコル




下りてくる人に稜線の様子を尋ねると、雨が降っているわけではないが、水気を含んだ猛烈な西風になぶられて、暴風雨と変わらない中を歩いてきたとのこと。
時刻はまだ12時。
ここで今日の行程を終えるのはあまりに早いが、そんな苛烈な場所で夜をすごしたくもなく、かなりの長考の結果、天狗のコルと呼ばれるこの場所に幕を張ることにする。


標高1580m、曇り空。気温は22度。
風はけっこう強いけど、テントの中は暑くもなく寒くもなく。
降りてくる人もいないし、むろん登っていく人ももういなくて、静かな午後の時間。
こんなに時間が余る予定じゃなかったから、本も持ってきておらず、することもなく横になって目をつむり、いつのまにか眠ってしまう。




静かなテン場




二人連れの登山者の足音で目を覚ますと18時。
この時間に下山する彼らは、明るいうちに下まで降りられるだろうか。
お気を付けてと心の中でつぶやいて、後ろ姿を見送ると、たぶんもうこの山には、ぼくひとりだけ。
明日の朝まで、ひとりじめ、ひとりぼっち。


テントの中で粗末な夕食を食べ終えて外に出ると、あたりに立ちこめるガスが、じわじわと領地を広げている。
さっきまで見えていた前天狗や小天狗も、今やすっぽりと靄につつまれて、水平方向の視界は200mほど。
19時をすぎると、灰色一色だった空間が、うすぼんやりと赤の波長の間接照明。
頭上を覆っているガスの上は、きっときれいな夕焼け空なんだ。
もうじきものすごい星空になるんだろうけど、このガスの中じゃどうしようもない。




天狗のコル、夜が更ける




早々と寝袋を広げて目をつむる。
ちっとも眠くない。
昼寝のせい?。
いやそれだけじゃない。
つとめて考えないようにはしていても、どこかにいるだろうヒグマの存在に、びびっている自分。
ここから一番近い人間までの距離よりも、いちばん近くにいるヒグマまでの距離の方が、きっと小さい。
明日朝いちばん最初の登山者が上がってくるまで、あと約10時間。
夜は長い。




/////////////////////////////////////////////////////////////////////////




暑さで目が覚めた。
ザックに付けた温度計は20度。
ひと晩中西風が吹き続けたけど、結局ぼくは寝袋を使わなかった。
上掛けにさえしなかった。
620gの重しを背負ってきたわけだ。




朝からガスだ




真横から太陽が照らしているのが、テントの中からでも分かる、
でもフライをあけて見ると、晴れて青空が見えてるのは東の方角の、仰角10度くらいまでだけで、相変わらず頭上はガスに押さえつけられ風も強く、前天狗も見えない。
まるで士気の上がらない朝。


6時をすぎると次々に登山者がやってきた。
みな口々に、おかしいなぁ下は快晴だったし予報は晴れだったのに、と言う。
でもおかしなことはない。
850hPa風・相当温位予想図とか、そのあたりの天気図を見ていれば、空の具合はなんとなく想像はつく。
暑く湿った空気がぐるりと回って南西から、まるで回廊を通ってくるかのように北海道を狙い撃ちしているのだ。


分からずに山に来る人もいれば、分かっていても山に来てしまうぼくもいる。
分かって来てるんだから、登らないわけにはいかないじゃないか。


カッパと防寒着、約3000kcal分の行動食と水が3リットル。
水は多すぎると思ったけど、万が一晴れた時のことを考えると、この気温ならこれぐらいは必要になるかもしれない。
結局それは、1/3しか仕事をしないことになるのだけれど。




雲の中へと入っていく




前天狗の中ほどまで登ってくると、いよいよ雲のまっただ中へ。
霧に濡れたハイマツや笹が登山道に覆い被さり、上も下もすぐにぐしょ濡れになってしまう。
ふつうならカッパを着るところだけど、暑いのでちょうど良い。
ほかの登山者も考えてることは同じみたいで、だれもカッパを着ようとはしない。


傾斜が少し落ち着いてくると、たぶん前天狗の山頂は近い。
もう何も見えない。
突然現れるトイレブース。
もしも空が晴れてるなら、ここからニペソツ山の鋭く猛々しい山容が見えるだろうに。


ぼくは普段山に登るとき、ザックをおろして休憩を取ることはほとんどしない。
ザックをおろすときはザックの中身に用があるときだけだ。
でもこのときは違った。
ちょっと待ってくれ。
考える時間をくれないか。
ここから先に進むのか、引き返すのか。




行くか戻るか




なぜなら、ここから下る道に一歩足を踏み入れた瞬間に、今までとは比べものにならない烈風を全身で浴びて、足が前に出なかったのだ。
高層天気図に見えた西風の奔流がそこに流れていた。
緩急や強弱なんてない。
その風は、休むことなく全力で吹き続けている。


後続の登山者がやってきた。
「うわっ、今日は無理だぞ・・・」
思わずこぼれた彼の言葉に、腹は決まった。
ぼくは天の邪鬼なのだ。


不安になるくらい下って、そして長く急な登りが始まった。
道はだんだん険しくなり、左側が深く鋭くえぐれている場所が続く。




ニペソツ東壁に咲く花




風の音に混じってナキウサギの声。
でも出てくるのはシマリスばかり。


雲はさらに黒ずんで、ガスはいっそう分厚くなる。
もうどこを歩いてるのか全然分からない。
一歩いっぽ、登っていくだけだ。


やがて斜度がなくなり、道は鋭角に左ターン。
風向きが変わる。
地形図を見る。
頂上は近い。


降りてくる人とすれ違う。
「あと5分だよ」
「ありがとう」


頭上から聞こえる話し声。
3人、いや4人ほどかな。
姿は見えなくても、まもなく山頂だ。
ぐるりと回っててっぺんへ。




なにも見えないけど、ニペソツ山のてっぺん




「やはりなにも見えませんね」
「ずっと見えませんでしたよ」
「なんの修行でしょうかね」
「いやはや、まいりました」


みんな残念がってる口ぶりだけど、顔を見れば晴れ晴れとした表情。
それぞれは単独行でも、同じ山を同じ時間に、抜きつ抜かれつともに歩いた仲間だというささやかな連帯感が、山頂を暖めている。


「私は下りは遅いので先におりますよ」
「まだ折り返し地点ですから」
「ではお達者で」
「またどこかの山で」


それぞれ単独行者に戻って、ばらばらに山を下りていく。




天狗岳で道に迷う




天狗岳まで下りてきて、道に迷う。
いくつかの小さなピーク、小さな尾根、その間を埋め尽くすゴロゴロの岩塊。
そこを縫うようにコースはある、はず。
家で地形図を見ているときから、ここは危険だなと思った場所で、思ったとおり迷う。


行きしなは、かろうじて次のピンクテープが見えたから進めたけど、帰りはもう次のテープなど全く見えない。
視界50m以下では地図もコンパスも意味をなさない。
迷ってることは自覚してるので、GPSを使わずにコースに復帰できるか自分の感を試してみたら、予想もしていないピークに立ってしまい狼狽する。
あきらめてUターン。


前天狗からテン場に下りていく途中で、何時間かぶりに雲の中から脱出した。
やはり下界は晴れていた。
雲底も朝より上がっている。
やっとまともな世界に帰ってきた気がする。




ひさしぶりに雲の下へ




テントを片付けて、再び重たい荷を背負って歩き出す。
残っていた水のうち2リットルを捨ててもなお、重たいものは重たい。
下るにしたがってぐんぐん気温が上がる。
最後になって陽射しまで出てきた。




オッパイ山(ピリベツ岳と西クマネシリ岳)が見えてきた




遠くに聞こえていた沢の音が、だんだんと大きくなってくる。
山旅が終わりつつある証しだな。
遠い昔に歩いた山に、同じようなところがあったっけ。
椹島へと下る大倉尾根の赤石岳。


谷幅が狭くなり、周りを山に囲まれて日陰になると、ゴールは近い。
最後の丸木橋を渡って、荷物を下ろし川に飛び込む。
ドロドロの登山靴も、ゲーターも、パンツも、顔も頭も、みんなじゃぶじゃぶ洗ってしまえ。




丸木橋を渡ったら終了




幌加温泉へ。
本当は4時で終わりなんだけど誰もいないからいいよ、という主人に驚いた。
まだ2時すぎぐらいだと思っていたのに。
それくらい暑かったし、それくらい強い陽射しだったのだ。
どうりで北海道の今年いちばん暑かった日なわけだ。




幌加温泉




帰りの三国峠の途中からニペソツ山を見上げるけど、やっぱりなにも見えない。
今ここには青空しかないのに。
夏の思い出は雲の中。
いつかまた来ればいい。



登山日:8月上旬
ニペソツ山(十六ノ沢コース)GPSトラック
ニペソツ山(十六ノ沢コース)断面図



投稿者 hamayo : 19:00 | コメント (9) | トラックバック

2010年6月20日

山で一泊、上ホロから十勝岳(2日目)



午前3時。
青い朝。
あたりには沈黙がみなぎっていました。
薄明の始まった空の下で、山々はゆうべとまた違う表情をしています。


続きを読む・・・




稜線を北へ歩いていくと、ちょうど上ホロカメットク山の頂に、今日の最初の日の光があたりはじめました。
上ホロカメットク山のあたる、今日最初の光



じきに太陽はくまなく山々を照らし、富良野岳もお目覚めです。
光は富良野岳にも届きました



美瑛岳方面に縦走する登山者たちを見送ったら、テントに戻って二度寝します。
なんせまだ4時すぎですから。
グゥグゥ。


8時半になって、ようやく十勝岳へ向けて出発。
荷物はあらかたテントに置いて、身軽な体で。
荷物はテントに置いて、十勝岳へ




今日の十勝岳は、新得側からの風がとても強く、細尾根の通過ではなんども恐い思いをしました。
東風が強い細尾根を慎重に

最後はやはり、スコリアの急な斜面を、風の音だけを聞きながら登り切りました。


先週来たばっかりなのに。
先週きたばっかりの十勝岳山頂にて

真冬にバスを待つ老人のように見えるのは、たぶん強風のせいです。たぶん。


とにかく風が強いので、一目散に下山。
振り返ると、今日も十勝岳は黒々としていました。
今日も十勝岳は黒かった




途中に見える、大砲岩にはX印。
大砲岩にはX印




20年前の秋、初雪が降る中ここからOP尾根を下り、三段山経由で下山したことがあります。
当時は立ち入り禁止じゃなかったように思うけど、岩場でさんざんな目にあったことだけははっきりと覚えています。
いわゆるバリエーションルートですが、もし機会があるなら、いつかまた、今度はこの尾根を登ってみたいな。


正午前にテントに戻り、昼ご飯に残しておいた富良野マルシェ・サボールのバカでかいパンを頬張ったら、一夜の宿を片付けて帰り支度。
名残惜しいよ。


巻き道は通らず、カミホロカメットク山の山頂へダイレクトに。
帰りは巻き道を通らず、上ホロカメットク山へダイレクトに登る




遠目にはひどく荒々しく見えるこの山ですが、花のシーズンの先陣を切って、初夏の岩礫地をいろどる3姉妹が咲いていました。


イワウメ
イワウメ


ミネズオウ
ミネズオウ


コメバツガザクラ
コメバツガザクラ



D尾根の雪稜を下り始めるとこの風景ともお別れ。
D尾根の雪稜から山々を眺める

次はいつ来られるかなー。


階段地獄は、もちろんグリセードで。
ピッケルなしのグリセードはスクワットそのもので、太腿がパンパン。
階段地獄は雪ノ下



化物岩を回りこんで、急なトラバースを越えてしまえば、もう難所はありません。
30度の気温と雪の照り返しに目がくらむ中、帰り道とぼとぼ。
やがて凌雲閣が見えてきて、今回の山旅は無事終わりました。


山開きの前にしか見られない風景、見ることができたんだろうか。
目に見える物事だけでは説明が付かない何かって、なんだったんだろう。


少しだけ分かったことがあって、それは、夏至ってやつが大きく関わっているんじゃないのかな、ってことです。
夏至のころ、黄経90度を境として、太陽に現れる変化。
これから衰えていく光の中で見る風景と、成長を続ける光の中で見る風景が、一緒のわけがないじゃないか、なんてね。


たぶん答えは、何年も何十年も、繰りかえし山を歩き続けていれば、そのずっと後に分かるのかも。
山の楽しみは尽きません。


おしまい。




稜線を北へ歩いていくと、ちょうど上ホロカメットク山の頂に、今日の最初の日の光があたりはじめました。
上ホロカメットク山のあたる、今日最初の光



じきに太陽はくまなく山々を照らし、富良野岳もお目覚めです。
光は富良野岳にも届きました



美瑛岳方面に縦走する登山者たちを見送ったら、テントに戻って二度寝します。
なんせまだ4時すぎですから。
グゥグゥ。


8時半になって、ようやく十勝岳へ向けて出発。
荷物はあらかたテントに置いて、身軽な体で。
荷物はテントに置いて、十勝岳へ




今日の十勝岳は、新得側からの風がとても強く、細尾根の通過ではなんども恐い思いをしました。
東風が強い細尾根を慎重に

最後はやはり、スコリアの急な斜面を、風の音だけを聞きながら登り切りました。


先週来たばっかりなのに。
先週きたばっかりの十勝岳山頂にて

真冬にバスを待つ老人のように見えるのは、たぶん強風のせいです。たぶん。


とにかく風が強いので、一目散に下山。
振り返ると、今日も十勝岳は黒々としていました。
今日も十勝岳は黒かった




途中に見える、大砲岩にはX印。
大砲岩にはX印




20年前の秋、初雪が降る中ここからOP尾根を下り、三段山経由で下山したことがあります。
当時は立ち入り禁止じゃなかったように思うけど、岩場でさんざんな目にあったことだけははっきりと覚えています。
いわゆるバリエーションルートですが、もし機会があるなら、いつかまた、今度はこの尾根を登ってみたいな。


正午前にテントに戻り、昼ご飯に残しておいた富良野マルシェ・サボールのバカでかいパンを頬張ったら、一夜の宿を片付けて帰り支度。
名残惜しいよ。


巻き道は通らず、カミホロカメットク山の山頂へダイレクトに。
帰りは巻き道を通らず、上ホロカメットク山へダイレクトに登る




遠目にはひどく荒々しく見えるこの山ですが、花のシーズンの先陣を切って、初夏の岩礫地をいろどる3姉妹が咲いていました。


イワウメ
イワウメ


ミネズオウ
ミネズオウ


コメバツガザクラ
コメバツガザクラ



D尾根の雪稜を下り始めるとこの風景ともお別れ。
D尾根の雪稜から山々を眺める

次はいつ来られるかなー。


階段地獄は、もちろんグリセードで。
ピッケルなしのグリセードはスクワットそのもので、太腿がパンパン。
階段地獄は雪ノ下



化物岩を回りこんで、急なトラバースを越えてしまえば、もう難所はありません。
30度の気温と雪の照り返しに目がくらむ中、帰り道とぼとぼ。
やがて凌雲閣が見えてきて、今回の山旅は無事終わりました。


山開きの前にしか見られない風景、見ることができたんだろうか。
目に見える物事だけでは説明が付かない何かって、なんだったんだろう。


少しだけ分かったことがあって、それは、夏至ってやつが大きく関わっているんじゃないのかな、ってことです。
夏至のころ、黄経90度を境として、太陽に現れる変化。
これから衰えていく光の中で見る風景と、成長を続ける光の中で見る風景が、一緒のわけがないじゃないか、なんてね。


たぶん答えは、何年も何十年も、繰りかえし山を歩き続けていれば、そのずっと後に分かるのかも。
山の楽しみは尽きません。


おしまい。

投稿者 hamayo : 07:28 | コメント (4) | トラックバック

2010年6月18日

山で一泊、上ホロから十勝岳(1日目)



山開きを向かえた後では、もう見ることができない風景というものが、たしかにあると思うのです。


残雪が豊富だとか、この時期にだけ花を咲かす高山植物などといった、目に見えるものごともそのひとつだけど、それだけでは説明が付かない何かが、特別な風景を見せてくれるんじゃないかと思うのです。


たとえばそれは、まだ人にかき回されていない、みずみずしい山の空気かもしれません。
たとえばそれは、山々が長い眠りから目ざめる直前の、無呼吸的な静寂かもしれません。


そこで見られるものは、きわめて局所的で、限定的な風景といえるでしょう。
それを確かめるために、またしてもこの界隈にやってきてしまいました。


温泉の人曰く、「雪がありすぎて山開きに間に合うかな。」
ならば行くしかあるまい。
たぶん今年は、これが最後のチャンスです。


続きを読む・・・




駐車場を出て、コンクリートの敷かれた硬い坂道を歩いていくと、数分も立たぬうちに道は雪に埋もれてしまいました。
ほんの数メートルほどは、いろいろな大きさのいろいろな形をした足あとがいくつも交錯していましたが、じきにそれらは来た方向へと戻り、一本の確かな歩幅の踏み跡だけが先へと続いていました。

山に登るつもりのない一般の観光客は、ここで引き返すことになるでしょう。


この1つめの関を越えて奥へ進むと、岩と雪の力強い峰々が出迎えてくれます。
岩と雪の力強い峰々がお出迎え



雪を跨いで対岸の斜面へと渡り、しばらくは土の地面とハイマツの香り。
楽できると思ったのもつかの間、あらわれた雪の斜面は、イヤらしい硬さとイヤらしい斜度。


イヤらしい硬さとイヤらしい斜度、第2の関所。


硬い雪の斜面をトラバースすることに不安を感じる人は、ここより先へ進むことを諦めることになるでしょう。


化物岩の圧力を感じながら、雪と土を交互に踏んで岩を回りこみ、少し高度を下げると、雪に埋もれた夏道の分岐標識を見つけます。
分岐なのに、雪上の踏み跡はひとつの方向にしかなく、おそらくそれは富良野岳へ向かった登山者のもの。

雪に埋もれた夏道の分岐標識


地図読みに自信がない人は、ここで大事な決断をせまられることになるでしょう。


コンパスを切って、右に離れていく踏み跡に惑わされないように雪渓を登っていくと、前方の尾根にあの地獄階段が目視できました。
ここで小休止。


三峰山と富良野岳にかこまれて、あたりはすっかり山の中。
大きな雪渓、三峰山と富良野岳




小さく気合いを入れて階段地獄に挑むも、半分くらいはまだ雪の下で、あっという間に、拍子抜けするくらい短時間で登り切って、D尾根に出てしまいました。


先週登った十勝岳とご対面。
D尾根にて、十勝岳とご対面


ここまでくれば、左右から迫りくる岩の展望をほしいままに、迫力あるD尾根を一気に登り切って上富良野岳へ。


ここから小屋までルートは二つ。
上ホロカメットク山を越えるルートは、北側の下りに雪が着いてると危ないと思い、南東の峠を跨ぐ巻き道ルートを取るも、予想に反して100%雪に覆われていました。
しかも新得側の斜面に出ると、ところどころが氷化して、雪と氷の縞模様。


小屋は見えてるのに足が出ず。
小屋は見えてるのに足が出ず


足裏センサーの感度を最大にして、雪の柔らかい部分を選び、やっとの思いで避難小屋までたどり着くと、カミホロ山頂コースを進んだ二人組が先に着いていて、一等地にはすでにテントが張られていました。


数少ない平坦地にHEX3を建てて、ようやく人心地。
テントを立てて人心地



16時。
しばしの休息。

17時30分。
2年前に消費期限の切れたSolleoneの夕食。

18時30分。
一日の最後を見届けるため、主稜線を北に。

18時45分。
OP尾根の手前、小ピークから西に延びる支尾根へ。


雪と戯れるスノーボーダーが、夕日の色に染まっていきます。
夕日に染まるスノーボーダー



そして19時。
太陽は目に見える速さで地平線に近づいていきます。
空が、岩が、雪が、みるみる色を変えていきます。


夕暮れ時の、ほんのわずかな間だけあらわれる、魔法のような時間のはじまりです。



    ・夕暮れの十勝連峰のパノラマ

      QuickTimeVR版(高画質) はこちらをクリック  QuicktimeVR版 (高画質)はこちらをクリック(1550KB)
      Flash版(中画質) はこちらをクリック  Flash版 (中画質)はこちらをクリック(1540KB)



人はよく、カメラを持たないほうがしっかりと風景を覚えていられるというけれど、この圧倒的な風景や色を、目や心に焼き付けることなんてできるわけがありません。
そしてカメラだって、このうねるようなマゼンタのトーンを、あまさず写真に表現することは、できないのです。


この日、この時間、この場所にいられたこと。
それがすべてです。


明朝、北東の空が白み始めるまで6時間と少し。
北国の夏の夜は、とても短いのです。




駐車場を出て、コンクリートの敷かれた硬い坂道を歩いていくと、数分も立たぬうちに道は雪に埋もれてしまいました。
ほんの数メートルほどは、いろいろな大きさのいろいろな形をした足あとがいくつも交錯していましたが、じきにそれらは来た方向へと戻り、一本の確かな歩幅の踏み跡だけが先へと続いていました。

山に登るつもりのない一般の観光客は、ここで引き返すことになるでしょう。


この1つめの関を越えて奥へ進むと、岩と雪の力強い峰々が出迎えてくれます。
岩と雪の力強い峰々がお出迎え



雪を跨いで対岸の斜面へと渡り、しばらくは土の地面とハイマツの香り。
楽できると思ったのもつかの間、あらわれた雪の斜面は、イヤらしい硬さとイヤらしい斜度。


イヤらしい硬さとイヤらしい斜度、第2の関所。


硬い雪の斜面をトラバースすることに不安を感じる人は、ここより先へ進むことを諦めることになるでしょう。


化物岩の圧力を感じながら、雪と土を交互に踏んで岩を回りこみ、少し高度を下げると、雪に埋もれた夏道の分岐標識を見つけます。
分岐なのに、雪上の踏み跡はひとつの方向にしかなく、おそらくそれは富良野岳へ向かった登山者のもの。

雪に埋もれた夏道の分岐標識


地図読みに自信がない人は、ここで大事な決断をせまられることになるでしょう。


コンパスを切って、右に離れていく踏み跡に惑わされないように雪渓を登っていくと、前方の尾根にあの地獄階段が目視できました。
ここで小休止。


三峰山と富良野岳にかこまれて、あたりはすっかり山の中。
大きな雪渓、三峰山と富良野岳




小さく気合いを入れて階段地獄に挑むも、半分くらいはまだ雪の下で、あっという間に、拍子抜けするくらい短時間で登り切って、D尾根に出てしまいました。


先週登った十勝岳とご対面。
D尾根にて、十勝岳とご対面


ここまでくれば、左右から迫りくる岩の展望をほしいままに、迫力あるD尾根を一気に登り切って上富良野岳へ。


ここから小屋までルートは二つ。
上ホロカメットク山を越えるルートは、北側の下りに雪が着いてると危ないと思い、南東の峠を跨ぐ巻き道ルートを取るも、予想に反して100%雪に覆われていました。
しかも新得側の斜面に出ると、ところどころが氷化して、雪と氷の縞模様。


小屋は見えてるのに足が出ず。
小屋は見えてるのに足が出ず


足裏センサーの感度を最大にして、雪の柔らかい部分を選び、やっとの思いで避難小屋までたどり着くと、カミホロ山頂コースを進んだ二人組が先に着いていて、一等地にはすでにテントが張られていました。


数少ない平坦地にHEX3を建てて、ようやく人心地。
テントを立てて人心地



16時。
しばしの休息。

17時30分。
2年前に消費期限の切れたSolleoneの夕食。

18時30分。
一日の最後を見届けるため、主稜線を北に。

18時45分。
OP尾根の手前、小ピークから西に延びる支尾根へ。


雪と戯れるスノーボーダーが、夕日の色に染まっていきます。
夕日に染まるスノーボーダー



そして19時。
太陽は目に見える速さで地平線に近づいていきます。
空が、岩が、雪が、みるみる色を変えていきます。


夕暮れ時の、ほんのわずかな間だけあらわれる、魔法のような時間のはじまりです。



    ・夕暮れの十勝連峰のパノラマ

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人はよく、カメラを持たないほうがしっかりと風景を覚えていられるというけれど、この圧倒的な風景や色を、目や心に焼き付けることなんてできるわけがありません。
そしてカメラだって、このうねるようなマゼンタのトーンを、あまさず写真に表現することは、できないのです。


この日、この時間、この場所にいられたこと。
それがすべてです。


明朝、北東の空が白み始めるまで6時間と少し。
北国の夏の夜は、とても短いのです。

投稿者 hamayo : 07:23 | コメント (4) | トラックバック

2010年6月16日

山で寝る



性懲りもなく、また山へ行ってしまいました。


静かに沈む太陽に
静かに沈む太陽に



青い夜明け
青い夜明け



夏道が、まだ雪の下に隠れている山には、いろいろなプロフェッショナルが歩いていました。
山開きの前の、大きな山は、とても新鮮で、刺激的です。


詳細は後日


投稿者 hamayo : 07:35 | トラックバック

2010年6月10日

残雪の十勝岳でズルズル



快晴、無風、気温9度の望岳台。
快晴、無風、気温9度の望岳台。"




一見、非の打ちどころのない登山日和に見えるこの写真には、今日の登山のカギを握るあるものが写っています。
富良野の町からも、すでに'そいつ'は見えていて、その時からずっと思っていました。

「天気が良すぎるのも考えものだな」

と。


多すぎる残雪や、アリ地獄のような砂礫に苦戦しつつも、ぼくは山に登り、ちゃんと帰って来ました。
ですが、きっちり'そいつ'にはヤラレたのです。
ちゃんと予見してたのにね。


続きを読む・・・




始めは緩やかだったガレ斜面は、こっそりと勾配を強めてきます。
おや?少しきつくなってきたかな、と足が感じるころ、遠くぽつんと見えていた避難小屋がすぐ目の前の、ここは雲ノ平分岐。
遠くぽつんと見えていた避難小屋がすぐ目の前の、ここは雲ノ平分岐。




ここらあたりまでは、礫地を歩こうが雪渓を歩こうが、お気に召すまま。


しかし小屋から上は、観念するほかありません。
避難小屋から上は雪の道




まだ朝のうちは、雪が柔らかいのは表面だけで、キックステップもフラットフッティングも利きが悪く、ズルリとすべる靴底に悪態をつき、さっきまでは先行者の遅すぎるペースをいぶかしんでいた自分も、今は同じ静止画のような歩みです。


雪が切れたところから夏尾根にスイッチ。


真っ黒なスコリアの斜面を這い上がっていくと、生命感のまったくない、白と黒の光景に、しばし言葉を失います。
スコリアの斜面から、白と黒の世界



登りつめた先の安らかな平坦地は、スリバチ火口の西の端です。
スリバチ火口の西の端から見る美瑛岳


デカすぎる山体、鋭い山頂、地平線に溶け込むような裾野、そして暴力的な爆裂火口をチラリと見せてくれるこの地点は、美瑛岳の美しさが最もきわだつ場所だと思います。


ふたたび雪から離れ、まっ平らな砂礫の原っぱを抜けます。
いよいよ本峰へ。


そそりたつ雪の斜面へ向かう先行者は、あたかも巨大な波に挑むサーファーのよう。
巨大な波に挑むサーファーのよう




でもよく観察すれば、踏み跡は下りてくる人が付けたもの。
稜線に出た二人組みの苦戦ぶりを、ハラハラドキドキで見ていました。


ならばと探した緩い斜面も、頂稜直下ではかなりの傾斜。
ならばと探した緩い斜面も、頂稜直下ではかなりの傾斜。




見えない前爪で蹴りこむけれど、滑ったら止まらないだろうな。
帰りもかなり心配だし。


そして頂上。
オーバー2000mの、決して真夏には見ることができない、残雪の山々。


    ・十勝岳からの、残雪の山々のパノラマ

      QuickTimeVR版(高画質) はこちらをクリック  QuicktimeVR版 (高画質)はこちらをクリック(2060KB)
      Flash版(中画質) はこちらをクリック  Flash版 (中画質)はこちらをクリック(2008KB)


昼ごはんは、ダイモスおにぎり。
ダイモス




天気予報では終日晴れだったけど、午後には小さな気圧の谷がペロリとなめていくのは分かってたから、ちょっとばかし寝ころんだら早めに下山します。


みんなが下りの踏み跡にダマされて、苦戦して登ってた雪のビッグウェーブへ。
面白いようにグリセードが走って、少しはテレマークを持ってこなかった穴埋めになったかな。


谷を下りきって、ぐるりとあたりを見回すと、まるで氷河トレッキング。
まるで氷河トレッキング



そうやってはしゃいでいると、忘れていた'あいつ'がやってきました。
目に見えないし、音も立てない。


唐突に、冷たいバターナイフを鼻の穴につっこまれ、グリグリされるような感触。
でもその瞬間に、何が起こったかは理解できました。
濃度の高い硫化水素を鼻から吸い込んで、粘膜が侵されたのです。


富良野から十勝岳を見上げた時、噴煙がほとんどまっすぐ上がっていくのが見えてました。
そしてちょうどグラウンド火口のあたり一帯だけが、煙っていたのです。
風が吹いてくれればいいな、と思いました。
なぜならこんな穏やかな日には、空気よりも比重の大きい硫化水素が、ちょっとした窪地に溜まりつづけ、濃度が高くなっている可能性があるからです。


幸いにして、ひどい障害を残すほどの濃度ではなかったようですが、この直後から、さらさらの鼻水が泉のごとく湧き出して、息をするよりも鼻を啜ってる時間の方が長いというありさまで、望岳台に降り着くまでのことは、あまり記憶にありません。


近くのスリバチ火口にはシュプールが残っていて、登りのときは羨ましい~って見てたけど、たとえ今は噴火口がなくても、ああいった窪地は危ないかもしれません。


そんでもって、踏み抜きにも、ご用心ご用心。
雪の踏み抜きにもご用心






始めは緩やかだったガレ斜面は、こっそりと勾配を強めてきます。
おや?少しきつくなってきたかな、と足が感じるころ、遠くぽつんと見えていた避難小屋がすぐ目の前の、ここは雲ノ平分岐。
遠くぽつんと見えていた避難小屋がすぐ目の前の、ここは雲ノ平分岐。




ここらあたりまでは、礫地を歩こうが雪渓を歩こうが、お気に召すまま。


しかし小屋から上は、観念するほかありません。
避難小屋から上は雪の道




まだ朝のうちは、雪が柔らかいのは表面だけで、キックステップもフラットフッティングも利きが悪く、ズルリとすべる靴底に悪態をつき、さっきまでは先行者の遅すぎるペースをいぶかしんでいた自分も、今は同じ静止画のような歩みです。


雪が切れたところから夏尾根にスイッチ。


真っ黒なスコリアの斜面を這い上がっていくと、生命感のまったくない、白と黒の光景に、しばし言葉を失います。
スコリアの斜面から、白と黒の世界



登りつめた先の安らかな平坦地は、スリバチ火口の西の端です。
スリバチ火口の西の端から見る美瑛岳


デカすぎる山体、鋭い山頂、地平線に溶け込むような裾野、そして暴力的な爆裂火口をチラリと見せてくれるこの地点は、美瑛岳の美しさが最もきわだつ場所だと思います。


ふたたび雪から離れ、まっ平らな砂礫の原っぱを抜けます。
いよいよ本峰へ。


そそりたつ雪の斜面へ向かう先行者は、あたかも巨大な波に挑むサーファーのよう。
巨大な波に挑むサーファーのよう




でもよく観察すれば、踏み跡は下りてくる人が付けたもの。
稜線に出た二人組みの苦戦ぶりを、ハラハラドキドキで見ていました。


ならばと探した緩い斜面も、頂稜直下ではかなりの傾斜。
ならばと探した緩い斜面も、頂稜直下ではかなりの傾斜。




見えない前爪で蹴りこむけれど、滑ったら止まらないだろうな。
帰りもかなり心配だし。


そして頂上。
オーバー2000mの、決して真夏には見ることができない、残雪の山々。


    ・十勝岳からの、残雪の山々のパノラマ

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昼ごはんは、ダイモスおにぎり。
ダイモス




天気予報では終日晴れだったけど、午後には小さな気圧の谷がペロリとなめていくのは分かってたから、ちょっとばかし寝ころんだら早めに下山します。


みんなが下りの踏み跡にダマされて、苦戦して登ってた雪のビッグウェーブへ。
面白いようにグリセードが走って、少しはテレマークを持ってこなかった穴埋めになったかな。


谷を下りきって、ぐるりとあたりを見回すと、まるで氷河トレッキング。
まるで氷河トレッキング



そうやってはしゃいでいると、忘れていた'あいつ'がやってきました。
目に見えないし、音も立てない。


唐突に、冷たいバターナイフを鼻の穴につっこまれ、グリグリされるような感触。
でもその瞬間に、何が起こったかは理解できました。
濃度の高い硫化水素を鼻から吸い込んで、粘膜が侵されたのです。


富良野から十勝岳を見上げた時、噴煙がほとんどまっすぐ上がっていくのが見えてました。
そしてちょうどグラウンド火口のあたり一帯だけが、煙っていたのです。
風が吹いてくれればいいな、と思いました。
なぜならこんな穏やかな日には、空気よりも比重の大きい硫化水素が、ちょっとした窪地に溜まりつづけ、濃度が高くなっている可能性があるからです。


幸いにして、ひどい障害を残すほどの濃度ではなかったようですが、この直後から、さらさらの鼻水が泉のごとく湧き出して、息をするよりも鼻を啜ってる時間の方が長いというありさまで、望岳台に降り着くまでのことは、あまり記憶にありません。


近くのスリバチ火口にはシュプールが残っていて、登りのときは羨ましい~って見てたけど、たとえ今は噴火口がなくても、ああいった窪地は危ないかもしれません。


そんでもって、踏み抜きにも、ご用心ご用心。
雪の踏み抜きにもご用心



投稿者 hamayo : 22:53 | コメント (12) | トラックバック

2010年6月 8日

夏山開幕?



てゆーか、雪多すぎ。
夏山開幕

バカモン!
なぜテレマークを持ってこなかったのか!




3時起き。陽に温められた岩。昼メシのあと。