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2008 - 8 /23

素顔の富良野岳 ~三峰山~上富良野岳



いわずと知れた花の名峰、富良野岳
最盛期の7月中下旬ともなれば内地からの登山客が大挙しておしよせ、登山道は渋滞し、山頂直下では順番待ちの行列が出来ることもあるそうで。
アマノジャクなぼくは、そったら大人気の山になんて登ってられるかよと、いままでずっと無視し続けてきました。


でもまてよ、と。
花の季節が終わり、紅葉シーズンが始まるまでのこのスキマ、もしかして富良野岳はガラガラかもしれない。


富良野岳-三峰山-上富良野岳 GPSトラック
富良野岳-三峰山-上富良野岳 GPSトラック


富良野岳-三峰山-上富良野岳 断面図
富良野岳-三峰山-上富良野岳 断面図


機會來了
↓↓↓↓



思ったとおり凌雲閣となりの駐車場には、十数台の車しか止まっておらず、見たところ登山者らしきクルマは数台だけでした。
ここから安政火口ちかくまでは、整備されたゆるやかな道が続きます。


朝まだ早いこの時間、山の巒気にひんやり、身が引き締まります。
山の巒気ひんやり


30分ほど歩くと、いきなりデッカイ風景が目の前に。
安政火口

有史以来なんどとなく噴火を繰り返してきた十勝岳のふところ、安政火口です。
はやくも山旅のカンドーは最高潮に。


涸れ沢のヌッカクシ富良野川を渡り、赤い実をつけたナナカマドとハイマツに覆われた緑の斜面を登ります。
頭上にのしかかる化物岩の裾を回り込んで振り向くと、威圧的な三段山の南壁がせまります。


西側から見る冬の三段山とはまたちがう、荒々しい姿です。
三段山と安政火口


上ホロカメットク山分岐を越えトレイルは下りに転じ、同様に涸れ沢となった三峰山沢に降り立つと、かなたに富良野岳が見えてきました。
雄雄しさと優しさが同居した、麗しき山体です。


三峰山沢から富良野だけを望む

(960KB;要Flash Player ver8.0.24 or later;別窓で開きます)



ここから先、三峰山北斜面に広がるハイマツ帯の、長いなが~いトラバースになります。
単調に思えた水平道も、振り向くたびに十勝岳方向の眺めが美しく、時間を感じさせません。


水平トラバースから見る十勝岳方面

(834KB;要Flash Player ver8.0.24 or later;別窓で開きます)



屏風のようにそそり立つ岩をすぎると鉄階段の登りとなり、ようやく登山らしくなってきました。
高度差100mを詰めて稜線に出ると、富良野岳分岐。
今まで見えなかった南側の展望が開けます。


上ホロから境山下ホロ。そして名前なき山々。
上ホロから境山、下ホロ。そして名前なき山々


あれだけ遠くに見えた富良野岳も、もう手の届くところにまで近付いてきました。
富良野岳へ最後のひと登り


稜線の北側から次々に雲がわき上がってきます。
下りてきた登山者から、今ならまだ間に合うよと話しかけられたぼくは、一気にペースを上げて先行者をゴボウ抜きします。
雲の中の山頂はもうこりごりです。


そして出発から 2時間40分、富良野岳山頂です。
富良野岳山頂


湧き上がる雲はさっきよりも高い場所にまで達し、すでに雲海へと成長していましたが、なんとか展望を得ることは出来ました。
快晴とはいえないけど、悪天憑きのぼくにしては上出来です。


トンボの飛び交う、富良野岳山頂からの360度

(1820KB;要Flash Player ver8.0.24 or later;別窓で開きます)




夏のあいだを山で過ごしたトンボたちが、続々とスタートラインに集まり、号砲が鳴るのを今か今かと待っています。
彼らが山を下り始めるのと同時に、秋も里へと下りてくるのです。


今回のコースは、ここ富良野岳山頂でまだ行程の半分に達していません。
このあと分岐まで下り、3つのピークを持つ三峰山を越え、上富良野岳に至る稜線を歩き、D尾根経由で登山口に戻ります。


山脈を越えようと押し寄せる雲の向こうに十勝岳を見ながら、先を急ぎます。
押し寄せる雲のほうへ


三峰山との最低鞍部まで下りると、すっかり雲に包まれてしまいました。
ここでお昼にします。


ぼくの大好きな豆、ケニア産ルイス・グラシアをガリガリ挽いて、コーヒータイムです。
七変化する豆、ケニア産ルイス・グラシアで至福の一杯


マッタリ寛いでると三峰山から下りてきたガイジンさんが、珍しい動物を見たから名前を教えてくれ、と話しかけてきました。
話を続けてとうながしても、動物の名前を~ しか言わないので、チチッと鳴くやつなら「ナキウサギ」だよと教えると、ウサギより小さくてネズミくらいだったと言いなさる。
いや、いいんだ。小さいけどウサギ目なんだよ。


日が陰った立秋すぎの稜線は、動いてないと寒さを感じます。
あたりを見回すと雲の中、いつのまにかいつもの風景です。
やれやれと呟いて三峰山へと歩を進めます。


夏の名残のお花畑が延々と続きます。
夏の名残のお花畑


山名を見てもそうだし、地形図でも予想はしていましたが、三峰山はニセピークの罠だらけでした。
ガスで視界が悪いのでなおさらです。
山頂標識なんてないだろうと思っていたぼくは、ニセピークでたくさん記念撮影をしてしまいました。


ホンモノの三峰山ピーク
ホンモノの三峰山ピーク


どうせ待っても晴れないだろうと三峰山をすぐに下ります。
ところが上富良野岳の登りにさしかかると、

ガスが薄くなってきました。
雲のフチを歩いて上富良野岳へ


三峰山から上富良野岳までの稜線は、峻険な崖が切れ落ちる北西側とは対照的に、南東側はわりと平らなザレ地で、どこにでもテントが張れそうです。


薄日を浴びて、平らでザレた稜線を歩く。
薄日を浴びて、平らでザレた稜線を歩く


国立公園内の特別保護地区なので、指定地以外でのキャンプは禁止ですが、テントが張れそうな場所のデータをストックしておくことは、いつか何かの役に立つかもしれません。
といってもここの場合、上ホロの避難小屋が近いので、利用することはないでしょう。


そして本日最後のピーク、上富良野岳。
10年以上前に来たときには名無しピークだったのに、いつのまにか名前が付いたようです。


なぜかまたしても雲の中。
上富良野岳山頂はなぜかまたしても雲の中


ここから下山で辿る D尾根は、上富良野岳から西に延びる岩尾根で、末端の化物岩を南から巻いて往路の上ホロ分岐へと出ます。


ガスで先が見えないんじゃなく、急で見えないのです。
D尾根の最上部


登ってきたことはあるけど、下山に使うのは初めてです。


岩の殿堂、爆裂火口をのぞきこむ

(292KB;要Flash Player ver8.0.24 or later;別窓で開きます)




八ツ手岩への支尾根を右に分けると、傾斜もゆるみ、ふたたび緑の世界になってきます。
振り返ると稜線にかかっていた雲が晴れていくところでした。


上富良野岳から三峰山の稜線

(377KB;要Flash Player ver8.0.24 or later;別窓で開きます)



しかし D尾根には、岩よりも怖い悪魔が潜んでいるのです。

 
階段地獄。またの名を Knee Crusher.
D尾根の階段地獄 Knee Crusher.


うわさによると700段以上続くそうです。
ここも昔来たときは階段はなく、U字に掘れた深い溝状で、雨あがりのヌル&ドロに苦労したと記憶しています。
どっちもどっちだけど、下りに使うなら断然ヌルドロ溝だし、上りに使うなら階段だな。
ということで、D尾根は上りに使った方がいいと結論付けます。


そんなこんなで両膝をガクガクいわせ、1時間かけて上ホロ分岐に到着。
安政火口下の涸れ沢を越えるころには日が傾き始め、朝と同様、山の巒気が谷を包みます。


凌雲閣が見えてくるとゴールは近い。
凌雲閣が見えてくるとゴールは近い


ボロボロになった膝を引きずりつつ、ゆっくりゆっくり。
あとは温泉に入って、うまいもん食って帰るだけ。


山の呼ぶ声に何度も何度もふりかえり。
山がぼくを呼ぶ声がする


また来るよと山に挨拶して、トンボよりひとあし早く、山を下りてきました。




メジャーな山も、時期をずらせば静かなもの。
クマ鈴の音を聞かないで歩ける山の、なんと閑寂なことでしょう。
花の季節にも登ってみたいけど、花のない富良野岳には、厚化粧の時期にはない、深閑の魅力がありました。





その他の画像



投稿者 hamayo : 17:51 | コメント (8) | トラックバック

2008 - 8 /20

最後のレモネード



日の短さを感じ始めるこの季節。
夏はもう昼間の数時間にしか現れなくなりました。


青空とレモネードは相思相愛です。
青い空とレモネード


レモンと蜂蜜とスペアミントとレモンバーム。
分量なんてテキトーだけど、ビンに入れて冷蔵庫で一昼夜放置すれば、夏の飲み物の完成です。


フレッシュネスバーガーのレモネードにも負けてないつもり。
レモン、蜂蜜、スペアミント、レモンバーム


文句なしに今年の夏の主役。
ぼくの体の70%。
そんなレモネードも残りわずか。
ビンが空になるころには、もう秋だろうな。


投稿者 hamayo : 23:07 | コメント (4) | トラックバック

2008 - 8 /16

そしてまた海峡をくぐり



旅は山水、旅は風物。
ちょっとした時間にも、ささやかな出会いはありました。




バスが走る青い森は、若々しいブナの森でした。
八甲田ブナ二次林を走るバス

八甲田のブナ二次林は、ただ美しいだけでじゃありません。
かつて放牧のため広大に伐採されたブナの山は、一部に残っていたブナの木が再び活動を始め、長い年月をかけていまの美林にまで成長したのです。
ブナの木の一本一本が孤独に生きているのではなく、ブナの森全体が意志を持つひとつの個体であることを、この森はぼくに教えてくれました。



青森のリンゴジュースといえば、「シャイニー
金も銀も、数多あるリンゴジュースの中で抜きんでた存在でした。
でも今回の旅で飲んだいくつかのジュースの中に、それをはるかに凌ぐ逸品がありました。

原果汁 林檎
原果汁 林檎

まったく勝負になりません。
金・銀が見劣りしてしまいます。
これを飲んだぼくはひと言こういいました。「反則だな」。
決して他のリンゴジュースと並べて売ってはいけない、真の代物です。
いっぱい買って帰ろうと思ったのに、アスパムには置いてませんでした。



ねぶたまで秒読みの青森市街では、あちこちで祭りの準備が行われていました。
夏が頂点をむかえる直前の静けさがありました。

真夏のリンゴ
真夏の赤いリンゴ


青森市内は抜けるような青空でしたが、八甲田は分厚い雲の中に隠れていました。
あの美しい森や山や川が、幻のように思えてきます。
本当に大切なものは目には見えないということを示しているかのようです。


汽車が青森駅を出ると、いつものアイツが飛んできました。
ラビナのアラジンは、また来いよと叫んでいます。
ラビナのアラジン


そしてまた海峡をくぐり、ぼくは北の大地へと帰って行きました。


この項終わり

投稿者 hamayo : 11:24 | コメント (8) | トラックバック

2008 - 8 /14

奥入瀬渓流

地震の被害に遭っていた奥入瀬川沿いを走る国道102号線が、通行止め解除になったと聞き、奥入瀬渓流を見てみることにしました。


ぼくがふだん旅行をするときは、いわゆる観光地といわれるような場所にはあまり近づきません。
奥入瀬がいくら美しいといっても、ぼくのように山歩きをする人間にとっては、メディアの目に触れない深山幽谷の風致をいくらも見てきているわけで、それほど期待はしていませんでした。


でもその予想は大きく外れます
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結論から言うと奥入瀬渓流は、非の打ちどころがない自然景観の極致でした。
完成した絵画であり、芸術作品です。
これ以上なにか加える必要もないし、消す必要もない。


この景観の前では、ことばはあまりに無力だし、ましてや写真を撮るなど、甚だ低俗な行為のように思えてきます。
どんなに頑張っても今のぼくには、ありきたりの風景しか切り取ることが出来ません。


奥入瀬渓流

奥入瀬渓流


でも奥入瀬の本当のすばらしさは、部分ではなく、その存在全体にあるのではないかと思います。
目の前にある完璧な風景、ではなく、その風景を生み出す奥入瀬渓流そのものに。


奥入瀬渓流


瀬に浮かぶ千の石、苔むした倒木の群れ、銀の魚影が輝く落込み、どこまでも深く緑を映す淵。
それはたしかに美しい光景だけど、そういった「部分」としての風景なら、山奥の川に行けば珍しくない風景です。


そうではなく、完璧な風景がとぎれることなく延々続くさま。
それが数百年ものあいだ変わらずに在ること。
そして人間のささやかなヘルプによって、絶妙のバランスで保たれていること。
それこそが奥入瀬の美しさの本質なのではないだろうか、と思いました。


奥入瀬を渡る橋


川沿いの小径を歩いてると、"○○の流れ" などと名前が付いてる場所にクルマでやってきては、写真を撮り、すぐに立ち去る人たちが多いことに驚かされます。
「木を見て森を見ず」ならまだ救いはありますが、「木を見て森を見たつもりになっている」なら、なんとももったいない。


もちろんぼくだって、全体を知るにはまだまだほど遠いです。
全長14kmの 1/4くらいしか歩けていません。
それでも、自分の足で川べりを歩かなければ見えない世界を、少しは感じることが出来たと思います。
歩くことは、とても大切ですね。

投稿者 hamayo : 22:09 | コメント (8) | トラックバック

2008 - 8 /12

酸ヶ湯温泉で精霊に出会う



今回の酸ヶ湯温泉は、旅館部ではなく、湯治部の部屋を取りました。
湯治部屋だけど、自炊ではなく食事つきです。


酸ヶ湯温泉の看板


湯治部の棟は本館からいちばん離れています。
風呂に入るのにも、食事に行くにも、長い廊下を歩き、階段を下り、さらに長い廊下を歩き、また階段を・・・と、山歩き後の体には結構こたえます。


酸ヶ湯温泉の湯治部へ向かう廊下


ヒバ千人風呂は、ヒバの名が示すように総ヒバ造りになっていますが、ヒバのあのかぐわしい匂いよりも、湯が放つ硫化水素の匂いのほうが優っています。
ph1.7~1.8という強酸性の湯は、「興が乗っても20分以上入らぬように」と言われるまでもなく、長湯はできません。


160畳という広さもさることながら、天井の高さこそがこの風呂の独特の雰囲気を生み出す根本だと思います。
三方にある窓が明かりとなって、高い天井へと上がっていく湯気に光を与え、生き物のように見せてくれます。


なんといっても圧巻は、日帰り客がいなくなり、泊まり客も寝静まる深夜におとずれます。
小さな電球が僅かに灯る湯殿は、立ちのぼる湯気が光の勢いを弱め、妖暗の世界を呈します。
湯の流れる音に耳をかたむけ、闇に目が慣れてくると、山の精や森の精たちが静かに湯浴みしている姿が見えてきます。
あたかも湯の神様が、彼らを接待しているかのようです。


早朝ふたたび湯を訪ねてみると、昨夜のたたずまいはあとかたもなく消えており、そこには湯船と人間だけがありました。
湯に当てられて幻影を見ていたような、不思議な夜が酸ヶ湯にはありました。


翌日は・・・
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晴れましたとさ。
青空の酸ヶ湯温泉と大岳

投稿者 hamayo : 22:09 | コメント (12) | トラックバック

2008 - 8 / 9

八甲田の山に雨は降る



湧き水を汲んでハイドレーションに入れます。
雨がやむ気配はありません。


それでも、ザックの中身を全部ビニール袋でくるみ、腹をくくって上下のカッパを着込んだら、不思議と爽快な気分になるものです。
一種すてばちな気持ちも、時には重要です。


覚悟は決まりました
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ロープウェイには、ぼくを含めて4組しか乗りませんでした。
天地左右に前後ろ、すべてが灰色の風景です。
いくら人気のコースでも、こんな天気の日に山を歩こうという物好きは少ないのでしょう。


ロープウェイ山頂駅を下りると、すでにそこは標高1300m。
かつてないほどの楽勝登山が予想されます。
歩き始めは木道の敷き詰められた8の字のコースを進みます。
写真はないので、以下の八甲田ロープウェイ株式会社ウェブサイトをご覧になって下さい。

 八甲田ゴードライン(八甲田ロープウェイ株式会社のWebサイトです)
 http://www.hakkoda-ropeway.jp/lnks/trekking/hakkoda.html
 
 
登山客でなくても8の字をぐるっと回るだけで、八甲田の風景を満喫できるようになっています。
湿原にはいくつも花が咲いているようですが、ガスが濃くてなにも見えません。
田茂萢岳の山頂は標識があるわけでもなく、登っていた道はいつのまにか下りに転じていました。
天気が良ければ、田茂萢湿原を眼下に望むことが出来るのでしょう。


8の字コースを離れ登山道に入ると、そこは整備された木道と違い、いきなりヤブが襲い掛かります。
コース全般に言えることですが、腰から下はきれいに空間があいて快適に歩けるのに、上半身にはモリモリ藪が覆いかぶさってる場所が多いです。
しかもちょうど胸から顔にかけて、密度の高いヤブがいやらしく繁っています。


毛無岱への分岐をすぎるとトレイルは南東へ折れ、赤倉岳からの尾根に取り付きます。
赤倉岳への取り付き

雨がしのげる、大きな木の下だったと言うだけの理由で撮った、赤倉岳までのたった一枚の写真です。


なによりぼくを感動させたのは、森の中に浮遊する針葉樹の香りです。
青紫色の球果を付けたオオシラビソ(アオモリトドマツ)でしょうか。
それとも青森ヒバともいわれるヒノキアスナロでしょうか。
何度も足を止めては、清冽な芳香を胸いっぱい吸い込んでみます。


赤倉岳までは標高差250m。
オオシラビソの林からダケカンバ、そしてハイマツ帯へ。
森林限界前後の整った垂直分布の中を、わっしわっしと登ります。


稜線上の1521m標高点では、ロープウェイで一緒だったほかの登山者も休んでいます。
きつい登りはここまでで、ここからは(晴れてれば)楽しい楽しい稜線歩きが始まります。


ふたたび八甲田ロープウェイ株式会社のウェブサイトをば。

 大岳登山コース(八甲田ロープウェイ株式会社のWebサイトです)
 http://www.hakkoda-ropeway.jp/lnks/trekking/oodake.html


東側の谷から上がってくる生暖かい風を感じながら、小刻みにアップダウンをくりかえす稜線を進みます。
先を歩いていたポンチョ&アンプレラの登山者が、吹き上げる風にポンチョを煽られ立ち往生していました。
抜かさせてもらい先を行きます。


赤倉岳も井戸岳も、標識があるから山頂だとわかる程度で、ここまで天気が悪いと稜線上にあるコブのひとつとしか思えませんでした。


柵の向こうは、斧で割ったようなガケです。
赤倉岳か井戸岳か


大岳とのコルへ向けて下り始めると、徐々にガスが薄くなり、小さな沼の向こうに大きな屋根のシルエットが見えて来ます。
大岳鞍部避難小屋です。


ちょうどお昼時の小屋の中には5人ほどの登山者がいました。
雨も小止みになっていたので、小屋の外にあるベンチで、かやの茶屋で買ったおにぎりの昼食を摂ります。


風を感じて小屋のほうを見ると、その背後に大岳の姿が現れました。
大岳鞍部避難小屋の背後に雨の大岳


この日最初で最後の、山が見えた貴重な瞬間。
このまま大岳に登るか、毛無岱ルートでエスケープするか迷っていましたが、この光景を見て大岳への道へ進むことにしました。


大岳へは、ハイマツのすき間を縫って、ごろんごろんと岩が転がる斜面を登っていきます。
山旅後半に来ての大股登りが足腰に堪えます。
八甲田大岳への登り


そして13時、大岳に到着。
山頂部は平らで、テニスコートくらいの広さの裸地です。
残念なことに、さっき小屋から見上げたときの様子が幻かと思えるほど、大岳山頂は完膚なきまでに雲の中でした。


残念ショット。
雲の中の八甲田大岳頂上


何人かいた登山者たちも、三々五々下山していきます。
ぼくはこのまままっすぐ仙人岱へ下りて行きますが、他の人はみな、来た道を引き返していきました。


大岳から仙人岱までは、今回唯一楽しめた場所でした。
赤倉岳の登りと同様に、線を引いたように素直な垂直分布の植生の中、ときに沼が現れ、ときに雨のお花畑を歩き、仙人岱ヒュッテを目指します。


ウサギギク
ウサギギク

キンコウカ
仙人岱のキンコウカ

ミヤマダイモンジソウ
仙人岱のミヤマダイモンジソウ

ヒメワタスゲ
仙人岱のヒメワタスゲ




仙人岱の水場ちかくで残念な光景を見てしまいました。
湿原に敷かれた木道から地塘へと踏みあとが伸び、広く裸地となっていたのです。
おそらくは、木道からすこし離れた場所にある花々を見たり写真を撮るために、木道から降りて歩く人が絶えないのでしょう。
そこまでして撮る花の写真の価値とは?。
このままではいずれ、「花は撮るだけ、採ったらアカン」ではなく、「花は採るのも撮るのも、見るのもアカン」てなことになってしまうでしょう。


そんな悲しい仙人岱の湿原の奥に、仙人岱ヒュッテがあります。
仙人岱ヒュッテ

大岳鞍部避難小屋のような明るさはなく、草木の海にひっそりと埋もれていました。


雨の山旅も、いよいよあとは酸ヶ湯へと下るだけです。
標準コースタイムは45分。
予定では、「のんびりと下りていきました。めでたしめでたし」で終わるはずでした。


ところが、この平凡な(と思っていた)下りに、2時間も費やしてしまったのです。
写真を撮ったせいでもなく、休憩をとったせいでもなく、ほぼ歩き通しで2時間です。
時計が狂ったんじゃないかと思ったほどです。


仙人岱の木道が終わると、緑の森が後退し、岩と石とで埋め尽くされた谷沿いの道を下りていくようになります。
地獄湯の沢です。
八甲田、地獄湯の沢


息苦しいほどの硫化水素の臭気がたちこめるこの谷には、生き物の気配が感じられません。
それでもよく目を凝らして岩の表面を見てみると、地衣類のたぐいが健気に根を下ろしています。


その名もユオウゴケ(イオウゴケ)
ユオウゴケ(イオウゴケ)

地球上、いたるところに生物有り。です。


谷の向こう、道の先に酸ヶ湯温泉と思しき建物の影が見えてきます。
ここからが本当の地獄の始まりでした。
濡れてすべるゴロタ岩やヤブ、それだけならまだいいです。
泥沼が深すぎて、木道はイカダのように浮かんでいます。
土留めの木柵や木の階段は、あたりの土が流されてしまい、陸上競技のハードルのように行く手を阻みます。
ロープウェイを使った罰とも思えるようなこの仕打ち。
もはやこれは、人工的に作られた悪路です。


ブナの森の向こう、道路を走る車の音が聞こえたときは、安堵のため息とともにその場に座り込みそうになりました。
赤い鳥居をくぐってゴールイン。


アゴを出す、とはこのことか。
酸ヶ湯にゴール


一日中カッパを着続けた山歩きは、初めての北アルプスで、台風の中登った白馬岳以来です。
ぼくと悪天候との蜜月は、思えばそのときから始まり、今日までずっと変わらぬ間柄です。
山にいるときは、なんでこんな天候の日に自分は山にいるんだと憤懣をほとばしらせているのに、帰宅後こうして思い返している今は、存外「悪くない」という心境です。
どうせこれからも、悪天とぼくとの親密交際はつづくだろうから、悪天を楽しむくらいの気持ちにならないといけませんな。



八甲田大岳コースGPSトラック
八甲田大岳コースGPSトラック




八甲田大岳コース断面図
八甲田大岳コース断面図

投稿者 hamayo : 21:56 | コメント (8) | トラックバック

2008 - 8 / 5

夜行列車に乗って東北へ



仕事を定時に終わらせ、いつもどおり17時40分に帰宅。
準備は昨日のうちにすべて終わらせてあります。
山歩きもできるようにと、登山靴を履き、山装備を背負って家を出発したのは、20時すぎでした。


往復券を買ったおかげで、JR北海道のパーク&トレインが無料で利用できます。
おかげで汽車旅前のてんやわんやはさほどありませんでした。
登山靴で車を運転しなきゃいけないことを除いては。


こころは時を越え、大阪駅11番ホームにタイムスリップ
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2200発、札幌発青森行き寝台急行はまなす。
急行はまなす

青森往復きっぷでは、このはまなすに限ってはB寝台にも乗れてしまうのです。
太っ腹!。


夜行列車の楽しみは、暗がりに点々と浮かぶ街の灯りや、静まりかえった深夜の駅の風景を、冷たい窓の向こうに見ることです。
空き地で花火をする子供たちや、誰もいないはずのホームを歩く野良犬の姿なんかを見た事が、思いがけず長いあいだ記憶にとどまり続けるのはよくあることです。


なんてことを言いながら、千歳を待たずして熟睡zzz。
新さっぽろまでしか記憶がありません。
嗚呼、、、夜明けの函館湾の風景が・・・


       ・
       ・
       ・


青函トンネルの轟音にも目が覚めることはなく、起きたのは青森到着の直前でした。
窓の外は、非情にも雨・・・。
早くも駅からカッパを着こみ、ご飯を食べるために、6時前の青森の町へ出て行きました。


駅前通の一本裏にあるこの商店街は、なぜかこの時間帯、早朝とは思えぬ賑わいを見せます。
朝早くから賑わう商店街

シャッターの閉まった店の軒先で、その店とはまるで関係のない、木の実や山菜、不揃いな野菜や自分で育てた花などが、新聞紙やリンゴ箱の上に置かれ売られています。
駅前からも、幹線道路からも見えない細長い通りに、街が目を覚ます前のこの時間にだけ現れる不思議な空間。
たぶん閉じているシャッターが開く前に、姿を消してしまうのかな。
どことなくイリーガルな匂いのするこの場所は、こんな朝早い時間に駅前を散歩しないかぎり、旅行者の目に留まることはまずないでしょう。


この通りにあったよさげな名前の食堂。
おひさん食堂

名前のフィーリングだけでアタックしてみたくなったものの、残念ながら軒先の店とちがって、その貸主の方は当然ながらまだ開店前。
ということで、駅前のビルの地下に広がっている市場へと出向きます。
こちらも市場だけに、朝早くから開いてるのです。


Augaという商業ビルの地下にあるこの市場。
薄暗い照明、無辺とも思える二次元的広がりと地下特有の閉塞感、湿った空気、雑多な物音、匂い、色。
本州の北の果てにありながら、アジアの低緯度地域の市場ような雰囲気に目がくらみます。


Pantoneキャンディ?
Pantoneキャンディ?


食堂と店が裏表で一緒になったカウンターで朝食を食べます。
観光地にありがちな三色丼や五色丼もお約束としてありますが、市場の人がフツーに食べてそうな焼き魚定食にしました。
といっても観光客向けではないらしく、システムが分からずマゴマゴしていると、となりにいたご婦人が親切に説明してくれました。


 「イカが600円、シャケが700円、
  左に行くほど高くなるよ」


ぼくはシャケにしました。
いちばん大きかったから、という理由で。
ごはんも大盛、シャケもジャンボ、700円でお腹いっぱい大満足です。
他の人の茶碗を見ていると、ごはんの量は人それぞれ違います。
たぶん人を見てごはんの量を変えてくれてるのでしょう。


やっぱ魚屋の市場メシはおいしーわい、って裏の店の方に行ってびっくり。






 「肉のナリタ」




魚屋ちゃうがな・・・。


煮込んだ牛スジなんかの肉系お総菜がいっぱいあったことには気づいてたんだけど、魚屋さんだと思い込んでたからなぁ・・・。
次に来たときには、必ずや肉系のおかずで定食を作ってもらうゾと心に誓い、雨音激しい地上へと階段を上がっていきました。


さてこれからどうするか。
やっぱり八甲田の山を歩いてみるか。
どうせ外を歩けば、山でも里でも濡れることには変わらないし。


青森からは、JRバス東北の「みずうみ号」に乗ります。
青森駅から十和田湖駅まで、2時間45分かけて走るこのバスは途中、八甲田山の登山口となるロープウェイ駅前を通り、城ヶ倉温泉、酸ケ湯温泉、猿倉温泉、谷地温泉、蔦温泉と、八甲田山中に点在する温泉宿を縫うように走り、十和田湖温泉から先は、国の特別名勝に指定されている奥入瀬渓流に沿って十和田湖をめざします。


ただこの当日は、7月24日の岩手・青森地震の影響で、奥入瀬渓流沿いの国道102号線が通行止めになっており、迂回運行とのことでした。


青森市内を抜けたバスは、八甲田山へ向けてまっすぐ南へと走ります。
モヤヒルズという、不思議なサウンドの地をすぎると、バスは曲がりくねった山道に入っていき、途中「かやの茶屋」で休憩となります。


The アオモリアン・ジョーク.
たぶん、同じジョークは世界中にあると思われ。
なんと! 9杯飲んだら・・・

こーゆーのにツッコミを入れるようになると、もはや後戻りできない中年街道まっしぐらですな。


「かやの茶屋」を出ると、いよいよ雨脚強く、バスは完全に雲の中を走るようになりました。
視程は100mを切っているというのに、さすがは冬の地吹雪で鍛えられた青森のバス運転手、何食わぬ顔で右に左にとハンドルを切って登っていきます。


バスの中では、要所要所でテープによるガイドが流れ、バス旅気分を盛り上げようとしてくれます。
それは分かるのですが、


 「岩木山展望所からのパノラマを・・・」

 「眼下に見える青森市の・・・」

 「二つの半島の向こうに北海道が・・・」

 「国内屈指の山岳景観をお楽しみ・・・」


って、、、ずいぶんシャレの利いたテープを流してくれるじゃないか、こんな日に。


やがてバスは、時間どおりロープウェイ駅に着きました。
ハァ・・・、降りなきゃならないんですね。
1時間もバスに揺られてると決意も揺らぎますが、意を決してバスを降り、ロープウェイの駅に走りこみました。


雨はしとしとと降っています。

投稿者 hamayo : 20:42 | コメント (8) | トラックバック